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府中・郷土の森博物館「梅まつり」:梅の花をスケッチしました


はじめに

 「府中市郷土の森博物館」は、あくまで個人的な意見になりますが、都内から比較的近いにもかかわらず府中市民以外には、あまり知られていないスポットのように思います。

 府中市に教室を持つようになってからは、博物館そのものよりも、移築された多くの古い建物や季節の花木に魅せられて頻繁にスケッチに訪れるようになりました。

 今回は、2月の16日と29日に訪れた「梅まつり」中の梅のスケッチを紹介します。

 2回訪れるのは、品種によって花の咲く時期が異なるからです。今回、2回目は2月16日の1週間後22日前後にする予定でしたが、あいにく天候が悪くベストの時期を逃してしまいました。

今回巡ったルートに沿って梅林とそのスケッチを紹介します

(1)2月16日の訪問記

 下に園内のマップを示します。

郷土の森博物館の園内マップ写真(南が上です)
ピンクの○印が梅林を示します。

 正門から右手に博物館(休館中)、左側にピンク色の旧府中尋常高等小学校校舎を見ながら進み、道なりにけやき並木を南に進むと、正面に旧府中町役場の黄色い建物が見えてきます。

 梅園は、その背後から始まります。旧府中町役場や、旧府中郵便取扱所(旧矢島家住宅)の建物を背景にして梅の花を見ると絵になります。

 今回、郵便局を背景にして梅の花をスケッチをしたので下に示します。

旧府中郵便取扱所裏の梅林の梅
スケッチブック B5 ペンとインク

  この時の梅はまだ3分咲きでした。満開の花もよいですが、つぼみも意外に可愛らしく私は好きです。
  背後の建物は幕末から1872年の間に建てられ、1872年(明治5)から1889年(明治22)までの間、府中郵便取扱所として使われました。
 非常にシンプルな造りで、柱と板壁の直線が美しい建物です。

このゾーンには、江戸期から昭和初期の建物が移築復元されています。それぞれの建物の側に梅の木があったので、梅の花を入れて写真を撮ったのでご覧ください。

左:旧府中町役場、右:旧府中郵便取扱所
左上:旧田中家住宅、左下:同茶室、右:旧府中尋常高等小学校校舎(一階:村野四郎記念館)

 梅の木が無かったので撮影しませんでしたが、旧田中家住宅の真向いには、明治21年創建の立派な店蔵旧島田家住宅があります。
 どの建物もスケッチ心を誘います。

 なお、旧府中尋常高等小学校校舎の1階は、府中市にゆかりの詩人「村野四郎」の記念館になっています。
 私自身は若い頃に国語の教科書に載った彼の詩が好きになり、その後詩集も買いました。
 村野四郎が府中生まれとはまったく知らず、この記念館を偶然見つけた時はうれしくなりました。先日府中の教室で梅の花スケッチの練習をしたときに村野四郎記念館の話題を出したところ生徒さん全員村野四郎を知らないとの返事で若干ショックを受けました。

 さて、この場所から南に進み人工の渓流を横切ると新たな梅林(平右衛門広場)が現れます。回遊式になっており、聞きなれない種類の梅も植えられています。

右の「鹿児島紅梅」は、大宰府の天満宮の梅を持ってきたとのこと

 この間にいくつか梅の花だけを大きく描いてみました。

梅の花のスケッチ

 さらに、南へ進み階段を上がると、あたり一面梅林になります。

南に向かって、右側(西方向)に道路があり、枝垂れ梅の品種が並木状に植えられています。しかし丘の部分は多くの品種の若木が植えられて新たな梅園を整備中です(後述します)。

左上:枝垂れ梅の並木、左下:枝垂れ梅の林、右:並木の枝垂れ梅から東屋のある丘を望む

 一方左側(東方向)は、基本的に「白加賀」「豊後」「紅千鳥」「唐梅」「小梅」など一般的な品種で構成された広い梅園になっています(下の写真をご覧ください)。

梅林
梅林2

 梅の花は2月でほぼ終了ですが、この梅林の下草の部分には広範囲に彼岸花が植えられており、秋には一帯が真っ赤に染めあがります。
 この時期には福寿草の真っ黄色の花がところどころ顔を出し、カメラ同好会のメンバーとおぼしき人がカメラを下に向けて盛んに撮影しています。

左:梅の木の根元の福寿草 右:花と葉のスケッチ(ペンとインク)

 私が上の左の写真を撮影したのは、花の可愛らしさも勿論ですが、よくみると葉の形がニンジンの葉のように複雑な形をしていることに気が付いたからです。その後スケッチ教室で花と葉のスケッチをデモした時の例を右に示しました。やはり福寿草の葉を描くのは難しい。
 写真を見て描いたので、細かいところまで丁寧に描いていますが、もし現場でスケッチすればもっと速くペンを走らせたと思います。

(2)2月29日訪問記

 さて2月16日から13日後、再び梅林を訪れました。冒頭に述べた様に残念ながらすでにピークを過ぎていました。
 今回は現在拡張中の新しい梅園に注目してみました。

拡張中の新しい梅園

 上の写真に示すように、全て異なる品種の若木が一本づつ多数植えられています。品種名を示すカードを読んでいくうちに、興味が湧いてきたので書き写しました。

流芳、花香実(はなかみ)、一寸梅、草思梅、日月、玉簾、内裏、島原、露茜、世界の図、泰平、白鷹、翁、西王母、玉織姫、大輪緋梅、香篆(こうてん)、巻立山、沖縄、光輝(こうき)、高明野梅、月宮殿、寿、初雁、地蔵、淡路、麝香梅(じゃこうばい)、紅筆、田子の浦、武蔵野、酈懸(てつけん)、江南所無、綾梅、筑紫紅、五彩梅、難波紅、白八房、不老園緋梅、叡山白、摩耶紅、早咲き一重緑咢、旭の海、華農玉蝶台閣、扇流し、入日の海、五郎、一才梅、玉拳、冬至、雲井、剣先、東の都、都鳥、大盃、米良、都錦、別格晩翠、八つ藤、虎の尾、福袋、大湊、一の谷、古金蘭、雪灯篭、無類絞り、八重茶青、黒雲、光源氏、浮牡丹、鴛鴦、古代紅鶯宿(おうしゅく)、玉垣、姫千鳥、労謙、薄色縮緬、紅さし、夏衣、天神梅、新平家、柳川枝垂れ、寧ろ野梅、黄金梅、雪月花、紅麒麟、醉心、千歳菊、不老園緋梅

読み取った品種名(順不同)

 全部で87種あります。漏れているのもありますので実際は90種前後はあるでしょう。ここまで種類の違う品種を集めるとは、かなり力が入っているのを感じます。

 植物園に行くたびに思うのですが、花の品種名はどのようにして決めるのでしょうか? 上の例では和名、漢(中国)名、地名のように大別されるように思いますが、内容はかなり文芸的(和歌や漢詩文関連か)で、いずれも優美なものが多い気がします。

 次に、来た道を戻り、西側の池のあるゾーンに向かいます。

 池の先に江戸時代の長屋門(旧光岡家)が移築されており、以前帝王ダリアと共にスケッチしたことがあるのです。
 この季節、梅がないかと裏側に回り探したところありました。今回はスケッチしませんでしたが、将来のスケッチ候補として考えたいと思います。

旧光岡家長屋門と梅の花

(おしまい)

 前回の記事は下記をご覧ください。


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