見出し画像

【読書記録】黄金の烏(阿部智里)

【あらすじ】
人間の代わりに「八咫烏」の一族が住まう世界「山内」で、仙人蓋と呼ばれる危険な薬の被害が報告された。その行方を追って旅に出た日嗣の御子たる若宮と、彼に仕える雪哉は、最北の地で村人たちを襲い、喰らい尽くした大猿を発見する。生存者は、小梅と名乗る少女ただ一人…(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

数年前から追っている阿部智里さんの八咫烏シリーズの3作目を久々に再読。

時系列的には雪哉が垂氷郷に帰って割とすぐ。これまでは宮中がメインの話だったけど事件は雪哉の故郷の北領で起こる。

人喰い猿のところが割と生々しくてグロい。しかも大猿たちには知性がありそうだということがわかって余計に気味が悪くなる。ただの獣なら野生動物に襲われたみたいな一種の事故的な感じがあるけど、計画的に襲われて、切り刻まれて塩漬けにされたりしてるので八咫烏からしたら本当に恐怖だと思う。

この問題を解決するために、雪哉は生き残った少女、小梅と朝廷に戻る。小梅は庶民の、それもどちらかといえば生活が苦しい女の子。2作目までは綺羅びやかで華やかな宮中の様子が描かれることが多かったけど、身分の差がしっかりとあるな〜というのを突きつけられる。アウトローな感じの地下街の組織も出てきて、朝廷の外の世界が一気に広がった。

小梅は雪哉が目をつけていてかなり怪しいし、実際父親の悪事を見て見ぬふりをしてたけど、首謀者は別にいた。今回は雪哉の見る目がなかったというか、小梅は雪哉のことを好きだったのに、全然気づてないだけだった。そのことを母親に窘められ、浜木綿や真赭の薄には責められて雪哉が泣きそうになっているところは、年頃の男の子らしくてちょっと可愛いかった。普段理屈っぽくて小生意気な感じなので余計に。

物語が進むにつれて猿たちは山の中にいたことがわかる。山の中に、山内と外界を繋ぐ中間部分があって、その狭間に猿たちが住んでいるらしい。脅威が身近なところにあるって怖すぎ!しかもこいつら、人間も食べていて、その人間の骨が怪しい薬の仙人蓋立という。

人間も食べとるんかい!と思うと同時に、この世界に人間という概念があるんだ、ということに驚かされる。八咫烏シリーズって、八咫烏の世界を描く宮中ファンタジーじゃないの…?人間の世界と繋がってたんだ…?っていう。

物語の途中で山の端に不知火が見えるっていう話題が出るんだけど、この不知火も人間界の夜景だったという…山内の世界はどうなっちゃうの?人間の世界に侵食されてなくなっちゃうの?とまだまだ解決すべき課題が山積みのまま3作目は終わる。

真の金烏についても少しずつ謎が明かされる。まず、真の金烏は政治的な方便で真の金烏と名乗っているだけじゃなくて、その時代時代で八咫烏を守るために必要な不思議な力を持っている。

山内の結界が綻んできているせいか、若宮には弓と矢で綻びを繕う力がある。若宮が弓を山の端に放つと蔓が伸びて花が咲いて結界の綻びが魔法のように繕われていた。雪哉が驚いていたから八咫烏の世界でも驚くべき能力なんだと思う。

昔は悪いものを祓う際の神事で、矢を放ってたりするらしい(鵼の碑情報)から、それで弓矢で繕うっていう設定になったのかな?

それから若宮は全ての八咫烏の父であり母であるから、どんなに悪い八咫烏でも傷つけることができない。そのせいで若宮は最後に大怪我を負ってしまう。真の金烏としての自我はあるけど、若宮個人としての心はないらしい。これは真の金烏としての目的を達成するためなんだろうけど、本当に感情がないかは疑問。あっても真の金烏としての意識のほうが強くて若宮の感情は強制的に押し込められちゃうっていうことなのかな?

どちらにせよ、若宮が本当に他の八咫烏たちと違うのは間違いなさそう。

あんまり覚えてないけど、4作以降で更に謎が明かされるというか、謎が深まるんだよね。

面白くて、時間がないのに一気に読んでしまう〜〜!

この記事が参加している募集

#読書感想文

187,194件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?