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【読書記録】塗仏の宴 宴の支度/宴の始末(京極夏彦)

高校生のときにハマって依頼、追い続けているシリーズの6作目。

9月に17年ぶりの新刊が出るということで8月から読み返してたんだけど、全然間に合っていない。でも改めて百鬼夜行シリーズの面白さを噛み締めている…

【あらすじ】

宴の支度
宴の支度は整いました――。京極堂、挑発される。「知りたいですか」。郷土史家を名乗る男は囁く。「知り――たいです」。答えた男女は己を失い、昏き界へと連れ去られた。非常時下、大量殺戮の果てに伊豆山中の集落が消えたとの奇怪な噂。敗戦後、簇出した東洋風の胡乱な集団6つ。15年を経て宴の支度は整い、京極堂を誘い出す計は成る。シリーズ第6弾。

宴の始末
後の始末をお願いします――。京極堂、覚悟を決める。「愉しかったでしょう。こんなに長い間、楽しませてあげたんですからねえ」。その男はそう言った。蓮台寺温泉裸女殺害犯の嫌疑で逮捕された関口巽と、伊豆韮山の山深く分け入らんとする宗教集団。接点は果たしてあるのか? ようやく乗り出した京極堂が、怒りと哀しみをもって開示する「宴(ゲーム)」の驚愕の真相。

(あらすじより)

【感想(ネタバレあり)】

今回は憑き物落としはほぼなし!でも今まで1番百鬼夜行シリーズというシリーズ名に相応しい内容だったと思う。どんでん返しのどんでん返し、本末転倒、騙している方が騙されている構図と家族とは何かがテーマ。

今作ではこれまで人に担ぎ出されて、誰かのために言葉を紡ぎ、謎を解体し、再構築し、ときには人を祝い、ときには人を呪った京極堂が、自らの意思で戸人村に向かうんだけど、向かうまでの経緯が熱かった。特に堂島に牽制されてなかなか動けない京極堂を榎木津が唆すシーン!

「でもお前が嫌なんだろ」「いいから自分の話をしろ」と京極堂の本心を聞き出そうとする榎木津。悪友感ある!熱い!

全然関係ないけど、このシーンで榎木津咥え煙草していて、煙草も吸うんだ〜と新たな発見があった。気怠そうに咥え煙草をする榎木津、よい…

それから、いくつもの団体が争いながら戸人村に向かうシーンもすごくよかった。まさに百鬼夜行。

藍童子の手先の浮浪児が式神のように駆け巡り、成仙道の信者と韓流気道会が争い、太斗風水塾から依頼を受けた桑田組はバリケードを作り抵抗、闇夜に乗じて条山房の人たちもやってくる。

篝火が燃え黒煙が立ち上り、負傷者のうめき声や啜り泣き、信者の念仏が響く中、死神のような陰陽師が闇の中から現れて、誰にも咎められることなく山を登っていく。

演出がかっこよすぎるーー

神が死神の露払いをするというのもよかった。死神であるところの京極堂が、榎木津を見て「あそこで神が遊んでいる」っていうのもよかった。

佐伯家の座敷での藍童子とのシーンもよかったな。藍童子は伊坂幸太郎のマリアビートルでいうところの王子みたいな悪意の塊みたいな子どもなんだけど、京極堂に負かされてスッとした。「勘違いするなよ」のくだりの京極堂、かっこよかった〜

猫目洞の潤子と話すシーンも色気があってかっこよかったな。京極堂に「おやーあなたを落とすのは大変そうだ。」とか言われたらどきどきしちゃうよね。

それから、今回もこれまでのシリーズの登場人物がたくさん出てくるので、繋がりを見つけるのが楽しかった。織作茜は記憶に新しいけど、まさか姑獲鳥の内藤まで出てくるとは。

織作茜は聡明で勘がよくて駆け引きも上手だったから今後もちょいちょい出てほしいな〜と思ったので、あっという間に退場してしまってちょっと残念だった。

狂骨の夢の朱美が出てきたのも嬉しかった。今回も気風がよくて、姉御!という感じで、面倒見もよくて、だから尾国も朱美は巻き込みたくなかったんだろうな。

本作からの登場人物もたくさん出てくるけど、佐伯家はみんな違う名前で違う人生を生きていてややこしいったらありゃしない。多分しばらくしたらまた忘れるな。

ラスボス的な堂島が今後どう関わってきたのか、過去にどんなことをしたのか(思わず榎木津が後ずさってしまうくらいのことって…)気になるーー新刊には出てるのかな?

次は陰摩羅鬼の瑕だけど、これは手元に本がないからまた買わないといけないやつ。早く続きが読みたい!

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