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【インタビュー】交通事故によって頭部外傷のリハビリテーションを受けるなかで、作業療法を知り、現在は作業療法士として働くAさん

 わたころメンバーの田島です。今回は、交通事故によって頭部外傷のリハビリテーションを受けるなかで、作業療法を知り、現在は作業療法士として働くAさんをご紹介します。

 Aさんは20歳の目前に交通事故にあい、頭部外傷を負った。医療機関で対応してくれたのが新人の作業療法士だった。その人は大変親身に丁寧に対応をしてくれて、作業療法士という仕事があることを知った。自身もなりたいと思ったところ、その人の卒業した学校を教えてもらい、オープンキャンパスにも参加をし、入学をした。

 もともと商科大学の学生をしていた。作業療法とは畑違いだった。中・高と柔道部に所属しており、その大学であれば柔道を続けられること、また、経営について学べるならと思い、その大学に入った。

 交通事故によりびまん性軸索損傷となった。事故から2年後の22歳のときに作業療法士になるための学校に通い始めている。事故後、急性期病院に入院し、その後は外来でリハビリテーションを続けた。理学療法と作業療法を受けていた。上の述べた作業療法士との出会いは、外来でのことだった。外来でのリハビリテーションを受ける過程のなかで、社会復帰の時期も訪れ、商科大学は2年時に退学をしたため、次なる進路を模索する必要が生じていた。そうしたなかで、作業療法士という新しい方向性の仕事が浮かんだのだった。

 もともと柔道をしていたとき、柔道整復師の職業体験をしたこともあったので、身体についての興味関心はあった。理学療法にも興味があったが、実際リハビリテーションを受けてみると、作業療法室は受容的で居心地がよく、リハビリテーションが終わってもずっといたいと思える場所だった。自身は趣味でギターを弾いてきたことを知ると、作業療法でギターを取り入れてくれた。それはとても嬉しいことだった。救いだった。そんなこともあり、作業療法士の道をあらたに進んでいこうと思えた。作業療法士について調べてみると、精神障害分野でも働け、幅が広いこと、その人の作業を支える視点はとても大切なことと感じた。

 作業療法士になりたいと母親に伝えると反対をされた。学費がかかること、そして、Aさんにできるのかと思われたのだ。主治医から歩けるようにはならないと告げられ、母親はAさんと一緒に心中しようとされたくらいだったので、そのように思われたのかもしれない。Aさんは反対する母親に対して、自身の障害やリハビリテーションの経験は、仕事に役に立つと思うことを伝え、理解を求めた。

 作業療法士の学校では、実習の際に、課題遂行の難しさを経験したりしたが、無事卒業し、晴れて作業療法士となることができた。学校に高次脳機能障害があることを伝えてはいたが、あまり配慮はなく、作業療法士という仕事への落胆も経験した。実習での失敗経験から、有料老人ホームでアルバイトをしたりし、対象者様との対応に慣れる経験を積んだり、入念な準備をするように心がけるようにもなった。

 作業療法士として働き始めて4,5年経ったある日、再び交通事故にあっている。その時には、腕神経叢マヒや複数個所の骨折を経験した。その時には入院と外来で、4,5か月のリハビリテーションを経験している。母親からは「病院に荷物持ってくるの慣れてしまったわ」と言われた。
 
 足の方は、ほぼ完治をしたが、手の方は、神経縫合手術を受けた。手術は成功をした。しかし神経をつないだからといって、すぐに動き始めるわけでもなく、2年経過したところで動き始めた。現在は、だいぶ改善はしたものの、充分な動きは得られていない。日常生活はなんとか自立して行えている。ギターもリハビリテーションがてら練習している。

 現在は、一般病棟、療養病棟、地域包括ケア病棟のある医療機関に勤めている。2,3年前から、人工関節の手術をするようになり、手術後の患者様も対象にしている。資格取得後10年が経過した。後輩が慕ってくれていることも感じ、嬉しく感じている。
 
 当事者経験を活かし、作業療法士となって10年が経過したが、似たような経験をしたとしても、思うことは人それぞれである。それでもわかってくれようとしてもらえたことが、作業療法室での居心地の良さに繋がっていたのだと振り返りあらためて思う。だからこそ、自身の経験は1つの経験として、その人のことをわからないこそわかりたいと思う気持ちが何より大切だと考えて作業療法をしている。今後は、当事者経験を活かした働き方をしたいという思いもある。

 わたころメンバーの山田隆司さんの研修のなかで障害学を知った。その人の機能だけでなく、おかれた社会や環境の障壁をどのように取り除いたらよいか、社会に戻りやすくしたらよいかと考えることの下地になっている。作業療法やリハビリテーションに立ち返ったとしても、考える必要のある部分と感じる。この仕事をするうえで、土台としたいと考えている。

 


 

 

 


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