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三井住友フィナンシャルグループの内情を有価証券報告書から読み解く。(2022年度参照)


挨拶

このページをご覧になってくれている方ありがとうございます。改めましてコブータと申します。私は米国公認会計士や簿記2級の学習を通じて会計のマニアになりました。企業の財務分析を行うことで皆様の投資判断の材料にしたり、就職、転職の企業分析にお役立ちいだだければと思います。他の方の記事と比べて一歩踏み込んで財務分析を行うので有益な情報を皆様にお届けできればと思います。今回は三井住友フィナンシャルグループです!前回が三菱UFJだったので競合他社の企業分析を行おうと思います。この企業の分析をしてほしいとリクエストがありましたらコメント等に残してくれると嬉しいです!

企業概要

三井住友フィナンシャルグループは2002年7月に三井住友銀行が株式移転をし、設立されました。三井住友フィナンシャルグループとしての歴史は22年と浅いですが、三井住友銀行は今まで三井銀行、住友銀行の合併等を繰り返してきています。2010年に米国預託証券をニューヨーク証券に上場していますが、グループとしては国内の証券市場にしか上場していないようですね。

事業内容

三井住友の事業は下記の5つの事業に分けられています。

  1. ホールセール事業部門(国内法人向け)

  2. リテール事業部門(国内個人向け)

  3. グローバル事業部門(海外の日系、非日系企業向け)

  4. 市場事業部門(金融マーケット向け)

  5. 本社管理(その他)

三菱UFJよりはシンプルに分けられていますね。分け方も分かりやすいです。三井住友も報告セグメントとしてどのような金融サービスを提供しているのかではなく、誰に対してサービスを行っているか?に重きを置いている印象がありますね。

人員について

三井住友の従業員数内訳は下記の通りです。
従業員数は約10万人の大企業であり三菱UFJと同程度の従業員数を要していますね。三菱UFJと同様に海外向け顧客のグローバル事業部門におよそ半分の人員が割かれています。その次に多いのがリテール事業部なので国内の個人向けにも多くの人的リソースを割いていることが分かります。

三井住友フィナンシャルグループ従業員数

働きやすさについて

現在注目されている働きやすさですが、三井住友フィナンシャルグループは子会社もかなり多いので今回は主な三井住友銀行のデータのみ持ってきました。女性の管理職は23.7%と日本企業としてはかなり高いですね。男性の育休取得率は総合職で88.9%です。女性の育休取得率も記載されているのが珍しいですね。三菱UFJと同じく、女性の管理職が多いから男性も育休を取りやすい環境が整っていることが数字から分析できますね。

三井住友フィナンシャルグループ多様性指標

三井住友フィナンシャルグループの売上構成

三井住友フィナンシャルグループは経常収益約6.1兆円の大企業です。近年は約4兆円の収益でしたが2022年度は6.1兆円と一気に増えました。その原因は貸出金や預け金の受取利息の増加です。三菱UFJは有価証券からの利息配当金の増加が目立っていましたが、三井住友はそこまで増加していませんでしたね。貸出金や預け金の受取利息の方が収益としては安定するので2023年度の経常収益についても期待できそうですね。

三井住友損益計算書(経常収益)

経常利益・当期純利益

収益が増えているのはとても良いことですが、ほとんど同じくらい費用が増えている点については気になりますね。ですが、経常利益は2021年度と比較しても微増しているのは良い点ですね。こちらの費用で多いのも利息ですね。預金の利息を始めとする様々な利息費用が大幅に上がっています。こちらは恐らく外国のインフレ対策による大幅な利上げによる影響が大きいと思われます。
当期純利益は2021年度と比較して増えているのは良いポイントですね。1株あたりの配当金も年々増加しています。1株あたりの当期純利益は2020年度は減少していますが、それ以外は着実に一定の当期純利益を出しております。配当性向も約30~40%ですので今後の配当金の増加も期待できそうですね。

三井住友損益計算書(経常費用)

三井住友の資産

三井住友の資産は約270兆円になります。桁が違いすぎて混乱しそうですね。その中でも現金預け金、貸出金は各約75兆円、98兆円となっています。預け金は私達の預金ではありません。私達の預金はいつか三井住友は私達に返さなかればいけないので三井住友の貸借対照表(BS)には負債の部に乗っかってきます。では現金預け金は何か。それは企業や個人に貸しているお金のことですね。銀行は企業や個人にお金を貸してその利息で収益を得ています。
貸借対照表を見ると現金預け金、貸出金は約164兆円から173兆円に増加しています。ということは今後利息収入の増加が見込まれますね。
一方で有価証券は約5兆円2021年度と比較して減少しています。これは有価証券の償還が2022年度は多かったことが原因ですね。つまり満期を迎えた債権が多かったということですね。

三井住友貸借対照表(資産)

三井住友の負債

三井住友の負債は約257兆円になります。自己資本比率が極端に低いので不安になるかもしれませんが、これは銀行というビジネスの特性上仕方が無いですね。銀行は信用で成り立っているという言葉があります。銀行は信用によってお金を私達に安全に預けてもらい、そのお金を貸すことで利息収益を得ます。つまり銀行の資本はあまり入っていないんです。だからこそこのような歪な自己資本比率になってしまうのですね。
三井住友の負債ですが、そのうち約158兆円は私達や企業が預けている預金です。銀行が近年金余り、貸す先が見つからないと嘆いている実態が数字から分かりますね。三井住友の場合約158兆円を預かっていますが、貸出はその約75%の98兆円しか貸出できていません。私達が預けている預金を効率的に働かせることができていない状態ですが三菱UFJよりは効率が良いと言えるでしょう。

三井住友貸借対照表(負債)

積極的な自社株買いは嬉しいが・・・

三井住友は積極的な自社株買いを行っています。自社株買いを企業が行う理由としては、世間に出ている株数を減らすことで株価を上げて投資家達に還元することが挙げられます。例えば時価総額が約16兆円で株数が30億であれば1株あたり約5000円になります。ですが株数を15億まで自社株買いで減らすと時価総額は変わらないので1株あたり10,000円になり投資家が儲かるわけです。株主は1株あたり5,000円儲かるので嬉しいですよね。
ですが、自社株買いにも落とし穴はあります。それはお金が余っているから自社株買いをしているのでは?という懸念です。自社株買いを行うということはそれだけ会社の現金が出てしまっています。
それだけの現金を使うのなら設備等に投資をしてさらに利益を増やして配当金や株価の向上に繋げてほしいという投資家の意見もあります。
つまり自社株買いを積極的に行うのは短期的には投資家からは喜ばれますが、目先のことしか考えていない、それだけ投資して利益を増やす手段がないとも取れます。

営業キャッシュフローのマイナスは大丈夫か?

キャッシュフロー計算書を見てみると、営業キャッシュフローが約5.8兆円のマイナスになっています。通常の三井住友の事業で現金が約5.8兆円減ってしまっていますね。これには大丈夫か不安に思うかもしれませんが、原因は借入金の返済によるものです。約5.3兆円の借入金の返済が営業キャッシュフローをマイナスにしてしまいましたね。ですが、その分の借入金は減りましたし、資産約270兆円の内の5.3兆円ですので問題はないでしょう。2021年度の営業キャッシュフローはきっちりプラスになっていますしね。

三井住友営業キャッシュフロー

投資活動によるキャッシュフローのプラスは気になる

むしろキャッシュフローで気になるのは投資活動によるキャッシュフローがプラスになっている点ですね。有価証券の償還による収入が増加しており、有価証券の取得に関する支出が減少したのが原因ですね。つまり三井住友は有価証券の償還を迎え、その分を補うほどの追加投資はしなかったということですね。この判断が2023年度の財務諸表にどう影響するのかには注視していきたいですね。

三井住友投資活動によるキャッシュフロー

まとめ

  • 収益増加の要因は貸出金や預け金の利息増加

  • メインの預け金、貸出金の資産が増えているので今後も増収の可能性は高い

  • 利息費用が多くなっているが経常利益が2021年度と比較し増えているのはプラス

  • 配当のバランスは良い。自社株買いも積極的に行っている。

  • 有価証券への投資は今年度は控えめだったが、その判断が2023年度の利益にどう影響するか注目。

ここまで読んでいただきありがとうございます。コメントにどの企業の分析をやって欲しい等書いていただければ分析します!

出典:EDINET閲覧(提出)サイト https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100R1RG.pdf?sv=2020-08-04&st=2024-03-30T06%3A20%3A19Z&se=2033-06-22T15%3A00%3A00Z&sr=b&sp=rl&sig=8ZInHtyVeQmrEYFeQ0RvTgy2nyUzCD60KCKVe6t6eS0%3D

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