漁夫の利を求める中国とイラン

■戦場の兵器
 戦争になれば自国生産だけでは対応できない。だから外国から武器を購入するか支援を受けて戦争するのが基本。ロシアがウクライナに侵攻するとウクライナ軍は兵器が不足した。このためウクライナ軍はアメリカ・NATO加盟国などから兵器の提供を受けている。

 侵攻初期のロシア軍は自国製兵器だけで戦闘していたが今では外国製兵器を使うようになった。ロシアは国産兵器を作り外国にも輸出する軍事大国。そのロシアが逆に外国製兵器を使うまで兵器不足に苦しんでいる。

EU、ロシアにドローン提供のイランに制裁へ

 ウクライナの戦場でロシア軍が中国とイランの兵器を使っている動画が流れている。公式に中国とイランはロシアへの武器提供を認めていない。さらにロシア軍側だから確認することも難しい。イランのドローンはウクライナのインフラ攻撃に使われているので存在を明確に確認された。だがイランは公式に認めていないので曖昧な状況。それでもEUはイランへの制裁に動いているが直接的な制裁も曖昧になっている。

■ソ連時代の方が豊かだったロシア
 ソ連軍は自国製兵器を開発し生産していた。ソ連は広大な領土に地下資源が有るのだが、それでも第二次世界大戦でドイツ軍と戦闘すると兵器不足に苦しんだ。そこでソ連はアメリカからのレンドリースでドイツ軍と戦闘している。

 戦後のソ連は大規模な戦争も無い事から外国への武器提供の立場になった。冷戦期のロシアは対立していたアメリカとの覇権争いを行い、ソ連製兵器を提供してアメリカと間接的な戦争をしている。

 東西冷戦はソ連と欧米による核戦争まで想定されたが、地域紛争と言う東西の代理戦争で終わっている。この時のソ連は共産主義による計画経済が採用され、国民生活は最低限の生活水準は与えられたが武器の研究開発は優遇されていた。

 さらにソ連は覇権下の国にソ連製兵器を提供している。その典型例が中東戦争。ソ連は1948年の第一次中東戦争から1973年の第四次中東戦争などでアラブ諸国に武器を提供している。ソ連からの販売と軍事支援の違いが有るが、ソ連は20年以上外国を支援できるだけの国力が有った。

 今のロシアは見た目ではソ連時代よりも豊かに見えたが、ウクライナ侵攻でソ連時代の方が豊かだったことが判明する。ロシア軍がウクライナに侵攻すると3ヶ月後には武器不足が明らかになり、今では60年前の兵器の投入や中国とイラン製兵器が投入されるまで堕ちている。ソ連時代は20年以上外国を軍事支援できたが今のロシアは3ヶ月も耐えられないのだ。

■間接的な戦争
 国際社会では仮想敵国と直戦争しないで第三国を使って間接的な戦争をするのが基本。実際にアメリカ・ヨーロッパ諸国はウクライナに軍事支援を行い仮想敵国であるロシアと間接的な戦争をしている。

 自国で仮想敵国と戦争すると自軍に人的損害が出る。これでは戦争に勝っても自国が衰退するので回避する国が多い。紀元前のギリシャ世界でアテネとスパルタは25年間戦争を続けた。この戦争はペロポネソス戦争と呼ばれスパルタの勝利に終わったが、直後にペルシャ帝国の侵攻を受けてスパルタは敗北した。スパルタはアテネとの戦争に勝利したが国力が衰退。ペルシャ帝国はアテネとスパルタの衰退を待っており最終的な勝利者となった。

 ヨーロッパで1756年から始まった七年戦争はフリードリヒ大王率いるプロイセンをイギリスが支援する戦争だった。プロイセンは神聖ローマ帝国のオーストリアと戦争するが国力差16倍。絶望的な戦争だがイギリスはプロイセンの国家予算30%を支援していた。イギリスの仮想敵国はオーストリアだから、ヨーロッパのバランサーと見なしたプロイセンを支援して間接的な戦争をしたのだ。

 第二次世界大戦前の日本は中国大陸で中国共産党・蒋介石率いる国民党と戦闘していた。日本を仮想敵国にしていたアメリカは国民党への軍事支援を行っている。アメリカは国民党軍に武器弾薬・義勇兵であるフライングタイガースを提供した。

 武器弾薬・義勇兵の提供は間接的な戦争に該当し、国際社会では国防の一つとして多用される。朝鮮戦争で中国は人民解放軍を義勇兵として北朝鮮に派兵した。これは明らかだが、国際社会では義勇兵と公称すれば正規軍も義勇兵になる。これが国際社会では暗黙の了解になっている。何故なら過去に自国が使っていることと、将来使うかもしれないので黙認するのだ。

 ロシアのウクライナ侵攻でロシア軍は兵器不足に陥った。そこで中国とイランはロシアに軍事支援を行っている。中国とイランはロシアに軍事支援していることを認めていないが、間接的な戦争としてロシアに軍事支援をしていることは明らか。だから欧米は中国とイランに対して制裁を行うとしても過剰なことはできない。何故なら、過剰に行えばブーメランになるからだ。

 中国とイランから見ればロシアと欧米が核戦争で消滅すれば都合が良い。中国とイランは連合してもアメリカには勝てない。ならば核保有国であるロシアと欧米が核戦争を行えば漁夫の利を得られる。これは明らかだからロシアを使い間接的な戦争をすることは国防の基本。

■戦争の勝利者は誰だ?
 戦争は単独では行わず連合するのが基本。さらに賢い国なら間接的な戦争で仮想敵国と戦争させる。アメリカとヨーロッパ諸国はウクライナを使いロシアと間接的な戦争をしている。同時に中国とイランもロシアを使いアメリカと間接的な戦争をしている。これが国際社会の現実で間接的には第三次世界大戦は始まっているのが現実だ。

 中国とイランは国内問題で政権が困っていることを承知している。それでも間接的な戦争は実行できるからロシアを使い仮想敵国であるアメリカ打倒に邁進している。中国とイランは国内問題で苦しんでいるが、仮にロシアとアメリカが核戦争を始めると自国は戦勝国になれる。だからロシアと一定の距離を保ちながら耐えれば良いのだ。

 今のロシア軍では戦争に勝てないことは明白。プーチン大統領が勝利を求めるなら核兵器しか残されていないのが現実。ロシア軍は動員兵30万人を集めたが兵器不足・練度不足で勝利は得られない。実際にウクライナ軍の攻勢を止められないから、核兵器を使い放射能の汚染地帯を作らなければ進撃を止められない。ならばプーチン大統領は核兵器をウクライナで使うだろう。

 問題は核兵器がウクライナ限定で使われるか世界に向けられるか?プーチン大統領の選択次第で戦後の勝利者が分かれることになった。ウクライナ限定ならアメリカの勝利だが、世界に使われたら中国とイランが勝利者になる。

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