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匂いが思い出させる記憶

お客様を席に案内すると凄く良い匂いがした。
とても、好きな匂いだ。甘すぎず、スパイシーとかそういう類ではなくずっと嗅いでいたいその空間にいるだけで幸せな匂いがした。
バイトの後輩の女の子に頼み込んで香水の名前聞いてくれと頼んだ。渋々承諾してくれた、GUCCIの香水ということだけわかった。

空いてる日にすぐに三越に向かった。GUCCIの香水を片っ端から嗅いで見つけた。
“GUCCI ゴージャス ガーデニア”
とわかった。笑みが溢れた。好きな匂いを見つけたからではない思い出したからだ。
いわゆる思い出し笑い。気持ち悪いね。

ガーデニア、和名はくちなし
僕はきっとどうしようもなくこの香りが好きなのかもしれない。

あの日は春でもなく夏でもなくそんな時期だった。とまあ、なんかここから運命的な出逢いが展開するかのような空気だがそんなことはきっとない
地元の奴らは所謂パリピが多い。金曜といえば六本木のクラブっしょみたいな。僕も何回か連れられてあまり強くないお酒を飲んだり飲まされたりした。
金曜日の深夜、六本木は人で溢れていた。あるクラブというか最も敷居の低いクラブ。千円で2杯もお酒が飲めて出入り自由。貧乏な僕らにはもってこいだ。
その日はかなりの人数で行った6人はいたと思う。だから、ナンパなどしなくても楽しかった。案の定、テキーラを飲まされ瀕死の状態だった。トイレに行き、みんなのいたところに戻ると2人組の女の子もいた。我が地元が誇るオラオラ系ゴリゴリ系のアフリカ系男子(ケニアとしよう)が声をかけたみたいだ。その輪に入る。お酒とタバコの匂いで溢れかえるフロアにすっととても好きな匂いが漂った。どうやらその2人組の1人からのようだ。顔は凄く綺麗だった。こんなところにこんなに綺麗な人がいるのかとも。
顔の系統がタヌキとキツネの二種類だったらキツネ側の人だ。タヌキは有村架純ならキツネは桐谷美玲といった具合に。彼女と呼ぶことにする。僕は彼女に興味を持った。その子はケニアの執拗なアプローチに少しうんざりしてたみたいだから間に入った。本当は匂いの正体を聞きたくてしょうがなかった。音楽に合わせながらよくわかんない動きをしながら話した。
ねえ、この匂いなんの匂いなの?すっごく良い匂いなんだけど
これ?と言って髪の毛をなびかせ匂いを漂わせた気がきしなくもなかった。
お花の匂いよ
なんのお花?
カタカナで5文字
わからないよそれじゃあ、ヒント!
日本では4文字!カタカナの最初はガ!

こんなヒントではわかるはずもなかったがなぜかその時、もしかしてくちなし?とよぎった。しかも、声に出てたみたいだ。
なんで分かったの??ってすげえ笑顔で聞かれた。
間違いなく恋に落ちた。恋は落ちるものなのだ。
おばあちゃんがお花好きで小さい頃によく教わったからと嘘をついた。
そこから少し素っ気なかった彼女が柔らかくなった気がする。
話してみると、彼女は、2歳上でお花屋さんに勤めてるらしい。
ひとしきり、会話も盛り上がったところにケニアが混じって来た。誤解しないで欲しいがケニアは凄くいいやつだ小5からの付き合いだし。友達思いだ。今回絡みに来たのも、なかなか連絡先を聞こうとしない俺にしびれを切らしたようだ。
ねえ、彼女LINE教えてよ!
えーと渋る彼女 その顔も好きだ
ケニアが俺がダメならこいつはいいっしょ?と僕に指をさす
まあねぇみたいな顔する彼女
僕はカッコつけて聞こえないふりをした。トイレに行って戻ると彼女はvip席の方に連れられてしまった...
やってしまった、いつも肝心な時にカッコつけてチャンスを逃してしまう。
もう恥なんて捨てようと何回思ったことか、いつもこの繰り返し。
くちなしのいい匂いのする女の子とはきっともう会うことはないだろうと。
それに見かねたケニアが
おい、俺がvipから連れ出すからその隙に連絡先聞けよ!いいな!
なんでカッコいい男なんだろうと本当に思った。
そして、電話番号を交換した。なぜ?電話番号?LINEじゃないの?と思いだろう。彼女はどうやら一見さんにはLINEは教えないみたいだ。なぜかは知らないけど。
僕はなけなしの勇気を出して
今日何時に帰るの?と聞いた。
7時には帰りたいかなー
じゃあ一緒に帰ろう!外で待ってるから
うん!わかった!ニコッ
もう十分幸せだ。で、一緒に帰ったわけですよ。お互い疲れててあんまり会話は弾まないけど
帰り際に、今日の夜9時くらいとか連絡しても大丈夫??
うん、多分大丈夫!
じゃあ連絡するね!

なんて感じにトントンと話が進んだわけですよ。
その日の午後からのバイトが終わりドキドキしながら電話をかけた
出ない、時間をおいてかけたけども出ない。
あーやっぱりこうゆうことか、勘違いだったのか結局。
また、くちなしの彼女が遠のいたというかもう会わないかもしれないと思った。
でも、このままじゃいつもと同じだと思った。

ある行動を決心した。
続きはまた次回。

#エッセイ #恋愛 #クラブ #六本木 #大学生 #社会人 #花屋