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わたししか知らない場所のひかり。小林孝亘作品集「ひかりのあるところへ」

木漏れ日。葉と葉の間からこぼれるひかり。葉と葉を透かしたひかり。葉と葉を通過したひかり。そのこぼれたひかりが地面にまだら模様をつける。ゆれる白と灰色のひかり。白色のひかりが灰色のひかりのまわりを回る。白色が灰色の中を泳ぎ、灰色が白色の中に潜り、ゆれながら二つのひかりが重なり形を失い溶け合う。そのひかりはわたしの外にあるのだが、そのひかりはわたしの中にある。わたしの中にある木漏れ日。わたしの中に木がありそこに陽ざしがふりそそぎ木漏れ日が生まれる。犬がいてミツバチの巣箱が置かれ、木々の葉が外形を少しだけ残しあらかたの輪郭が消え、雲のような緑色のかたまりとなって存在する。幹が幹とわかる程度にその形をとどめて棒のように立っている。閉ざされたドアの見える家と幹と森と地面と木漏れ日。そこにはそれだけしかない。それだけしかないものたちのひかりがあふれる。

わたしの中の深い遠いところにあるその場所。その場所に木漏れ日がもれる。その場所のことはわたし以外は知らないはずなのに、その場所のひかりが描かれている。まだ、誰も知らないわたしでさえ行ったことのない場所のひかり。晴れた日の午睡の中のひかり。そのひかりの中でしか存在しない場所。

小林孝亘作品集「ひかりのあるところへ」はその場所について描かれてある。

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