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母語に向かってなんだその考察は

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日本語の作る味噌汁が飲みたい。
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虚空の暴投

【架空の冒頭】
「理化学ヤンキー藤村は人間に優しくなかったが、ずぶ濡れの実験用ラットであるところの小沼にはたいそう優しかった。」

【是空の高校】
悟り世代真っ只中。

【亜空の航行】
遠洋で亜空の海流に乗ってしまった場合、視界が急激に悪くなるためなるべく動かないようにする。汽笛が聞こえづらくなるが、徒競争のホイッスルは通常の2.5倍程度の距離まで響くようになる。

【穀雨の効能】
田畑を潤し、穀

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わかっとる奴しか聞いとらん

夏の暑さで「茹で脳」が作れる!

今年も、語弊はあるがおおよそそんなような話題が話題になっていた。
「話題が話題」などと気色の悪い文を打つくらいには、実際に脳がやられている実感がある。

「茹で脳」とは少し違うが、昔母がよく「暑すぎて脳細胞死ぬわあ」と口にしていた。
冗談がわからなかったので、「私ら夏の度に物がわからんくなってきとるんか。シベリアの人達なんか頭ええんやろうな」と思っていた。

タン

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「君」「きみ」「キミ」
二人称である。「君雄くん」の愛称でないかぎりは二人称である。

とわかっちゃいるけれども、歌詞に出てくる「君」、あれはどうも二人称らしくない。
らしくないというか、二人称というのを単純にその言葉の聞き手、読み手のことだと考えると違和感がある。歌詞の場合「君」=リスナーという構造があまり成り立たないからだ。成り立つのは応援ソングくらいではなかろうか。

しかし、「君」は歌い手

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立ち入り禁止区域に入ってはいけません

看板がある。

「立ち入り禁止区域に入ってはいけません」

「入ってはいけない立ち入り禁止区域」
これははっきり「変だ」と感じる。「入ってはいけない」と「立ち入り禁止」被っとるやんけ、と思う。

「立ち入り禁止区域に入ってはいけません」も、「入ってはいけない」と「立ち入り禁止」が被っている。
条件は同じのはずだが、「言葉被っとるやんけ」感が薄い。

しかし、「入ってはいけない」を「立ち入り禁止」に

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ヤッホー

「ヤッホー 意味」
と検索したことがあるだろうか。
私はこれを調べては忘れ調べては忘れしている。一年ごとに同じキーワードで検索している。

noteに書けば二度と忘れずにすむのではないかと思ったのだが、今まで何を書いたかもあまり覚えていないので望み薄である。

「ヤッホー」は、登山者が居場所の確認など合図に使う掛け声である。
語源は「ヨーホー」とか「ヤッフー」とか「ヤハウェ」とかいろいろ言われてい

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被せてくる

ああ、日本語ねえ。あいつはいいやつなんだが、やたら被せてくるのがたまにきずなんだよな。

お食事券と汚職事件なんていうのは有名すぎてなんだが、改めて考えると奇跡的な発音の一致である。
オブジェクト名だったらバグを誘発しそうだ。

こういうのを「おしょくじけん言葉」と言う。世間ではどうか知らないが、私はそう言う。意地でも言う。
おしょくじけん言葉は意外にたくさんある。犬も歩けばおしょくじけん言葉に当

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いめ

いめ。つまり、しっぽの巻いてないいぬです。

違います。

「濃い」
こいつ、ちょっと変わった形容詞じゃないですか。
たとえば、固め、暗め、薄め、みたいに普通は語幹に「め」をつけるところを、「濃い」だけは「濃いめ」なんて妙な接続をやっている。
元々の言い方は「濃め」だったのかもしれないが、エヌエイチケーで「濃いめ」と言っていたのでこっちが現代の一般的語形であるのは間違いない。

そういえば名詞でも

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サノツキ

それがサノツキでないことは知っている。
それを知った時からそんなことは知っている。
それでも未だに頭の中で唱える。
サノツキ。

サノツキというのは大昔、学校の友達が誇らしげに教えてくれたものだが、その友達もまさか私が大人になっても頭の中でサノツキサノツキ言っているとは思わなかっただろう。
でも案外、奴もまだサノツキサノツキ言っているかもしれない。癖は抜けにくいものだし。

義務教育もとっくに終え

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最近タイニーバブルスというスマートフォンのゲームをプレイしている。
泡に色をつけ、同じ色の泡を4つ隣合わせて消していくパズルゲームである。ミッションの種類が豊富でグラフィックも凝っているのでなかなか飽きない。

そのゲームの中に「無限モード」というのがある。ようするに泡が無限に増えていくのをこちらもどんどん消していくモードなのだが、泡に色をつけるためのインクは一度使いきると満タンに戻るのに三時間放

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非常コント

「セン」がなくなっている。

千尋の逆パターンである。

「非常コンセント」
つるつるした素材でできた、赤い立体の文字だ。一文字は成人男性の手のひらくらいの大きさで、結構目立つ。

建物の全階同じ位置に取り付けられているのだが、10階と11階のものは共に「非常コント」になっている。
経年劣化でありがちなパターンだ。パチンコ店の「パ」だけ消えるようなものである(「パ」が消えやすいのは急カーブの曲線で

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校と長

小学校の長は小学校長。

中学校の長は中学校長。

高校の長は高校長?高等学校長か。
高校の正式名称が高等学校だというのをよく忘れてしまう。

大学は学長だったっけ。
大学校長という言い方はあまり聞いたことがない。
「学長」の方がかっこいいからだろうか(最終学歴幼稚園並感)。

かっこよさで言えば「高等学校長」もなかなかいい。
「高校長」だと無駄に母音が揃っていて、何か調子にのっている感じがするの

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キャー!!

「キャー!!」
それは、満を持して登場したアーティストに降り注ぐ、女性達(もしかすると男性も)の叫び声である。

高い声は良く通るからか、叫ぶ人に声が高い人が多いのか、観客が老若男女の偏りが少ないライブでも、低い「ウォー!!」をかき消すように甲高い「キャー!!」がよく聞こえる。

気になる。

叫ぶ行為自体は特に気にならない。あれはいわば、演歌歌手の紙吹雪みたいなものだと思っている。

何が気にな

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「欲しい」

また、品詞が変わっている。

「見える化」しかり、「科学する」しかり、用法や品詞を(文意が推測できる程度に)ずらす手法は、未だに実用に足る目新しさを持っているようだ。

その中に、最近ちょっと怖いやつがいる。

「あなたの欲しいがきっと見つかる」「この冬、欲しいが、見つかる」

アマゾンの奥地で、「欲しい」が名詞に化けた。
動詞を名詞のように使う時はよく「『欲しい』が ~ 」というように『』をつけ

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個人的

「個人的」
あまり多用したくないのに多用してしまう言葉コンテストには、毎年こいつがノミネートされる。

「会社代表としてではなく個人的に訪問する」の「個人的」ではなくて、「個人的にはこっちの方が好きなんだよね」の方の「個人的」である。

「個人的」でない可能性がある行動については、いくらでもつけたらいいと思う。
しかし、「思う」や「好き」なんていうのはもとから個人的なものだし、一回一回「個人的」と

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