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ファッションと気候変動、リユースの可能性とCOP28採択

ファッションと気候変動、リユースの可能性とCOP28採択
11月30日から12月12日まで、UAE(アラブ首長国連合)で、気候変動に関する国連の会議、COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)が行われていました。28回目となる今回の会議では、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料からの脱却が大きな焦点となりました。

私たちバリュエンスでは、パーパスに「Circular Design for the Earth and Us」を掲げ、2030年までにバリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指しています。

バリュエンスのサスティナビリティページ(Resale Impact)


主語が大きくなりがちな気候変動、環境問題

先日行ったバリュエンスの社員総会でも弊社自身の取り組みだけでなく、なぜカーボンニュートラルを目指すのか環境問題や気候変動に取り組む必要があるのかについて多くの時間を割きました。
環境問題、気候変動問題というと「地球のため」「未来の子どもたちのため」とどうしても主語が大きく、自分ごとにしづらいと感じている人が多いと思いますが、これらの問題はすでに地球上に生きるすべての人が今すぐ取り組むべき課題といえます。

バリュエンスでは、リユース業界に関わる企業として「果たすべき責任」を突き詰めた結果、私たちが“世の中に存在を許される理由”の一つとして、サーキュラーエコノミーの推進とサステイナブルな取り組みを行っているのです。

あなたが毎日着る服が及ぼす環境負荷について

総会の資料を元に少し話をしてみましょう。
私たちが毎日着る衣服について。普段意識することはないと思いますが、衣服一着を製造するのにペットボトル約255本製造分にあたる約25.5kgのCO2が排出され、浴槽約11杯分の水が使われています。
ファストファッションの定着により、衣服を使い捨てにすることも増えてきましたが、再利用されず焼却、埋め立てされる衣類の量は日本国内だけでおよそ年間48万トン。毎日、大型トラック130台分の服が埋め立て地に捨てられたり、燃やされたりしています。

「私には関係ない」と思う人でも、服は身につけますし、移動もすれば食事もします。生活しているということは、何らかの環境負荷をかけていることになるわけですが、こうして数字にしてみると、現代では一人ひとりがかける負荷が「過剰」だということがよくわかります。

ちなみに、同じ資料にある「国内で一年間一度も着られていない服の数」は、一人当たり25枚。そういえばクローゼットに眠ったままの服があるなぁと思い当たる人も多いのではないでしょうか。私たちが行っているリユース業は、こうした着られていない衣服を必要とされる人に届けることで、新しくつくられるはずの衣服の量をセーブし、その分の環境負荷を下げることができます。
(このセクションで引用した具体的な数字は環境省『SUSTAINABLE FASION』より)

材料の調達から廃棄後まで。延々と続く影響

人間がモノをつくり、それを流通させ利用するというスキームを利用し続ける限り、環境負荷はすべてのタームで発生します。材料となる資源を調達し、それを工場に運び製造し、完成品を輸送する。商品を購入した人たちがそれを使用し、捨て、ゴミとなった商品が輸送され廃棄される。CO2の排出に限って見ると、世界全体の排出量の8%が衣服や靴など私たちが身に付けるモノの製造工程で排出されているといわれています。

衣類をつくる過程では、染色、洗浄などの工程での水資源の消費と汚染も無視できません。
例えば、植物由来のコットンの原料である綿花を栽培するためには、大量の水が必要です。綿花の産地であるインドや中央アジアなどでは、もともと水資源が乏しいこともあり、川や湖沼の水位が下がり、地域の野生生物や人の暮らしが、大きな被害を受けています。

世界で4番目に大きな湖とされていたウズベキスタンのアラル海は綿花の栽培などにより十数年で急激に砂漠化が進んでいます。

こうした問題は、バングラディシュの首都ダッカで起きたビルの倒壊事故がきっかけで生まれた映画『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償~』を紹介した記事でも触れましたが、

先進国と新興国それぞれの立場で生まれる“歪み”

「つくる人」と「使う人」、「欲しがる人」の犠牲になる人やコト、モノという歪みを生み出します。

COP28で議題に上った化石燃料についても、欧米の先進国や海面上昇によって国土が失われる危険性に晒されている島しょ国が、「段階的な廃止」という踏み込んだ対応を求めたのに対し、化石燃料に依存する産油国、急激な経済的発展の渦中にある新興国は、「たとえ段階的でも廃止は受け入れられない」として意見が対立していました。

先進国と新興国の関係で見ると、発展、成長期には環境のことをほとんど省みず、経済優先で成長し先進国になった国々が、同じ過程を辿ろうとする新興国に「経済よりも環境を」と要求するパラドックスがあります。
しかも、新興国の国土や空気、水などの環境に負荷をかけて製造された製品が先進国で消費され、その廃棄物はさらに貧しい国々に回ってくるという不条理も実際に起きています。
こうした歪みやねじれを見ていると、世界全体での気候変動対策がいかに難しいかがよくわかるのですが、今回のCOP28では、「段階的な廃止」は盛り込まれなかったものの、化石燃料に対して「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするため、化石燃料からの脱却を進め、この重要な10年間で行動を加速させる」ことが宣言されました。

気候変動を自分ごととして考えるために

もちろんこの宣言が十分とは思いませんし、日本でもニュースとして取り上げられたとはいえ、どれだけの人がこの宣言を意識するのかという問題はあります。
しかし、産油国であるUAEで行われた国際会議で、「化石燃料からの脱却」が各国合意のもと、宣言されたことには大きな意味があると思います。
ここのところの夏の暑さから、「地球温暖化から地球沸騰化」という気候変動危機を身近に感じる日本人は増えました。気候変動について何ができるか? を考えることも重要ですが、気候変動に影響を与えているCO2排出や環境汚染などに自分の生活がどれくらい関わっているのか? 何がどういう影響を与えているのかを知ることが、この問題を「自分ごと」として考えるきっかけになるのではないでしょうか。

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