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価格競争を手放し、新たな価値を見出すためにしたこと~戦力外Jリーガー社長の道のり25

鑑定士として店頭に立っていた頃、お客さまのお話に耳を傾け、手放す商品にまつわるエピソード、手放さなければいけなくなった理由をお聞きしているうちに、お客さまの信頼を得るという経験が何度もありました。


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査定価格勝負の買取業界には初めから違和感があった

その頃の買取店では、買取価格の競争が当たり前で、ブランド品を持った人が複数の買取店を回って一番高値をつけた店で売るという光景も珍しくありませんでした。

ブランド買取というビジネスモデルを考えれば、在庫確保のために無理して高値をつけるか競争に付き合わず鑑定通りの適正価格を貫くかの二択しかないと思いますが、私にはこのどちらもしっくりきませんでした。

一度買取価格の競争に足を突っ込んでしまうと、どんどん利益を削るチキンレースに参加することになります。これは、たとえ他店との競争に勝ったとしても、ビジネスとして、企業としては“負け”になる可能性が高ので最初から考えていませんでした。

鑑定通りの適正価格を守るのは、「ブレない信念」を貫くようで成功しそうですが、鑑定士としてお客さまと接した経験から、買取の「適正価格」はお客さまとの関係性によっても変わることを肌感覚で体感していました。それに、お客さまが「価格だけ」で物を売る意志決定をしているとはどうしても思えなかったのです。

接客接遇の先に何があるのか?

バリュエンスのスタッフに現在も言い続けているのは、買取価格で勝負するのではなく、お客さまの体験の価値を高める方法を探ろうということです。

当初は、マニュアルや教育制度もなく、コンシェルジュという名称と役割、仕事の内容を変えることと、私の経験則に基づいた理念先行で始まりましたが、現在のバリュエンスでは、バリューデザイナーの役割は明確化され、商談時のマニュアル、仕事ぶりを評価する基準や指標もきちんと整備され、バリュデザイナー育成と教育のシステムも充実しています。

顧客は何を基準に売る・売らないを判断しているのか?

お客さまは、何を基準に持ち込んだ品物を売る・売らないの意志決定をしているのか?
リユース業界を含めほとんどの人が、「それは金額でしょ」と思っているのですが、何度もいうように、お客さまは単なる査定額の高低だけで決断はしません

とにかくお金が欲しいという人は、全店舗を回って高い値付けのところで売るかもしれません。しかし、その値付けも偶然の要素が大きく、次また別の物を売るときはそのときに高い値をつけた店で売るだけです。

自分にとって何か意味のある物、大切なものを売りに出さなければいけない場合は、話を聞いてくれて、その思い出や自分にとっての価値に共感してくれた店、もっといえばに売りたいと思うのが人間です。

その関係性は1回限りではなく、家にある不要品や価値のありそうな物をその人に託したいと思うのです。

実物資産の“価値をデザインする”という新たな役割

お客さまの体験価値を高めるというとものすごく抽象的なような気がしますが、バリュエンスでは単なる接客接遇を超えて、お客さまのパートナーとしてさまざまな価値を生み出すお手伝いができるように、事業自体をシフトさせてきています。

『なんぼや』では、ブランド品の買い取りだけではなく、車や不動産の売買、終活や遺品整理など、ブランド品買取以外にもご相談をいただいていますし、ハイブランドのビンテージを中心に一点物のリユースのプレオウンド品を販売するALLUでも、販売員としてではなく、お客さまのライフステージ、ライフスタイルなどに合わせたご提案、アイテム、コレクションの管理やコーディネイトまでをサポートしています。また、『なんぼや』同様、実物資産に対してのあらゆるお悩み相談を受け付けています。

バリュエンスホールディングスの事業としても、不動産や自動車の取り扱い、高級時計の修理など、お客さまの実物資産の価値を高めるすべてのことに関われる事業がすでに動いています。

不要品の価値を鑑定し、金額を示すだけだった鑑定士が、接客、接遇を通じてリユースのご提案をするコンシェルジュへ。そしてお客さまの生活に関わる実物資産の価値を高め、よりよい体験、豊かな人生を送るためのご提案をデザインするバリューデザイナーへ。

買取価格の競争でもなく、一方的な適正価格を押しつける鑑定でもなく、ただブランド品を買い取るだけでもない。創業当初、「しっくりこなかった」業界の常識を受け入れず、自分なりに答えを探し続けたことが、現在のバリュエンスのあり方につながっているのです。

つづく


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