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​​#129 VCの適切な成功報酬(キャリー)設定の重要性

先週末はゴールドマンサックス時代の後輩の結婚式で初めてコロラドに行ってきました。たまたま彼女の旦那さんとは同じ時期にシカゴ大学のMBAに行っていて、彼とは直接の知り合いではなかったのですが、共通の友達がたくさんいました。なので珍しく新郎新婦側とも知り合いがたくさんいた結婚式で、当然結婚式もとてもよかったですし、ゴールドマンの同期や先輩から学校の友達まで久しぶりに嬉しい顔がたくさん見れて楽しかったです。ただ、標高が2000m以上のところで、移動も長かったです。子供にはかなり大変だったので体調を崩したりしたのですが、すぐ回復してくれたので子供にも感謝です!

結婚式があったコロラド州のEstate Park

米国のベンチャーキャピタル市場と日本のベンチャーキャピタル市場には多くの違いがありますが、その一つがメンバーに対する成功報酬の設定です。

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VCファンドに投資するLP(Limited Partners)は、VCに2種類の手数料を支払います。まずは管理報酬です。LPは出資コミットメントをした後、定期的にこの手数料を支払います。VCはこのお金でパートナーを含むメンバーに定期的に給与を支払います。

もう一つのタイプの手数料は、成功報酬です。いわゆる「キャリー」と呼ばれる長期インセンティブです。通常、VCは元本をすべてLPに返した後、残りの収益から20%を取ります。例えば、LPが100ドルを投資してそのお金が500ドルになったとします。 VCは400ドルの収益のうち20%を自分たちの長期インセンティブとして受け取ります。

長期インセンティブの構造を正しく設定することは、LPとの利害関係を一致させるために非常に重要です。極端な例として、長期インセンティブがなく、代わりに高い管理報酬だけがあるとします。 VCは投資収益率がどんなに悪くても管理報酬で高い給料がもらえるので、良い投資をする必要がありません。 残念ながら、このようなことが起こるVCもよくあるそうですが、VCに投資するLPとして、このタイプのファンドは避けるべきです。

VCのパートナーだけでなく、他のチームメンバーのために適切な長期インセンティブの仕組みを設定することも非常に重要です。要するに、投資プロセスに深く関与する人々は長期インセンティブを受ける資格があります。そうでなければ、良い投資に対する強力なインセンティブが働かないため、給料だけ貰って適当に仕事をしてすぐに会社を辞めても何の問題もなくなります。

正確なデータはありませんが、米国よりも日本のベンチャーキャピタルのメンバーへのインセンティブ構造は良くないと聞きます。もちろん、米国でも長期インセンティブのかなりの部分はパートナーが持っていきますが、「どれだけ大きいか」は別の問題です。 インセンティブを与える際、何年に分けてインセンティブを与えるかを決める「ベスティング」も重要なポイントです。アメリカのVCでは、チームメンバーが数年だけ働いて会社を辞めても、そのメンバーが長期インセンティブを全て持っていけるようにするVCもあります。このようにすると、チームメンバーはたとえ該当VCに数年しか在籍しなかったとしても、在籍中には最も良い投資をするように動機づけられます。

チームメンバーに対する長期インセンティブの設定が重要なもう一つの理由は、いつかパートナーが引退し、他の誰かがパートナーにならなければならないからです。 つまり、世代交代が行われなければならないからです。長期インセンティブをタイトルに合わせてメンバーに適切に分配することで、昇進に対するモチベーションを与え、最終的にはパートナーにまでなってもらうことができます。

米国には、世代交代に成功しているベンチャーキャピタルがたくさんあります。例えば、当社のポートフォリオファンドの一つであるUpfrontも良い例です。今20年以上の歴史を持つUpfrontを率いるマーク・サースター氏は、2代目の顔です。50年前に設立されたセコイア・キャピタルは言うまでもなく、セコイア・キャピタルが長い期間にわたって影響力を発揮できてきたのは、何度も世代交代が成功したからです。

国内VCは歴史が短いため、世代交代を経験したVCはほとんどありません。 しかし、今からでも準備を始める必要があり、その第一歩は、メンバーに対して適した長期インセンティブ構造を設定することです。

今、情報はどんどん流れていきます。ベンチャーキャピタル業界の人々は、長期インセンティブに対する正しい方法が何であるかをすぐに知るでしょう。 つまり、VCが十分に早く適応して正しい構造を作れないと、先行する競合VCに良い人材を奪われることになります。 アメリカには世代交代に成功したVCもありますが、そうでないVCもあります。当然、変化に遅れたVCは最終的に競争優位性を失い、淘汰されるのは時間の問題になります。

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