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わかおの日記84

朝起きて眠い目をこすりながら(実際は8時半までたっぷり眠ったのでそこまで眠くはない)大学に行った。

時間に余裕をもって教室に入ると早々に知らない女子がぼくに話しかけてきた。ついにモテ期がぼくにもきたのではないか。そう期待しながら話を聞くと、どうやらこの教室で行われるはずだった中級発展クラスの英語の授業が休講になったというただの事務的な連絡だった。ぼくはなんだか複雑な気持ちになりながら教室を後にした。  

ぽっかり空いてしまった木曜2限の時間を、アルバイトの原稿を書くことで潰し、昼食を食べてから魔の3限に臨んだ。木曜の3限はドイツ語会話の授業である。コミュニケーション能力があまりにも要求されるこの授業を、ぼくは忌み嫌っているのだ。

ズームのブレイクアウトセッションでだれが最初に口火を切るのかという緊張感を味わうと、その度に寿命が3ヶ月くらい縮むような嫌な感じがする。割り当てられた課題が終わり、手持ち無沙汰になってしまったときには気まずくならないように雑談をしなければならない。そもそも片手で数えられるほどしか会ったことのない人間と、どうやって会話を弾ませることができようか。そんなことは義務教育では習わなかった。

そんな恨みがましいことを考えていると意外と時間は早くすぎており、授業は終わるのである。この一時間半は1週間でもっとも疲れる時間である。

そのあとは適当に授業を消費して家に帰った。 友人たちがずっと「大学で彼女をつくらなければ、一生女性とは触れ合わぬままに生涯を終えるのではないか」というようなことを心配していた。

このことは、彼女がいるぼくにとっても実は由々しき問題である。彼女がいるとはいえ、ぼくは彼女以外の異性とはまともに喋ることが出来ない。中高6年間の暗澹たる青春が未だぼくの深層心理に爪痕を残しているのだ。このままでは、まともな社会生活を送ることは難しいだろう。なぜなら人口の約半分は異性なのだから。そろそろ目を背けていた問題にも向き合わなければならないのかもしれないと思った木曜日だった。

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