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note037/原文の語順で訳したいのか、情報を伝えたいのか/赤毛のアンを参考に(1)

 みなさんこんにちは。「言葉のちから」というタイトルのnoteを書いているmina@ことばの垣根をこえるひと です。このnoteにお越しくださったご縁に感謝いたします。

 【赤毛のアンをお手本に翻訳を考えてみたら】

 さて今日は、いつもより翻訳という言葉に注目して、日本語と外国語のことを取り上げたいと思います。題材は、「赤毛のアン」の冒頭文からもってきました。翻訳者2人の訳文から、日本語と英語の特徴を掴んでみようとするものです。参考にした文献は、のちほどご紹介いたします。

【翻訳書がわかりにくい理由を辿っていってみる】 

 この本を題材にした翻訳論や英語学習書はネットでもかなりの数にのぼりますが、ここでは、訳文そのものを読んで、日本語としての読みやすさを考えます。どちらの訳書も手に入るのですから、どのように違うのかを学ぶ機会にさせていただくことにいたします。

 では、村岡訳を(Ha)とし、松本訳を(Yu)とし、日本語として読んだ場合にどのように受け取れるかを考えます。翻訳書にも翻訳者個人に関しても○✖️をつける意図はございません。注釈の部分は省略します。

 まず、宅配で届いた原文を掲載してみました。なんと❣️、セミコロンとカンマで区切っていますが、今日の記事に掲載した原文全体で1つの文ですと。今日の記事で取り上げようとしていたのが、こんなに長い文であったとは、取り寄せるまで知りませんでした。

iphoneでご覧になっている方、長すぎて読みにくい!と言う感じになってしまうと思いますので、適当なところで区切りますね。それに、英文に合わせて日本語にしたときに、これを1つの文にしたら息切れしてしまいますので、短く分けます。

原文:MRS.Rachel Lynne lived just where the Avonlea main road dipped down into a little hollow, fringed with alders and ladies' eardrops and traversed by a brook that had its source away back in the woods of the old Cuthbert place; 
<Ha訳> アヴォンリー街道をだらだらと下って行くと小さな窪地に出る。レイチェル・リンド夫人はここに住んでいた。まわりには、榛の木が茂り、釣浮草の花が咲き競い、ずっと奥のほうのクスバート家の森から流れてくる小川がよこぎっていた。
<Yu訳> レイチェル・リンド夫人は、アヴォンリーの街道が、小さな窪地へゆるやかに下っていくところに住んでいた。まわりには、榛の木や、淑女の耳飾りと呼ばれる花がしげり、そして、カスパート家の古びた屋敷のある森から流れてくる小川が横切っていた。


Ha訳は、物語の背景から書き出しています。「むかしむかしあるところに、○が住んでいた」に近い語り口で、日本語の自然な流れに合わせて綴られています。whereという単語の扱いをどうするかによって2人の訳文が異なるものになっているように受け取りました。

Yu訳は、MRS.Rachel Lynde で始まる原文に同じく主語で始まっており、英語の語順に合わせて訳しています。なお、「そして」を省いても文が繋がります。


it was reputed to be an intricate, headlong brook in its earlier course through those woods, with dark secrets of pool and cascade; but by the time it reached Lynde's Hollow it was a quiet,well-conducted little stream, for not even a brook could run pas Mrs. Rachel Lynde's door without due regard for decency and decorum; 
<Ha訳> 森の奥の上流のほうには思いがけない淵や、滝などがあって、かなりの急流だそうだが、リンド家の窪地に出るころには、流れの静かな小川となっていた。それというのも、レイチェル・リンド夫人の門口を通るときには、川の流れでさえも行儀作法に気をつけないわけにはいけないからである。
<Yu訳>この小川も、森の奥の上流には暗く神秘的な淵や滝があり、曲がりくねっていたり荒々しかったりするという話だが、リンド家の窪地に流れつく頃には、静かで、まことに行儀のよい、可愛らしいせせらぎになっていた。というのも、リンド夫人の家の前を通る時には、川の流れですら、体裁とか礼儀作法を忘れるわけにはいかなかったのだ。


it probably was conscious that Mrs.Rachel was sitting at her window, keeping a sharp eye on everything that passed, from brooks and children up, and that if she noticed anything odd or out of place she would never rest until she had ferreted out the whys and wherefores thereof.
<Ha訳> リンド夫人が窓ぎわに座り、小川からこどもにいたるまで通行のものを全部にするどい監督の目を光らせていて、ちょっとでも腑におちない点やふつごうなところを見つけたが最後、その理由を根ほり葉ほり、さぐりださずにはおかないということを、川の流れのほうでもわきまえていたのかもしれない。
<Yu訳> なにしろ彼女は、いつも窓辺にすわって、小川から子どもにいたるまで、通るものすべてに目を光らせていて、どこか妙だとか、しっくりこないと感じたら最後、どうしてそうなのか、わけをつきとめずにはいられない。多分、小川のほうでも、それを心得ているのだろう。

ここでは、Mrs.Rachelをリンド夫人と訳すHa訳と、彼女と訳すYu訳の違いがあります。まだ冒頭文の部分なのだから、リンド夫人と訳す方が読者に優しいと思います。


今日のところはここまでにいたします。読んでいただきありがとうございます。

なお、訳し方を比較するのに参考にした本は、下記の通りです。

「翻訳入門」(NOVA BOOKS/辻谷真一郎著)。

また何か気づいたことが会ったら追記いたします。


はじめましてのかたは、【自己紹介させてください】へどうぞ。

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