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記号過程、システム、意味

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人間と自然、人間と機械、人間とAI 対立するふたつのもの それらはなぜ対立するふたつのものになったのか? その答えを「記号過程」という用語を手がかりに考える
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2021年1月の記事一覧

相即相入の思想が「多」であることを肯定する -梅原猛 著『空海の思想について』を読む

(このnoteは有料に設定していますが、全文無料で公開しています) ◇ 相即相入ということについて思いをめぐらせようというとき、梅原猛氏の『空海の思想について』も強力な導きの糸になる。 相即相入とは、他と区別されたある一つの物事の中に、それとは異なるものとして区別されたはずの他の全ての事物が入り込み、関係しているということである。 例えば、「自己」の中に無数の「他者」がつながっていること、今現に生きている他者から遠い過去を行きた他者まで、ありとあらゆる他者がつながって

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深層意味論入門-分別のつけ方を遊動させる  -   井筒俊彦 著「文化と言語アラヤ織」を読む

(このnoteは有料に設定していますが、最後まで無料でお読み頂けます) ◇ 井筒俊彦氏に「文化と言語アラヤ織ー異文化間対話の可能性をめぐって」という論考がある。『意味の深みへ』という一冊に収められている。 「異文化間の対話なるものが、そもそも可能であるのか否か」 と言う問いかけから始まるこの論考には、「言語」を、「コミュニケーション」をどうやって理解しうるかと言うことについてのエッセンスが詰まっている。 言語が現実を非現実ではない現実として述べ出す言語はコミュニケー

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人類とAIを区別する統合化・抽象化能力の有無とレンマ的知性 -郝景芳著『人之彼岸』 冒頭エッセイを読む

現代中国を代表する作家の一人である郝景芳氏の『人之彼岸』の日本語訳が早川書房から刊行されている。 この本には6つの短編と、2つのエッセイが収められている。今回はこの二つのエッセイ、「スーパー人工知能まであとどのくらい」と「人工知能の時代にいかに学ぶか」を読んでみる。 ここで問われるのはコンピュータのアルゴリズムである人工知能と私たち人間・ホモサピエンスの知能(あるいは知性と言った方がしっくりくるかもしれない)とのちがいである。 郝氏は人間の知性の特長として情報を統合する