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ヒトゲノム計画とは?

ヒトゲノム計画」とは1990年に始まった国際プロジェクトであり、ヒトのDNAの全塩基配列を調べ、さらにその中のどこにどのような遺伝子が含まれているかを突き止めることを目標とした計画だ。各国の協力と競争の結果、2003年に塩基配列の解読が終了しており、その結果が様々な研究に生かされている。

本記事ではヒトゲノム計画などで得られた、ゲノムに関する興味深い知見を紹介する。

まず、ヒトゲノムを構成するDNAには約30億塩基対が含まれており、その中に約20500個の遺伝子があると推定されている。また、全ての塩基配列が遺伝子として働いているわけではなく、非遺伝子領域が存在する。そして、タンパク質の合成に関する遺伝情報はDNAの塩基配列全体の1%程度に過ぎないと言われている。

また、99.9%の塩基配列は全ての人で共通しており、一方で約0.1%の塩基配列はそれぞれ異なっていることが明らかになった。つまり、0.1%の違いが各個人の顔や体質などの違いに繋がっているのだ。遺伝情報の違いによって、薬の効果や副作用などが異なるので、各個人の遺伝情報の違いを調べることによってパーソナライズされた医療を提供できると期待されている。しかしDNAの塩基配列は重要な個人情報であり、こういった情報の取り扱いには十分な注意が必要である。

※ゲノム・・・真核生物の場合、DNAの核内では細長い糸状の染色体が分散して存在している。そして通常は、1個の体細胞に大きさと形が同じ染色体が2本ずつある(染色体は64本なので、32セットの組み合わせがある)。この対になる染色体を相同染色体といい、相同染色体の一方は父親から、もう一方は母親から受け継いだものである。この相同染色体のどちらか一方を集めた1組に含まれる全ての遺伝情報をゲノムという。

※遺伝子・・・DNAの中で遺伝情報を伝える領域のこと。

参考文献:嶋田正和ほか14名,「生物基礎」,数研出版,(2016).

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