見出し画像

じいちゃんの左手 その42

学校から帰ってくると 
縁側には いつも 群青色の市場帽子を斜にかぶった じいちゃんがいた 
右手にワンカップ 左手には “わかば” 
田んぼの案山子のように 僕の問いに 何でも答えてくれた じいちゃん
今思えば ほとんど 的外れだったけど 心は いつもポッカポカ
そんなじいちゃんと あの縁側が 今もあったら・・・ 
きっとこんな 会話になっただろう・・・

『 焼肉 』

「今年も クリスマスじゃのぉ・・・」

えっ・・・ そのフレーズ・・・
じいちゃん もしかして 今年もやるの  あのクイズ!

しかたないなぁ それじゃ1番にしておこうかな・・・
でも・・・
毎年1番じゃ 怪しいから 今年は3番にしようか 悩む僕の横で
じいちゃん ワンカップを ぐいと空けると
おもむろに 両手を広げて 叫んだ!

「やきにく でーす!」

えっ! なにっ! なにっ!
驚いて 
フリーズする僕を見て にんまりするじいちゃん

そして もう一度!

「やきにく でーす!」 と叫んだ!

全てを出し切った感を 振りまきながら

Pufaaaaaaaaaaaaa と 
煙を吐く じいちゃん ごほっ・・・ と咳き込む僕!

「ヒロ坊! 時代がようやく わしに追いついてきたぞ!」

満足そうな じいちゃん 

!!

閃いた・・・ それ たぶん  ” ひき肉 ” ですね・・・

なにも言えない僕の横で 
達成感いっぱいのじいちゃんが 追い打ちをかけるように言った

「さぁ ヒロ坊 クリスマスと言えば クイズだ!」

あぁ・・・
じいちゃん やっぱり 今年もやるんだね
ぽかぽかの縁側で 僕は3番を選んだ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?