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【読書記録】三体(劉慈欣)

【あらすじ】
物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート女性科学者・葉文潔(イエ・ウェンジエ)。失意の日々を過ごす彼女は、ある日、巨大パラボラアンテナを備える謎めいた軍事基地にスカウトされる。そこでは、人類の運命を左右するかもしれないプロジェクトが、極秘裏に進行していた。数十年後。ナノテク素材の研究者・汪淼(ワン・ミャオ)は、ある会議に招集され、世界的な科学者が次々に自殺している事実を告げられる。その陰に見え隠れする学術団体〈科学フロンティア〉への潜入を引き受けた彼を、科学的にありえない怪現象〈ゴースト・カウントダウン〉が襲う。そして汪淼が入り込む、三つの太陽を持つ異星を舞台にしたVRゲーム『三体』の驚くべき真実とは。(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

スケールが!とにかくでかい!

最初、キーパーソンである葉文潔の父親が内ゲバで悲惨な死を迎えて、文潔自身も不条理な環境で虐げられながら生きていかなくてはいかなくて…という思想の統制が厳しい時期のシーンが結構長いことあって、なかなか読み進められなかったんだけど、現代になって、もう1人のキーパーソンである研究者の汪淼が出てくると、急にサスペンス味が強くなって、超次元的存在の姿が徐々にわかってきて、ページをめくる手が止められなくなる〜〜

まさか、地球を植民地にしようという地球外生命体(三体人)がいて、自分たちが地球に到達するまでに(何光年も離れているので到着まで何百年もかかる)地球人が自分たちに対抗し得る力を身に着けないよう、基礎研究の科学者ばかりを狙って自殺に追い込んだり、実験環境に手を加えて科学の根底を覆すような結果を出したりして、混乱を招いたりしていたなんてーー!

しかも三体人を地球に導く原因となったのは今はおばあちゃんとなった葉文潔。文潔は若い頃地球外生命体にメッセージを送る基地で働いていて、
地球の文明に関するメッセージを発信→偶然にも自分が夜勤のときに地球外からメッセージを受信→メッセージに返信すると居場所特定されて侵略されちゃうよ(善意の三体人による忠告)→むしろ人間はクソなので侵略に協力してもいいけど?という流れ(かなり異訳)。

その後基地はなくなって、メッセージの送受信もできなくなって、あれは夢だったのかな〜とか思ったりもするんだけど、さらに人間に失望しちゃういくつかの出来事に出くわしたり、同じように人間はクソだと思ってる資産家と巡り合っちゃって、資産家のお金で宇宙からのメッセージを送受信できる設備を作って、再び三体人とやりとりできるようになっちゃうという…
まぁ地球人ってね、ほんとに利己的で人間のことしか、特に自分のことしか考えないどうしようもないやつばっかだもんな…

三体人に地球を矯正してもらおう派は、三体という体感型のVRゲームで適性を見られて集められるんだけど、このゲームを通して知る三体世界の世界感もすごい。三体世界は3つの太陽があって、そのせいで環境が安定しない乱期と過ごしやすい恒期が交互に訪れ、乱期には文明がどんどこ滅亡している。ゲーム上でも何回も文明が滅びている。

確かに地球ってめちゃくちゃ過ごしやすい星だけど、広い宇宙、こんな恵まれた環境じゃない星はたくさんあって、そこでも生命体が生まれては滅びてを繰り返してるかもしれないよね…

三体人はしょっちゅう乱期がくるから、乱期に備えて脱水→恒期がきたら水でもとに戻ることができるような身体になってるし、生き残ることが至上命題だから余計な感情ももたなければ、音楽や美術などを楽しむ文化もない。そんな三体人に地球をのっとられちゃったらつまらなそう…三体に地球を矯正してもらおう派は本当にそれでいいのかな…

地球人と三体人との間には圧倒的な科学力の差があるとわかっちゃった研究者とか文化人は地球人は三体人が侵略に来るまで、緩やかに死を迎えるしかないじゃん!侵略不可避じゃん!と思ってみんな絶望して自棄になったりしちゃうんだけど、強引だけど刑事としては優秀な史強が、いやいや技術力とかに差はあっても完全に滅ぼすことは難しいはずなんだからしっかり抵抗する術をみつけていくべきやろ!みたいなことを言って、そうだね!みたいな感じになって1巻が終わる。

三体人が来るのは汪淼の子孫の子孫の子孫くらいの時代かな?それまでにどうやって地球人は生きて、実際に三体人が来たときはどういうふうに対応するんだろう?続きが気になるーー!

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