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中流から下流への恐怖 精神科医目線で語ります

本日は「中流から下流への恐怖」というテーマでお話ししようかなと思います。



最近、臨床で結構多いんですよ。「どんどん給料が減っている、だから不安だ」「自分の親たちは稼げてたけど自分は稼げてない」「自分の親の代はこうだったのに自分はこれしか稼げてない」とかね。

結構最近増えたなと思います。貧乏というか、お金がないよということが。それが怖いんですという言い方をする。

僕がそこに注目し始めたからかもしれないですけど、やっぱり何か起きているなと思いますね。

景気がコロナの時は何となく停滞していたのが、経済が動き始めて格差が広がって、見えやすくなっているのかもしれないですね。

◾️円安

今すごい円安ですよね。ニュースでもあったけれども。

1ドル160円になったというのが、この動画を撮っている時に言ってましたけど、そもそも円安っていうのはどういうことかということですよね。

どういう問題があるのかを簡単におさらいしてみましょう。

例えば、500円で牛肉100gとして、日本は食料自給率が低いので牛肉は輸入に頼ることが多いんですけれど、国産牛も完全な国産牛じゃないパターンや子牛の時に連れてくるパターンもあります。

牛肉は円安や国際交流の中での影響を受けやすいですよね。

それで、円安になると100gで700円になりましたよと。
今までは500円で100g買えていたのが、70gしか買えなくなる。
これが円安です。お金の価値が下がって物価が上がる
円安が起きると色々な物価が上がります。日本は輸入に頼ることが多い。

Made in Japanの物で完結しているのであれば、円安の影響を受けないんですけど、日本は輸入に頼っているものが多いので、結構受けるんですよね。

ということは、一方で円安だと得する人たちもいるんだよね。

これがややこしくて、究極的に言ったらそんなことないよと言われそうですけど。

庶民が100損をしているときに、お金持ちの人は20とか30しか損をしないので、その差額で相対的に儲かるというか、全員ダメージを受けるんだけど、お金持ちの方がダメージを受けにくいから、その差で大きな差が広がるみたいなことが起きます。

だから株とか不動産の値段は上がるし、見ようによっては人件費も安くなるということで、これがちょっとややこしいんですよ。格差が広がる原因というかね、お金持ちの人が喜ぶという感じですね。

何か明治の時代の成金みたいな絵ですけど。

◾️日本経済が弱っている原因

なぜ円安が起きるかというとですね、日本の経済が弱っているからだということなんですけども、社会保障費が増えている。

少子高齢化で高齢者が増えて医療費が上がっているとか色々ありますね。

あとは地方の過疎化とかそういうのもあると。これも大きいですよね、IT/AIの遅れ。主要産業がITとかAIに移ってきていて。経済を生み出す主要産業は変わってきているんです、世界でね。

だけど日本はまだトヨタのような製造業が中心なので遅れているんですよね。

簡単に言えば、農業で栄えた国がだんだん工場が進出して製造業の時代になっているのに、まだ農業をやっていると貧乏じゃないですか。

それと同じで、ITやAIに移っているんだけど、移行しきれていないので貧乏になっちゃうと。

かと言って、ITやAIに移行しにくいイノベーションのジレンマみたいなものもあったりします。

あとは少子高齢化による人口減ですよね。
人口が減っているから経済が伸びない。消費が減るからね。

あとは国際社会の変化ですよね。国際社会の中での立ち位置が変わってきていて、アメリカに人材も富も集中しがちなんですよね。

IT企業のトップもインド系だったり、アメリカのお金を稼いでる主要産業であるITとか、その社長はね、純粋なアメリカ人かというとそうじゃなくて。

テスラのイーロン・マスクとかね、南アフリカ出身だったりもしますから、ちょっと違うんですよね。

だからアメリカの東京化というか、日本もやっぱり言い方が悪いですけども、優秀な人は東京に集まりがちじゃないですか、地方からね。

地方が衰退してしまうというか、寂れてしまう原因として、優秀な人材や元気な人材が東京に集まるからであり、世界の中での主に欧米圏や中国の人もそうなんだけど、アメリカに集まってしまうので、アメリカに。

吸い寄せらせてアメリカで良い会社ができちゃう。
そういうのも影響するなと言う感じですかね。

なんとなく自分の代では稼げなくなってきている。親の代より稼げなくなってる。なのに親は気づいてないとか。最近は気づいてきていますけどね。

あと自分も昔ほど稼げなくなっている。今の50代、60代の人が、自分が思ってたのと違うみたいなことを言う人も結構いますね。

でも会社にしがみつかないとなとかね。

◾️生活保護もなくなる?

あと臨床をしているとですね、生活保護もそのうちなくなるんじゃないかとか若い患者さんは不安になることもあるみたいです。

まあそこまでなくなることはないと思います。

というか、額が減ったとしても減ったら減ったで、今度はその対策を考えればいいだけなんですよね。

究極的に言ったらね。

だから僕は思考実験をする時に、究極、日本がもうお金がなくなった時に、でも働けない人がいた時にどうなるのかというと、見捨てるのではなくて、でも生活保護という形でお金を配れなくなった時にどうするかと言ったら、自衛隊みたいになるんじゃないかなと僕は思っていて。

自分が10代、20代の頃に自衛隊にいたんですけど、防衛医大だったから。防大も見ているんですけど、防大は4人部屋、防衛医大は2人部屋とかで、着る洋服が決まっていて。

食べるものも固定されてるんですよね。
寮で生活してたんですけど、あんな感じになる。ある意味刑務所っぽいといえば刑務所っぽいんですけど、そうなるだけなんですよね。

それはそれで楽しいんじゃないかなと思うんですけど。
何かそれに似たような形になるだけだから。

空き家だって大量にあるし、洋服だって安くなっている。

安くなってるというのは、江戸時代とかそういう時に比べてということですよ。ああいう時と比べても工場で簡単に作れるようになっているし、食料だって究極的に言ったら、農薬とか化学肥料の進化によって、余ってる。

機械が作れるようになるから、意外とそうなんではないかなと。

僕はこんなことを思ってしまうんですけど、それはSF的過ぎるじゃないかとか、そういう世界になるまでの移行はきついじゃないかとか、そういう生活はしたくないよとか、寮生活なんか地獄じゃないかとか言われそうですけど、なんとなく思ったりします。

あとはムラカラとかね、リヴァの青木さんがやっているムラカラを見てみると、地方は広いし自然も豊かだし、色々ある。

お金がなくてもある程度暮らしていけたりするから。東京にこだわらなければ全然色々あるんじゃないのと思っちゃいますけどね。

でも結局それは中流から下流への恐怖とも似ているんだろうなと思ったりします。

これYouTubeで話す内容じゃないかもしれないですけど、診察室とかだともうちょっとくだけて喋りますけど。

「益田、わかってないこと言うなよ」とか「お前金儲けしてるじゃないか」とか「医者だからわかんないんだ」とか言われそうですけど、そうと言えばそうだし、自分もお金持ちじゃなかった時もあるから何となく思いますけどね。

◾️失うことの恐怖

でもどちらかというと、結局お金があるとかないということよりも、ないところから増えていったということよりも、あるところから減っていくという、この「失う」恐怖は違うんですよね。

最初からなかったらそんなに恐怖はないんだよね。人というのは失うことの方が怖いし、何ていうのかな、幸福を感じにくいんですよね。

この差分で感じやすいんですよね。人間というのは失うことの方が怖い。

老い、社会が少子化で人口が減っているとか、経済が縮小しているとか。

少ないところから大きくなっていくことよりも、減っているという事実の方が怖いし、苦しいんですよね。

老いや治らない病気、このまま続くんじゃないか、少しずつ悪化していくんじゃないかということに人はすごく恐怖感を感じて怯えてしまうということです。

じゃあそういうことは現代だけなのかということです。

これまで人類は常に成長し続けていて、衰退する経験を味わったことがないのかというとそんなことはなくて、栄枯盛衰というか、栄えては滅び、栄えては滅びを繰り返しているんですよね。

◾️信仰を奪われた民族?

そういう中でもなぜ心の安定を持てないかという話をした時に、この前、スタンフォード大学の重松先生とお話した時に言われてたんですけど、やっぱり信仰というものというか、そういう霊的な安心感を持てていない。

マーフィー先生は日系アメリカ人で、途中仏教を考えて、また最近キリスト教に戻ってきているというか、キリスト教のことをよく考えていると仰っていました。

日本人というのは、この信仰、祈るという作業を許されない民族になってしまっている。

というか、信仰を政治利用され過ぎてきたという歴史があって。

それはもちろん欧米も信仰が政治利用されなかったことはないんですけども、日本の場合は結構露骨に利用され続けてきて、だからなんとなく僕らは宗教2世の問題もそうですけど、なんとなくトラウマとして僕らは持ってる。

直接的な宗教2世の問題を僕らは感じていなくても、関わっていない人もいますけど、でも間接的にやっぱり勧誘を受けたり色々な経験がある中で、宗教に対してトラウマを僕らは全体として持っていますよね、民族全体として。

自分は違っても自分の友達がそうだった。

自分の友達がそれで辛い思いをしたとかいうのを横で見ていて、助けてあげられなかったという罪悪感も持っているというかね。

ある意味軍隊の時代というかね、戦争中は神道が戦争利用をされていましたから、結構苦しいというかね。

でもここにも一つの答えはあって、平家物語もそうですけど、日本人としては栄枯盛衰については結構慣れているんですよね。

侘び寂びという形で受け入れていくとか、そこへの不安を解消する知恵というか、心のモデルというか、社会モデルというものを編み出しています。

だから仏教、禅、自然、侘び寂びについて考えていくと、こういう不安も結構消えていくのかなとか一つのアイデアとして思います。

日本は自然が豊かなので、自然の力によって全ての都市が飲み込まれて、もう一回ゼロに戻るということを目の当たりにしていて、そこへの妙な安心感があるんですよね。

欧米の人たちが持つ自然の恐怖というと、ただ文明が破壊されて、あと砂漠として残るという感じなんですけど、そうじゃなくて日本の場合は自然が強いので、森に飲み込まれるっていう感じですよね。

飲み込まれて、でも僕らも自然に還るだけだよねみたいな感じで、良かった良かったという、ちょっと牧歌的というかね、そういう民族でもあるので、何かそこら辺も思い出せるといいのかなと思いますね。

中流から下流へ行く恐怖はあって、色々思いますけど、そういうのも今の時代だけ考えるとそうなんだけど、歴史を考えたり、その時の日本人の気持ちを考えると、一つの安心材料というか、恐怖を乗り越える一つのいいアイデアなのかなと個人的には思っています。

今回は、中流から下流への恐怖というテーマでお話しました。

◾️本日の宿題

宿題は、皆さんが抱えている今後の人生で失うものについて書いてみてください。

例えば、お金がなくなる、給料が減ってきている、財産が目減りしてる。

自分の家には子供がいない、子供がいるけれど一人しかいない、子供はいるけれどは病気で私たちよりは稼げないだろうとかね。

そういうことを書いてみて、この恐怖があるなということを認め合うこともいい学びなんじゃないかなと思います。

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