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日本式 CSR 活動は勘違い!?米スターバックス、マイクロソフト、COSTCOに学ぶ CSR

日本で CSR(corporate social responsibility:企業の社会的責任)が語られ始めてすでに数十年が経つでしょうか。成長した経済でその成熟期に CSR が謳われ始めるのはどの国も同じで、最近では中国でも盛んに言われるようになってきました。
企業活動や経済活動が盛んになると、社会や環境、国民に対してのしわ寄せが起きます。そうすると、人や企業というのはその体験から「利益の追求や売上の拡大だけが会社の目標ではない」と気付き始め、経済活動の成熟期、つまり少し余裕が生まれたときに、こうした話が出てくるのだと思います。
今回は、この CSR が日本式に勘違いされたまま放置されたことが日本の経済成長をどのように阻害してしまったか、そしてこれからの CSR のあるべき姿はどういうものなのかについてお話ししたいと思います。

「社会貢献=慈善事業」の間違い

日本の企業の公式サイトを覗いてみると、以前とは違って、ほとんどの企業で CSR に関してなんらかのことが書いてあります。斜めな見方をすると、猫も杓子も CSR、これを書いておかなければよい企業として見られないのではないかという同調、または流行りなのかもしれません。

「他がやっているからやる」「しなければいけないからしている」「流行りだからそういうものなのだろう」という意識が見え隠れしていると感じたことはありませんか。その不自然さは、欧米の企業の公式サイトで感じることはあまりありません。

と言うのも、そもそも社会貢献は慈善事業を指すものではなく、企業活動そのものが社会への貢献であるという考え方が、欧米の企業に根付いているからです。

企業活動とは、社会に必要とされていなければ永続的に続くことはあり得ないわけで、逆に言えばその活動が必要とされなければ、その企業の存続意義がなくなるということです。会社は存在してこそ活動することができ、お客様や社会に受け入れられていれば、ある一定の社会貢献をしているということになるのです。

本来の CSR とは何なのか?

では、企業が行う CSR とは一体どうあるべきなのか。その答えは、やはりその企業が得意としていることを利用する活動にあると思います。

シアトルに本社のあるスターバックスを見てみましょう。アメリカのスターバックスでは、どの店舗でもスターバックスのロゴの入ったカップに水を入れて無料でもらうことができます。スターバックスによれば、この活動には2つの理由があります。一つ目は「水は人間が必要とするもの」。二つ目は、ロゴの入ったカップを街中で持ち歩いてもらうだけで、広告・マーケティングにつながるというものです。誰かが水の入ったスターバックスのカップを持って歩いていると「自分もスターバックスへ行こう」という気持ちになったりします。スターバックスにしてみれば、水とカップは各店舗にあるわけですから、マーケティング力を発揮しつつ、容易にできる社会貢献なのです。

COSTCO もシアトル地域に本社がある企業ですが、創業者の理念に基づいて、子供向けの社会貢献事業をしています。その一環で、新学期の始まる前に文房具やバックパックの買えない子供たち、COSTCO の店舗がある地域の子供たちに、学校で必要なものを詰めたバックパックを配布しています。COSTCO にしてみれば、子供向けにという理念と販売店で売っているものを組み合わせて地元に根付いた活動ができ、一石二鳥というわけです。

私が以前勤務していた Microsoft では、2000年代に司法省から命じられた数百億円相当の慈善事業として、子供たちに使ってもらうため、北米の公立図書館に新バージョンの Windows を搭載した新品のPCを寄付するという決断をしました。これも大きな社会貢献でしたが、事業のマーケティング力が強く、近い将来 PC を買う子供たちに Windows に慣れ親しんでもらうという一石二鳥の活動となっています。

また、私が現在勤務している Tableau Software は、2012年ごろに医療系 NPO と共同で、データ解析を使い、アフリカのザンビアでマラリアによる死亡者を撲滅するという活動を始めましたが、予定より8年ほど早く、その目標を達成しました。集まっていたデータを視覚的に分析して対策につなげたこの貢献事業の結果は広く知られることになり、製品の成功につながっていきます。

これらの例からわかるとおり、本来、CSR事業というのは、自社の得意なものを使って社会に貢献し、それをマーケティングへ活用していくという、「当たり前にできることを当たり前にする」、言い換えると、「自社が得意とするものを利用して、社会に貢献する活動をする」というものなのだと思います。そして、それがマーケティングにつながっていくことは決して悪いことではなく、むしろ当たり前という考えなのです。

今後、日本においてのCSRも、そうした考えを意識し、会社の存在意義や存続そのものが社会貢献にあり、その社会貢献が事業をさらに育てるという循環を理解した動きになってくれるよう願っています。

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