#18 あの頃、私が欲しかった母との時間

あの頃、とは、ここでは私の幼少期を指そう。
保育園~小学校低学年くらいの私かな。
両親共働き。小学校の先生をしていた母はとても忙しかった。
それに加え4兄妹の子育てだ。
私には耐えられない、想像を絶する大変さだっただろう。

母は一生懸命、忙しい中で子ども皆に愛情を注いでくれた。
精いっぱい、一緒にいられる時はいてくれた。遊んでくれた。見守ってくれた。いろんなことを教えてくれた。手作り弁当だって持たせてくれた。
そんな自慢のできる母なのである。

それでも私は、母との時間がもっと欲しかった。
そんなこと、口に出したことはないけどね。

繋いだ手にリボンを巻き付けて寝た日

小学校の先生というのはとにかく忙しく、朝が早い。
私が保育園児の時から、朝起きると、隣に寝ていた母はもういなかった。
両親とも、すでに出勤していた。
なので二軒となりに済む祖父母が面倒を見てくれていた。

一緒に寝たはずの大好きな母が、目覚めるといない。
毎朝、私はがっかりしていた。幼いながらに、毎朝傷ついていた。(今思えばね)

そんな私は考えた。
「お母ちゃんと手を結んでおけば一緒にいられるじゃない!」
名案だと思った。
いや、でも2割くらいは「うまくいかないかもな・・・」と不安にも思っていた。母の表情と声色からそれを察していたんだと思う。

いつものように母と隣に寝る。手を繋ぎ、リボンで結んで!と頼む。
「絶対ほどかんでよ!一緒におってよ!」と、私。
「うーん、うん・・・」と、少し困ったように、優しく笑う母。
こんなに困った要求をしているのに、母は怒りはしなかった。

リボンで手と手を結んだことで、私はいつもより安心して、すぐに眠りについた。
朝、いつもの時間に目が覚めた。
お母ちゃん!!声には出さなくとも、そんな気持ちでバッと隣を見た。
母はいなかった。
すごくがっかりした。

でも、母を責める気にはなれなかった。
幼いながらにも、あの時の私はちゃんと分かっていた。
ごめんね、と心の中で言いゆっくりとリボンを解く母。
私の頭を優しく撫で、急いで出勤していく母。

・・・そんな母が、悔しくも容易に想像できてしまったのだ。

誰よりも息子と一緒に過ごしている現在の私

私は母となり、子育てとのバランスを考え、息子が3歳の頃からパートで働いている。
私が保育士として働く園が認定こども園のため、同じ園で息子は幼稚園生として楽しく過ごしている。
だから毎日一緒に起きて、一緒にごはんを食べて、一緒に出勤&通園し、園でも一緒。帰宅後ももちろん一緒。
四六時中、一緒にいるのである。(これはこれで大変だけれど)

こんな状況、あの頃の私からしたら羨ましくてたまらないだろうな。

園内ですれ違うたびに「ママ~」と嬉しそうに、たまーに周りにアピールするように抱き着いてくる息子を見ると、「この子は、あの頃の私より幸せかな」そうだといいな、と嬉しくなる。

その分、園でも家でも、母に注意される機会が多くなったり、息子からしてもいろいろと大変なことは多いとは思う。
でも、あの頃の私よりは母親と一緒の時間を過ごせている。

休みの日は屋内プールで一緒に泳いだり。
ダンゴムシを虫かごで飼って毎日一緒に観察したり。
音楽を流して一緒に踊ったり。歌ったり。
まだ明るいうちに一緒に帰ることができて、たまーにそのままラーメンを食べに行ったり。ミスドをお持ち帰りしたり。

そんなこと、あの頃の私は絶対できなかったから。

少しでも、息子に心の満足感を与えられているなら、こんなに嬉しいことはない。
こういう働き方、生活を選ばせてくれた夫にも大感謝しないとね。

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