マガジンのカバー画像

「香港 ほんこ〜ん」vol.1(〜2019/5まで)

64
中国と違い、マスメディアがきちんと追えていない香港社会事情。わたしが2019年5月末までに配信した香港事情関連の記事をマガジン形式でまとめておきます。以降は1年に1冊の形で別途マ… もっと読む
日本のマスメディアで香港に常駐記者を置いているメディアは少数です。また、記者を常駐させているメディ… もっと詳しく
¥5,000
運営しているクリエイター

#香港返還

【ぶんぶくちゃいな】梁文道講座「北京の目に映る香港」その1

香港の片隅にある小さなコーヒーショップで毎月1回、非常に興味深い文化サロンが開かれている。この「ぶんぶくちゃいな」でも昨年インタビューを掲載した周保松・香港中文大学教授が運営する「Brew Note 文化サロン」(「Brew Note」は会場になっているカフェの名前)が主催する、文化教養の向上や思考の刺激を目指す講座である。

周教授にはわたしも昨年、大きく揺れている「香港人」のアイデンティティに

もっとみる

【ぶんぶくちゃいな】作家金庸氏逝去:「武侠」の意味を振り返る

10月30日、武侠作家の金庸氏が亡くなり、中国のSNSはあっという間に、「金庸作品の思い出」で埋め尽くされた。

武侠小説とは、満州族が朝廷を握っていた清朝を背景に「武」(武術、主に剣術)と「侠」(仁義)を頼りに、いわゆる素浪人として生きる漢人たちを主人公に描かれる。日本の場合、浪人でも主君に尽くす体制の中にあるが、武侠小説の主人公には主君はいない。彼らが生きるのは武術の師弟及び兄弟関係を中心にし

もっとみる

【ぶんぶくちゃいな】進む粤港澳大湾区構想と殻に閉じこもる香港本土意識

このnoteの「お知らせ」でもご案内した、周保松・香港中文大学教授の講演会が6月末に東京で行われ、主催者の予想を超える参加者が集まった。もともと会場がゆったりとしていたこともあり、「熱気ムンムン」とはならなかったものの、教授は終了後に目を潤ませ、「こんなに多くの人が聞きに来てくれるとは思っていなかった」と言いながら、高揚した顔で取り囲む人たちの質問に答えていた。

もし、わたしのお知らせを読んで来

もっとみる

【読んでみました中国本】現代から過去へ、香港のリマーカブルな時代をたどる推理小説:「13・67」陳浩基・著/天野健太郎・訳(文藝春秋)

先週、「『英雄本色』が放映3日間で興行収入2017万人民元(約3億4000万円)となった」という記事が中国の新聞に流れていた。

香港映画「英雄本色」は1986年、今では世界的な名監督の1人となったジョン・ウー(呉宇森)の出世作である。日本では「男たちの挽歌」というタイトルで、1987年で公開された。

日本では劇場公開後にビデオになってからこの映画はバカ売れした。ちょうど公開時にわたしは仕事を辞

もっとみる

【ぶんぶくちゃいな】香港返還20週年・その1:「手弁当でフェイクニュースに対抗する」社会記録頻道 SocREC

香港のメディア界では日本よりも速いスピードでネットに移行している。

今年に入ってから約30年、香港の世論を牽引してきた大衆紙「アップルデイリー」(「りんご日報」)の経営不振が大きく喧伝されるようになっているし、民主派に長らく愛されてきた「明報」もその中国政府への傾倒が人々の口に上っている。中国政府機関に脅された企業が、中国に批判的なメディアに広告を落とさなくなってきたからだ。

いち早くその変化

もっとみる
【ぶんぶくちゃいな】「十年」

【ぶんぶくちゃいな】「十年」

香港映画「十年」を観た。5人の香港人若手映画監督による短編作をオムニバス風にまとめたもので、昨年末の上映開始後から香港で大きな注目を集めた。

映画は主に撮影が行われた2015年から10年後にあたる、2025年の香港を予想して描かれている。

インド系香港人と中国から香港に移民した低層階級の若者が自分を受け入れてくれたマフィアの手下となり、結局は中央政府の関係者に道具にされて殺されてしまう「浮瓜」

もっとみる
【読んでみました中国本】倉田徹、張彧暋「香港 中国と向き合う自由都市」

【読んでみました中国本】倉田徹、張彧暋「香港 中国と向き合う自由都市」

●「香港 中国と向き合う自由都市」倉田徹、張彧暋(チョウ・イクマン)・著(岩波新書)

それぞれ1970年代生まれの日本、香港の学者による「香港論」である。おりしもこの2月には、香港随一の「下町」繁華街、モンコック(旺角)で暴力的な騒乱があった。

もっとみる