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死のタブー視と安楽死

本日は「死のタブーと安楽死」というテーマでお話ししようと思います。


臨床をしていて、自殺したいとか死にたいという意見はよく聞くんですけれども、でも実際どう死にたいのかとか、どういう風に老いていきたいのかとか、どういう風に人生全体を捉えているのかという議論はなかなかしにくかったり、想像がつかない人が多いみたいです。

 それは身近に病がある人がいなかったり、身近に老いた人がいなかったり、老いた人たちとの会話が少なかったりして、なかなかそういうイメージが持ちにくいからなのかなとは思いますけれども。特に東京はそうですよね。

あと僕なんか早稲田でやっているので、まさに学生街で臨床していますから、なおさらなんかこう死ぬとか老いるということは議題に上がりにくいのかもしれないんですけども。

でも現代において死というのはタブー化されているので、日本カルチャーにおいては、なかなか想像つかないんだろうなと思います。

 一方で、安楽死の議論はヨーロッパを中心に先進国の中ではすごくディスカッションされていて、合法化されている地域が増えているという現実があります。

今回は、そこら辺の話を含めてしていく中で、皆さんとこの問題について一緒に考えていきたいなと思います。

 松崎先生やミヤガワRADIOの宮川先生が、「安楽死が合法の国で起こっていること」という本について動画で取り上げてたんですよ。

児玉真美さんの本です。

https://www.amazon.co.jp/dp/4480075771


僕もですね、言い訳じゃないですよ、言いわけじゃなくて、取り上げる前にネットでもちょっとバズったので、僕も買っていたんですよ。読もうと思ってたんですけど読んでいなくて積読にしてて、ああ僕も動画撮らなきゃと思ってですね、もう一回読み直して、今急遽撮っているそういう感じです。

■安楽死が広がっている

 この本の内容をざっくりまとめると、安楽死が広がっているよ、先進国を中心に広がっているよと。

例えばカナダでは2016年に合法化して、2021年の時点で全体の死の3.3%の人が安楽死を選んでいるということになります。

回復の見込みのない病気、末期がんとかそういう病気とかに適用されていた安楽死が、だんだんすべり坂のように色々なところに適用されていて、例えば重度の心身障害、知的障害の人とかも含めた心身障害とか精神障害の人たちまで安楽死の範囲が広がっているということですね。

自己決定論。つまり死ぬ権利というものは何なのか。自分が死ぬ権利もあるんじゃないかっていうことで、その自己決定論の拡大に伴って滑り坂のように広がっていってしまっている。

医師は良心の呵責もあると思うんですね。
だから、そういう安楽死に関与しない医療もできますよということで、医療者にもそういう自由が与えられている。

一方で、やはりこの本でどこまで言及されているかあれですけども、質の悪い医師というのもいることは事実なわけですよね。

 儲け重視の医者はいるわけですよ。そういう人の中でうまく悪用されているケースもあるんじゃないかみたいなことがあります。日本でも思いますね。

医師免許を取った後に個人の自由というのもあるので、自由診療ができるわけですよね。その中で安楽死が合法化された場合に、それを選ぶドクターもいると思います。それは結構恐ろしいことだなと思いますね。

それは何となく僕も本を読みながら、某ナントカクリニックを想像しながら、あそこがもしやったらどうなるんだろうとか考えちゃいますよね。

 そういう中でもう死んでしまいたいなと思っている人たちが、治療を放棄してそっちに流れてしまうことはあるような気がします。実際、僕も臨床していて、カウンセリングとかでなかなか良くなっていかないわけですよ。
時間がかかるし、薬も効かない人もいるわけですよね。

 そういう中で藁をもすがる思いで僕の病院を辞めてどこかの病院に行って、何百万とかかる治療を受けて、「騙されるとわかっているんですけど、益田先生紹介状を書いてください」と言われて僕も泣く泣く書いて、患者さんが騙されて何百万も取られて帰ってくるケースもあるんですね。

TMSをやったりサプリメントを買わされたり。そういうものも見ているので苦しいし、そういうことの延長線上にこの問題はあると思う。

実際、患者さんの中でいますよ。安楽死したいので、スイスまでの紹介状を書いてくださいと言いますけど、僕は断ったんですけど、でもまあ色々あるなとは思います。

あと無益な治療論ですね。  
経済的コスパがいいでしょうみたいな話ですよ。苦しむ人や世の中の役に立たない人たちが、早く死んでくれた方がいいんじゃないかというひろゆき的な世界観というか。

それを支持する大衆というのもいるわけで、こういうものに後押しされて自死を勧めていく社会になっていく様子も描かれていました。
もちろん、全部の意見ではないと思いますけど、そこにあるリアリティが本では描かれていました。詳しくは本で読んでください。

■日本の状況

日本はどうなのかと言うと、安楽死がなくて介護が増えていて、認知症の人も増えていて、世界有数の高齢者の国ですよね。

日本ではどんなことが起きているかというと、経済の失速とかいろいろなことが起きてたりはします。

そういう中で僕らは世界に向けて安楽死を合法化してない国として、合法化している国に対してどういうメッセージを送るのかは、結構重要なことだと思いますし、互いにディスカッションしていくってことは僕はとても重要だろうなと思いますね。

一度始めてしまったらなかなか止めにくいんですよ。法律で決まってしまうとね。だからこそ始めた国と始めていない国で色々語り合うことはとても重要だろうなと思います。

■なぜタブー視されるのか

 では逆にタブー視している、なぜ日本でそういうことが語られないのか、臨床現場でもそういう風に語られていないのかを考えると、まず一つは医療技術の進歩ですよね。

医療レベルが上がっていて、自分は年を取っても長生きできるんじゃないか。もっと長生きできるんじゃないか。今は80歳ぐらいで亡くなっているけど、自分は100歳までいけるんじゃないか、120歳まで生きられるようになるんじゃないか。

技術も進んでいくからAIと組み合わせてもっと長生きできるんじゃないか、認知症にならないんじゃないかと思うかもしれない。そういうことでなんとなくリアリティがなかったり。

あと変化が多いですよね。江戸時代の時みたいな形で、自分も爺さんみたいな感じで生活するのかなと思えないんですね。変化が多いから、あまりにも。

だから生活のスタイルも変わるし、10年前とも全然違いますよ。インターネットの変化とかね。だから働き方も違うわけじゃないですか。10年前と全然。

今は在宅勤務も一般化してきたわけだし。
そういう中では自分が死ぬ何十年後のことは想像つきにくいとかもあるだろう。

あとは発達障害傾向のある人はそもそも難しいんですよね。
時間の展望とか自分の変化というのが苦手だったり、ライフステージが切り替わるとか、役割が変化していくことが想像しにくかったりするし、実際できなかったりする。

常に自分のままなので、そこで分かりにくいというのもあるのかなと思います。
あとはアンチエイジングですね。アンチエイジングと経済という問題で、誰も老けたくないし、年を取りたくない、死にたくないんですよ。

だからそれを防ぐためのビジネスというのがすごく活性化している。
広告も打たれるので、結果的にタブー視されちゃうのかなとも思います。

お金持ち向けの医療がありますよね。点滴1本100万円とか。こういう話の中で僕が思うのは、大きい絵の話をするのも大事だけども、自分自身の人生について考え直すことはとても重要だと思います。

自分はどういう風に老いていくのか。どういう風に変わっていくのか。5年後、10年後、20年後をどう想像するのか、どんな人生を送りたいのかを考えることはとても重要ですね。

変化が多いから無意味じゃないかと言う患者さんは多いんですけども、やっぱり一回考えておくことは、また変化があってブレるかもしれないけれども、また考えればいいんですよね。

こういうのは病がある時、大きな決断はあれですけど、病気がある時だからこそ考えるものでもあるんですね。

こういう風に自分のアイデンティティが揺らぐ。病気になってアイデンティティが揺らいでいる時にこそ考えておく必要があります。


目標や目的というのは、長期目標と短期目標を同時に考えなきゃいけないんですよね。ある時は長期目標を考える。こうしようと思って、今の短期目標をピタッと決める。

今度は今やるべきことがちょっとずつずれていくんですね。
ずれに合わせてこっちを変えてあげる。
こうなんだと変えて、またこっちを変えるとかこう変えてあげる。

この2点を無意味なんじゃないかとかではなくて、何度も何度も考えていくのが心の探求でもあるし、人生の探求でもあるし、面白みでもあるんですね。
楽しいじゃないですか。こういうことを考えるのは。

だから一緒に楽しく考えてもらいつつ治療していく。

それが結果的に心の成熟や人生の本質を理解することにもなるので、そうすると心が成熟していくので、成熟した結果、身近な不安や困難を乗り越えやすくなるので、結果的にうつが良くなることになるわけですよね。

 ■本日の宿題

 ライフステージについて考えてもらうか、安楽死の話。
特にこの本の感想とかを読んだ方は書いてもらって、皆さんと情報をシェアして色々ディスカッションできたらなと思います。

あとは実際、今海外に住んでいる方で、安楽死が合法化されている国の人たちには現地の雰囲気を教えてもらえたらすごく勉強になるので、コメント欄に書いていただけると助かります。

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