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『おやすみなさいフランシス』 ラッセル・ホーバン(文) ガース・ウィリアムス(絵)福音館書店と、なぜか絵がリリアン・ホーバンになり好学社に変わっているシリーズ四冊について。 六人子育て読み聞かせ、子どもが喜んだ親が楽しかった絵本・童話 その8

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「時計が夜の7時をしらせると、フランシスの寝る時間です。まずミルクを飲み、お休みのキスをして、ベッドに入ります。ところが、ちっとも眠くなりません。そのうちに、部屋の中にトラがいるような気がして心配になり、おとうさんとおかあさんのところへ。もう一度キスをしてもらいふとんに入りますが、今度は部屋に大男がいる気がしてねむることができません。さてさて、フランシスはぶじに眠りにつくことができるのでしょうか?」

ここから僕の感想

 僕の七歳年下の妹が小さかった頃、母が読み聞かせをしていたのを、僕は小学生だったのだけれど、横で聞いていたのが、この本との初めの出会い。50年も前のこと。もう最高に面白いし大好きなので、自分の子供たちにも、もれなく読み聞かせをしました。子どもにとっても面白いし、何より子育てするパパママにとって、最高に共感できる、子どものことをかわいいなあと思える絵本です。

 この本には、シリーズ続編があるのだけれど、不思議なことに、出版社が違う。この本は福音館書店から出ているのだけれど、あとの四冊『ジャムつきパンとフランシス』『フランシスと誕生日』『フランシスのおともだち』の『フランシスのいえで』は好学社から出版されている。

 さらに、表紙をよく見ると、この本だけ、絵が「ガース・ウィリアムス」となっているのだけれど、あとの四冊は「リリアン・ホーバン」となっている。

 そう言われて、絵をじっくり見ると、たしかに違う。この本の、ガース・ウィリアムスさんの絵の方が、線が繊細で上手ぽい。リリアんさんの絵の方が、ちょっと表現がマンガぽい。でも、ずっと何十年も気が付かなかったんだよな。

 リリアンさんはラッセルさんは夫婦で、二作目からはリリアンさんに絵を描いてもらうことにしたのかな。で、その機会に、アメリカでの出版社も変わったから、日本での翻訳版も別の出版社から、みたいな事情があるのかも。いや、全部、推測です。

 おはなしの中身については、この本だけフランシスは一人っ子。まだ一人で寝るのが怖いくらいの年齢。あとの四冊では、妹のグローリアが生まれていて、フランシスはおねえちゃんとしての、いろいろなかわいらしい葛藤、課題にぶつかって、ものすごくかわいらしい困ったことになるのを、やさしくて知恵に満ちたおとうさんおかあさんの対応で、フランシスは成長していく。といっても全然教訓ぽくないの。もう、フランシスの困ったちゃんぶりがものすごくかわいくて。

 たとえば、『フランシスとたんじょうび』では、妹の誕生日の一日のことなのだけれど、「妹の誕生日なんかつまらない」という、兄弟姉妹のいる子供の、ほんとうに切実な、あるあるの気持ちを描いていて。妹のためにプレゼントにと買ったお菓子(チョムポというの)を、家に持って帰るうちに知らない間に食べちゃっていたり。

『フランシスのおともだち』では、友達と野球をしたいのに、妹も一緒に遊びなさいといわれて、妹を邪魔に思ったり。

『ジャムつきパンとフランシス』では、これは妹のせいではない事件なのだけれど、とにかくジャムつきパンが気に入ってしまって、他のお料理、食事をなんにも食べなくなっちゃう事件。

フランシスの言葉も、おとうさんおかあさんの言葉も、もう本当に可愛かったり素敵だったりで、我が家の子育て最中にも、いや、今でも私も妻も、口をついて出てきてしまう。

「たべさせてくれなかったら、すきかきらいかわからないじゃないの」

とか。そう、『ジャムつきパン』の中で、ついにフランシスだけ、全部のごはんがジャムつきパンになり、ついにあきちゃったとき思わず泣いちゃっての言葉なんだけど。

 四作では妹が生まれて、かわいい困ったおねえちゃんになるフランシスの、まずはひとりっこ時代の「なかなか寝ない子」エピソード1が、『おやすみなさいフランシス』なのね。この絵本は、セリフも、それからガースさんの繊細な絵の、フランシスとおとうさんおかあさんの、表情も後ろ姿も、もう最高に可愛らしい。

 好きな絵本の中でも、ものすごくよく読んだ絵本としても、このシリーズ、いちばんかも。おすすめというより、もう他の絵本を買っている暇があったら、いますぐこのシリーズを揃えなさい、と言いたいほどの大傑作です。

※『フランシスのおともだち』だけ、今版元品切れなのか、絶版なのか、古本でしか手に入りません。出版社の方、増刷お願いします。


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