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花は、自分のために買っても人に贈っても幸せ。──LiLiCoさん・幸福学研究の前野隆司さん対談【後編】

花を買うだけでウェルビーイングが向上する。もしそれが本当だとしたら、さっそく暮らしの中に取り入れてみたくなりませんか?
 
「『花を見たくらいで何かが変わるのか』と思われるかもしれないけど……」と前置きしながら、幸福学を研究する慶應義塾大学大学院教授の前野隆司さんが語ったのは、花と幸福、そして自己肯定感の関係性。
 
前野隆司さんと、花を愛するLiLiCoさんとの対談後編では「お花とウェルビーイングのいい関係」をテーマにさらに深掘りしていきます。LiLiCoさんからは、花を飾る習慣がない人へ、最初の一歩のアドバイスも!

前編はこちらから

花を買う=幸福を感じる=自己肯定感が上がる


──花に触れる習慣でハッピーな気持ちになれる、ということで、花の国日本協議会では花がもたらしてくれる効用に「ビタミンF(F=Flower)」と名付けています。お二人のご経験から、花と幸福の関係について思うことを改めて伺ってみたいです。

LiLiCo:私は「この人元気ないな」と思う人に「お花買ったらどうですか?」とアドバイスすることもあるんです。「えっ、花?」って驚かれますが、自分で手軽に買えるものでしょ。別に人からもらうばかりじゃなくていいんですよ。
 
去年大ヒットしたマイリー・サイラスの『Flowers』の歌詞にも、「私は自分に花を買えるし、自分の名前を砂に書ける」「私はあなたより上手に自分を愛することができる」って出てきますよね。自分を大切にするということを「Flowers」という言葉に込めたとってもいい曲です。

LiLiCoさん /
スウェーデン出身。18歳で単身来日して芸能活動をスタート。タレント、映画コメンテーター、俳優など多方面で活躍。プロレスラーとして7年間活躍していたことも。夫は俳優の小田井涼平。

──花は自己肯定感とも大きな関係があると言えるかもしれません。

前野:「花を見たくらいで何かが変わるのか」と思われるかもしれないけど、花を買うことが幸福につながり、自己肯定感の向上につながるのは、僕から見ると自然なことです。LiLiCoさんが花を買うことをおすすめするのもよく分かります。
 
幸福学の研究では、何が幸せに関係するのか、ということを色々分析するわけですが、強い相関関係を持つ要素として「自己肯定感」と「自己受容」があります。幸せな人は自己肯定感が高くて、不幸せな人は自己肯定感が低いということです。だから、ウェルビーイングと自己肯定感はほぼ同じ概念と言っていいと思います。
 
LiLiCo:花って、自分のために買うのも、人のために贈るのも両方素敵ですよね。花束を持っている男性を見るだけで幸せな気持ちになった、っていうお話をさっきもしましたけど(※リンク)、プレゼントする時って、本当に一生懸命その相手のことを考えますからね。
 
前野:感謝の気持ちや利他性が芽生え、やる気も出て自己肯定感が高まる。まさに、幸福のためのいろんな要素を花が網羅していると言えます。
 
僕はもともとロボットの研究をしていたんですが、例えば老人ホームの空間にロボットがいると、そこで会話が始まるんです。アニマルセラピーならぬ、ロボットセラピー。花も一緒で、それを媒介に今日これだけお話が盛り上がるんですから、とても可能性を感じます。

カッコつけなくて大丈夫。まずはお花屋さんに聞いてみよう


──日常的に花を買う習慣がない人もまだまだ多いと思いますが、初心者が暮らしの中に取り入れるためのアドバイスはありますか?

LiLiCo:まずはお花屋さんに行きましょう(笑)。ドアを開けて「こんにちは」から始めて、「初めて買うんですけど」って、わからないことは全部お花屋さんに聞きましょう。カッコつけなくていいんですよ。今、花言葉とか気にしすぎちゃう人もいるでしょう。でも「この花はこういう意味」みたいなマニュアルに囚われる必要もないですよね!
 
花にはね、理由はいらない。地球が私たちにくれた宝石ですよ。私はチューリップが大好きなんですが、散るところまで含めて楽しんでいます。散ってふにゅふにゅしていく姿が、なんかエロいんです。

LiLiCo:家に帰った時に花があるのと無いのとでは、全然違うじゃないですか。洋服とネイルを合わせるみたいに、花瓶を買うのも楽しくなります。
 
あとね、思い出したんですけど、スウェーデンで父の誕生日に75本のバラを買ったんですが、日本のお花屋さんみたいに、茎を保水したりしてくれないんですよ。ザッと束ねるだけ。
 
日本のお花屋さんがどれだけ花のことを考えて、繊細に取り扱われているか。お花屋さんはただでさえ、人の幸せのストーリーを仲立ちする素晴らしい仕事ですから、本当にご自身の仕事を誇りに思ってください!

花は「人間も同じように花を咲かせなさい」と教えてくれている


──LiLiCoさんのおっしゃる「花は地球が私たちにくれた宝石」というのは、素敵な言葉ですね。人間にとって、本当に大きな力を与えてくれる存在だと分かります。

LiLiCo:人間、ずっと花とともに生きているじゃないですか。さまざまな記念日もそうだし、亡くなる時も棺桶にお花を敷き詰めてもらえる。

LiLiCo:そうそう、私の本名は「アンソフィー」なのですが、その名前がつく前、赤ちゃんの時のあだ名が「Gullviva」というお花の名前だったんです(和名はキバナノクリンザクラ:黄花九輪桜。欧州では草地や牧草地に自生し、春を告げる花として知られる)。それくらい、私は花と縁のある人生だなと思います。
 
それに、花って、何百年も生き続ける木と違って、散っていく姿も含めて人間の人生そのもののようじゃないですか? 「人間も同じように花を咲かせなさい」って教えるために地球に生まれてきてくれたのかもしれない。やっぱり、知恵を授けてくれてるんですよ。

前野隆司さん /
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授 兼 慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長。2024年4月より武蔵野大学ウェルビーイング学部長を兼任予定。近著に『幸せに働くための30の習慣: 社員の幸せを追求すれば、会社の業績は伸びる』(ぱる出版)

前野:LiLiCoさんのお話を聞いていて思いましたが、結局、幸せな人って、心が美しい人なんですよね。利他的で、やる気があって、チャレンジもするし、個性を大事にして、人の目を気にしない。要するに、清々しい美しい心なんです。
 
「掃除をすると心が美しくなる」とか「美しいものを見ると心も美しくなる」というと道徳の話みたいですが、実際に美しいものと幸福度には相関がある。LiLiCoさんが花は人間のアナロジーだとおっしゃったように、美しいものを通じて心が美しくなって幸福になる、という仕掛けになってるんですね。
 
日本人の男性の幸福度が低いというお話をしましたが、花に触れる機会が少ないということと繋がっているとも言えそうです。だから「照れくさい」っていう男性の方は僕と一緒にやりましょう(笑)。
 
お話ししてたら、妻に花を買って帰りたくなりました。娘と息子にも贈ろうかな。
 
LiLiCo:素敵です! どうかよろしくお伝えくださいね。
 


〈企画・編集〉南麻理江(湯気)
〈インタビュー・テキスト〉清藤千秋(湯気)
〈撮影〉丹野雄二
〈協力〉パーク・コーポレーション、芽inc.、花の国日本協議会
 

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