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「顔が似ているから。」そう言っていたあの時の先生をできることなら忘れたい。

たぶん、あの先生のあの発言は一生忘れない。
別に今となっては恨みでも嫌悪でもなんでもないけれど、ただただ記憶に残っている人です。

ーー

私がイギリスの現地校に通っている頃のお話。
中学1、2年生とかだったと思います。

びっくりするくらい、「この人のこと好きな人みたことない」っていう、美術の先生でした。
別にその人は体罰をするわけでもなく、大声で生徒を怒鳴るわけでもなく、授業を放棄するわけでもなく、能力がないわけでもなく、
とても穏やかでやさしい、美術教師としての知識やスキルは、思い出す限りはしっかりある人でした。

その人が嫌われていた理由を説明するのは難しい。

ジェネレーションギャップもあったり、見た目も怖くなさそうでやわらかいおじさんだったりしたこともあり、“ナメられやすい”人ではあったと思います。
そして本人はそれを少し自覚しており、生徒たちにムキになって反論(口調はやさしい)しているうちにどんどん矛盾していって、生徒たちからすると途中から
「論点全然違うんだけどなにこの人…」
と思われる、みたいなことはかなりありました。そういうところかな。

要するにちょっと“ズレた”人だったのです。

当時私は結構絵が描ける方だったので、その先生にはかなり気に入られていました。なので休み時間とかにも見かけると声をかけてくれたり、よく課題の絵を褒めてくれたり成績も良かったので、私は正直その時はそこまで嫌いではありませんでした。

でもある日、こんなことがありました。
当時通っていた学校は小学校と中高の校舎が別のところ(隣の校舎とかじゃなくて車で15分とかレベルの)にあり、私と3つ違いの妹は一時期その別々の場所で学校生活を送っていました。そんな中での出来事。

先生「ぼるけーのちゃん、妹いるの?」
私「います。でもここにはいないので先生たちもご存知ないと思いますが…」
先生「そうか、さっきそこで韓国人みたいな子が歩いてたから姉妹かと思って。」
私「私は日本人です」
先生「知ってるよ。」

ーー

これ以上お話を進める前にまず前提として
「韓国人と一緒にされて嫌!」という話ではないし、そんなことは1mmたりとも思っていないということは先に補足をさせてください。

ーー

その場には私の友人も一緒に何人かいて、その中には同じアジア圏出身のベトナム人の子もいました。全員で固まってしまいました。

さらにそのベトナム人の子に対しても

先生「映画俳優の親戚いる?」
友「いません」
先生「この間の映画に出てたベトナム人俳優さん、あなたと顔が似てたから家族かと思った!」

この人は、アジア人は全員国籍がどこだろうとみんな一緒くたにしてみているんだ。

とたんにこの人のことが気持ち悪くなりました。

この感覚、説明するのがとても難しいのが、
別に外国の街中で知らない人に中国人に間違われようが韓国人に間違われようが、正直まあぱっと見判断つかないこともあるよね、くらいにしか思わない。

一方で、ちょっと喋ってみて相手の訛りで勝手に決めつけて「あなたはオーストラリア人ですね」とニュージーランド人のかたに言ってしまうのはとても失礼だと思っている。
それにこの先生じゃなくても初対面の人だったとしても「あそこのアジア人とお前は見た目が似てるから家族だろ」と決めつけられるのはとっても失礼だ。

具体的に何が嫌だったとか失礼だと感じた、という話がはっきりできないのでもどかしいのですが、とにかくこのときこの先生のことを「ちょっと“ズレた”先生」から「非常識な人」という認識しはじめたのは確か。

この人は、おそらく全く差別意識なんてないし、日本人やベトナム人、中国や韓国の人たちが嫌いなわけではないと思う。そういう悪意は感じなかった。
ただ自分が見えている範囲の日常があの人にとっての世界のすべてだったんだと思う。
だから少数派のアジア人はみんな“顔が似ている”から血縁関係があるに違いない、と思ってしまう。
たぶん、そういうところが嫌われていたんだろうな。

私はこのしばらく後、進級時に「美術」を選択科目から外しました。

ーー

この先生みたいな人は実は身の回りにたくさん、たくさんいる。
「悪意はないから」で許せることはたくさんあると思うけど、時に無知はかなりの害悪となることがあって、たぶん私も行く場所によっては既にそうなっていることもあるのだと思います。

100%は無理だけど、なるべくそうならないように“学び”は大事。

そんなことを、皮肉にも“学校の先生”から感じ取ってしまった体験。

(ちなみにそのベトナム人の子と血縁関係ではないというのは流石に受け持っている同じクラスの生徒たちなのでわかっていたようです。苗字も違うし。)

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