見出し画像

今の時代を生き抜く、5大仕事力2.0を高める人材育成とは?

失われた10年が、20年、30年と日に日に年数を伸ばしていく今日この頃だが、日本は平成という時代に多くのものを失ってしまったのだろうか。その意味では年功序列、終身雇用というのも1つの転機を迎える。某大手自動車会社の社長も「今のままでは終身雇用を守り切ることは難しい」というメッセージを発し、世間を騒がせた。

しかしこうした日本型の働き方や雇用のあり方が変わる中で、そこで働く人の働き方や人材育成の方法が同じでよいのだろうか?時代の変化に合わせてこれらもアップデートしていくべきではないだろうか?今回は企業勤めの方を主の対象にしているが、企業の規模はそこまで重視していない。大企業であれ、中小企業であれ、ベンチャーであれ、今回の記事が日々の悩みの解決の糸口になることを切に願う。

今回は筆者が今一番力を入れている働く人々の人材育成について筆を進めていきたいと思う。


昔と同じ育て方が通用しない理由とは?

「忙しい、とにかく忙しいし、時間がない。人を育てる余裕?ないね。」今の世を働く中堅社員や上司たちはそのように感じているのではないか?

なぜなら過去はどれだけ残業していてもOKという会社が多かった。極端な例では、夜まで働いてそのまま飲みに行って、また仕事に戻って朝まで仕事して2日目に突入などということが発生していた。こんなことを今の時代おおっぴらにやるとSNSでブラック企業と罵られるだの、保護者からの訴えなど怖くてたまったものではない。昨今話題になる大手企業や官庁の働き方等は長時間勤務という観点では、過去とそれほど変わっていないのだろうが、それでも多くの企業は働き方改革の波を受け、残業規制や定時退社の推奨により残業を削減する方向に動いている。

もちろん世の中の流れとして時代の変化に合わせて働き方を変えるのは大賛成であるし、過労死やメンタルなどのあってはならない問題を防ぐという意味でこの方向性は推し進めるべきだ。

しかしその中で1つ取り残される問題が、この限られた時間の中で組織としてどのように人材を効率的に育てるのか?という観点だ。多くの企業では昇格試験を含め人材育成は業務の内部では完全に消化しきれず、残業時間に頼ってきた側面がある。しかし過去ほど残業もできないし、そもそも労働人口の減少も相まって人材育成にのんびり人数を割いている人工的な余裕もない。かつ働き方を変えて生産性を上げろという働き方改革の外圧という無理難題まで降ってくるトリプルパンチの状況。

世代間の働き方やコミュニケーションに対する変化も忘れてはいけない。もちろんいつの時代も年長者は若い人のことを、あれができていないとかこれが理解できないと言う。今回はそれを抜きにして話を進めるが、今の時代の若者の特徴は、背中を見せて盗ませるとか、根性論で叩いて育てるという教育手法と非常に相性が悪い。特徴が良い悪いと言っているわけではない、またその育て方が良い悪いを言っているわけでもない。単純に相性が悪いのだ。共感型の世代ともいわれるが、少なくとも今先輩や上司であるあなたが過去にてきた人材育成の手法はあまり受容されないということを最低限肝に銘じて欲しい。

ただしこれは何も人材育成に限った話でない。ビジネスでもお客様変化や市場の変化に合わせて打ち手をどんどん変える。ならば人材育成も育てられる対象に応じて打ち手を変えたっていいではないか?「それは今までの努力やプライドが許さない」という一部の方の気持ちも理解はできる。しかし結局人材が育たなくて困るのはあなた自身であり、企業そのものなのだ。ここは思い切って時代と下の世代の変化を受け入れよう!

つまり時代の変化と世代の変化に合わせながら、少ない残業時間で過去のやり方に囚われず人材育成をする必要があるということだ。

「いやいや、それは無理ゲーでしょ」という声が聞こえてきそうだが、そんなことはない。手法を理解して進めれば対応できることはたくさんある。


人材育成の魅力

手法論に入る前に、筆者がなぜ人材育成に拘るか、その部分を少し明確にしたい。

答えはシンプル、人を育てることがあなた自身や周りの人の幸せにつながるからだ。なぜ人を育てることが誰かの幸せにつながるのか?それは、人材育成を通じて、想いと技能の伝承が後代に伝わるバトンとなるからだ。もちろん幸せの定義は人それぞれのため強要はしないが、自分たちの思いや技能が後代に伝わり、彼らがそれをまた下の世代につなげてくれるというのは一つの幸せの形だと感じでいる。人材育成を通して誰かを育てることが本人の能力向上になるだけでなく、後々の未来に伝わっていくとしたらそれはとても素敵なことではないだろうか?我々は生きている。生きるというのはその命バトンを誰いかに繋ぐということだ。繋ぐのはなにも子孫や遺伝子だけではない。想いや技能も繋ぐことができる。

「つないだ相手が自社に留まってくれるとは限らないし…」という反論もあるだろうが、この際自社に残る残らないといったケチな話は脇に置いておこう。たとえ育てた人が今の会社を辞めて別の仕事に就いたとしても、仕事をする上での思いと技能をその就職先で伝えてくれていたら、人生のバトンは渡されたと言えないだろうか?

教えられる人がいる、教えてくれる人がいる、そんな当たり前のことに感謝をして生きていける人でありたい。


部下・後輩が身に着けるべき5大仕事力2.0とは?

ちょっと前章でセンチメンタルに振りすぎたかもしれないが、ここからは具体的なメソッドの話をしたい。毎度前置きが長くて申し訳ない。メソッド待ちの方はこちらから本腰入れて読んでもらえればと思う。

人材育成については様々な切り口でどのような能力を伸ばすべきかがこれまで語られているが、ある程度どの業態でも汎用性の高い、かつ今の時代に必要な能力に絞って解説をしたい。筆者はこれを5大仕事力2.0と名付けたい。

ではその5大仕事力2.0とは何か?

1.相手のニーズを読み解く力(読解力)

業務であればそのゴールや目的は何か?そしてそのゴールに到達するための道筋を考えること力。また、お客様やクライアントからの要望や依頼であれば何を実現したいのかを理解し実行していくための力。

2.自分で情報を拾う力(突撃力)

相手との面識の有無にかかわらず自分を売り込み情報を入手できる力。また深い関係を築ける力。

3.自分の頭で考える力(思考力)

仮説思考と想像力を併用し、現場の実態把握を通じて仮説を検証することで物事の本質を深く突き詰める能力

4.スケジュールを管理する力(納期管理力)

個人やチームが持つ業務に関連する関係者と必要な業務、納期を明確化しつ進捗管理をする力

5.自分の考えを発信する力(発信力)

限られた時間の中で、資料や口頭での説明で相手に対して必要な情報を必要なタイミングでわかりやすく伝える力。


なぜこの5つは重要なのだろうか?それは、変化が激しい世の中で過去の知見に囚われず柔軟な情報収集とその情報に基づく思考ができ、限られた時間の中で手戻りを最小化し業務効率化を行るからである。そしてできたアウトプットを人の目に届くように発信することでいいモノを埋もれさせず普及できるからだ。

「いやいやそんなの当たり前やん」と思ったそこのあなた、侮るなかれ、この5大仕事力2.0の明示が発揮する恐るべき力を。

例えば、仕事を後輩に依頼した際に、あなたが言ったことがきちんと理解できていなければ、その人は読解力が低い可能性がある。また、仕事を進める上で必要な情報を自分で探し回って獲得したり、知らない人の所に飛び込んで聞きに行くことに躊躇があるようなケースは突撃力が弱い可能性がある。一方で調べた情報に対して、特にヒントを与えなくても、後輩が自分なりの仮説を立てることや自分の意見を考えることができていれば、思考力は持っていることが伺える。他にも、仕事を納期内に終わらせるためにいつまでに何をしないといけないのか、ということでを後輩がうまくできなければ、納期管理力が低いということが予想される。そして、仕事の結果や成果を上位者に報告する際に資料を作るのが上手だったり、説明が上手ければ発信力が高いということがわかる。

つまりこれは後輩や部下に対してどのよな能力が強いか弱いかを図るバロメーターであると同時に、弱みを克服し強いところをさらに伸ばすという観点で非常に有効なのである。

ちなみに筆者がこの5大仕事力を2.0と名付ける理由は別にある。この能力は基礎能力と応用能力がそれぞれ分かれている。よって実質は10大仕事力なのだが、数が多いと覚えにくいし、本質的には共通する部分が多いため、もう一段上のレベルも含む意味で2.0と名付けている。


5大仕事力2.0を高めるには?

まずはこの5大仕事力2.0のそれぞれの力が育成対象となる後輩や部下にどれくらい備わっているかを把握して欲しい。基本的には仕事を与えながら確認していくとどんな能力があるかが明確になる。また本人の過去の経歴、学生時代にやっていたことなども日常会話の中で把握ができれば、それぞれの能力の実態を図るうえで役にたつ。

次に実態把握の結果、特に後輩の弱い部分について重点的に時間を割いて育成していく。例えばニーズを読む力とスケジュール力が弱ければその2つに重きを置く。またその力が鍛えられる仕事を重点的に付与することも有効。

注意しないといけないのは、この教え方をする時に本人にノウハウが全くないのか、あるけれど開花していないのかを見極める必要がある。よく言われる、ティーチングとコーチングを使い分けて欲しい。ティーチングは答えややり方を教える手法で相手に基礎的な知識がない場合に有効。コーチングは相手から引き出す手法のため、相手の中に多少なり知識やノウハウが必要。育成段階に応じて、ティーチング→コーチングにもなりうるし、最初からチングだけでいい場合もある。しかしティーチングだけをするのはやめるべきだ。自分で考える癖がつかないからだ。5大仕事力2.0の思考力を育てる意味でも弊害になる。

またいきなり本人に全てをやらせずに、まずは自分がやって見せて、説明をして本人にやらせる必要がある。いきなりポイっと仕事をさせるのは少し乱暴。かの有名な山本五十六も「やってみせ、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば、人は動かじ。」という名言を残しているがこれは現代でもまったくもって通じる。

読解力は仕事の中でニーズを常に確認させる癖をつける。対話の中で鍛えていく。突撃力は、必要な情報と必要な相手が何かを明確にし、それを考えさせながら行動を促す。思考力は仮説思考と想像力をなぜという問いかけで確認しながら、現場で事実の確認と仮説の検証をさせる。納期管理力はスケジュールを吐き出させ、紙に落とし、業務と納期を明確にするよう指導する。発信力は口頭や紙面での論理的説明の訓練と添削の繰り返しで鍛えていく。

相手がある程度、基礎知識や基礎能力を持っている場合はこの限りではないが、基本的にはこのステップを踏まえることを推奨したい。


今回は細かく1つ1つの能力に触れなかったが、反響が大きければ別途それぞれを解説したいと考えている。いずれにせよ、筆者は人材育成の知識の体系化は今後日本において大きな課題となると予想しており、その課題解決にしっかりと貢献していきたい。

人を育てて組織も後輩も部下も、そしてあなた自身も幸せになるそんな社会を目指していこうじゃないか!


私達にできることを一歩ずつ。



この記事が面白かった、役に立ったという方はサポートをよろしくお願いします。柳本の新たな記事を書くためのやる気が劇的に増加します!