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乙女、全裸車椅子に爆笑

健康増進に余念がない私は、血行促進の目的で一日二回、朝晩と湯船に浸かることにしている。近頃は夏っぽい気候になってきたので、風呂上がりには全身が熱を帯びてなかなか汗も引かない。

となるとやはり私はまっぱだカーニバルを行うことになる。カーニバルと言っても特にリズミカルに踊ったり騒いだりすることはない。ただボンヤリと椅子に腰掛けるだけだ。

しかし一見ただボンヤリしているようでも、実際はそこそこやることがある。脳内イメージの世界に飛び立つのだ。

そこでは私は架空の「じいさん」になっていて、昔ながらの銭湯に通っている。風呂上がりには腰にタオルを一枚かけて竹製のベンチに腰掛け、昭和レトロな扇風機の風を浴びて、ボンヤリと涼んでいる。

結局は脳内でもボンヤリしているだけなのだが、これがなぜか無性に楽しい。想像が産んだ架空のじいさんの生活に、幸あれ……!

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架空のじいさんはさておき、私自身の方はというとだ。

朝のお風呂上がりには廊下の窓越しに庭を眺めているのだが、夜には真っ暗でほとんど何も見えない。とはいえ体からなかなか湯気は引かないので、仕方なく脱衣所の椅子にパンツ一丁で座っている。

今日は気分でも変えてみるかと、廊下で待機している車椅子に座ってみた。ふう、と一息ついて顔を90°窓の方に向けると、そこには全裸で車椅子に座っている女が映っていた。車輪と背もたれの上からにゅうっと、肌色の人間の上半身が生えている。

今までにこんな人間は一度も見たことがない。私は爆笑した。初めての経験には人間、衝撃を受け、感情を爆発させるものだ。車椅子の人も見たことがあるし、全裸の人も見たことがあるが、全裸で車椅子という組み合わせは初めてだった。しかも車輪と手すりのおかげでパンツのあたりは隠れていて、全裸にしか見えない。この「隠れてるがゆえに面白い」という仕組みは、お盆芸で一躍有名になったアキラ100%(芸人)と同じだと思った。

私が腹を抱えて笑っていると、母が「どうしたん?」と聞きに来たので、「見て!見て!全裸車椅子!全裸に車椅子の女が映ってるよ!」と言うと、「ああ、それな。もう見慣れてるから」と、母は飄々とした様子で応えた。

「こんなに面白いものを見慣れてるなんて……」と、私は感心するとともに、今まで一回も笑わなかった母をすごいと思った。

芸能人が外で全裸になった系のゴシップは面白ネタとして人々に楽しまれる傾向にあるけど、もしも全裸車椅子を外でやったら、一体どんな反応が返ってくるのだろうか。車椅子といえば神妙なイメージがついて回るものなので、意外と誰も笑わないのかな。個人的にはタブ-をぶち破った感、神妙と間抜けのギャップが斬新で面白かった。

世間の反応もとても気になるが、やってみたら多分人生が終わるので、今後も家の中だけで楽しむことにしよう。皆様にお見せできないのが残念だ(みんなも見たくないと思うけど)。

もちろんここに書いたことはすべて冗談でありエンターテイメントである。私も乙女のはしくれなので、実際には普通に見せたくない、ということは書き添えておきたい。

HAPPY LUCKY LOVE SMILE PEACE DREAM !! (アンミカさんが寝る前に唱えている言葉)💞