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シンガポールで出会ったペンタリンガル(5か国語話者)たち

ペンタリンガルって?

「ペンタリンガル」という言葉を聞いたことがあるだろうか。
あまり聞きなれない言葉だが、これは5か国語話すことのできる人を指す。
日本では、バイリンガル・トリリンガルは日常でも聞くかもしれないが、それ以上のクワドリンガル、ペンタリンガルはなかなか耳にしない。
なお、便宜上は、3か国語以上話せる人をマルチリンガルということが多いようである。

そんなペンタリンガルの知り合いがシンガポールに2人いる。

マレーシア華人Aさんの話(中/英/馬/粤/客)

1人目は、職場のマレーシア出身の華人Aさんである。
Aさんは、中国語、英語、マレー語、広東語、客家語、を話す。
そのようになった背景が気になって、本人にいろいろと聴いてみた。

Aさんは、マレーシアで生まれ育った華人である。家庭では中国語(華語)を話すそうで、母語は中国語だと思う、と言っていた。
ただ、小学校ではマレー語が中心で授業が行われ、中学からは英語による授業が入ってきたため、それぞれを外国語として勉強し、ネイティブレベルまで引き上げたらしい。
そのほかの、広東語と客家語は、親族で話す人がいたために、自然と習得したとのこと(!)。

日本人からすると考えられないほどの多言語環境に囲まれてきたようだが、Aさんは、「その場その場で、言葉ができないと、コミュニケーションも取れないし、そういった必要不可欠な状況に置かれてきたから、多言語を話さないという選択肢はない」というコメントをしていた。

Aさんの場合は、環境因子が大きく、外部環境に適用する形で、年少期に言語を習得してきた例である。

韓国人Bさん(韓/英/独/日/中)

続いて、ペンタリンガルのもう一人は、韓国人のBさん。Bさんとは、シンガポールの中国語の交流コミュニティで出会った。
交流会で本人の言語環境について、深く話してもらった。
Bさんは、韓国生まれで、全く多言語環境で育ったわけではないようだが、韓国語、英語、ドイツ語、日本語、中国語が話せる。

第4、第5言語については、Aさんほど流暢に話せるわけではないが、基本的なコミュニケーションは取れるレベルである。

Bさんは、幼い頃からヨーロッパでの暮らしに憧れ、小学校の時点で将来はドイツに住むと家族に宣言していたそうだ。それを夢物語で終わらせず、実現させたのがBさん。大学ではドイツ語を専攻し、ドイツに1年交換留学。そこでドイツ語に磨きをかけたのこと。

英語は、いつの間にか話せるようになっていたのだそう。これはどのマルチリンガルにも当てはまる話である。英語を本格的に勉強した経験がないのである。(だけど、流暢に話せる)
自然に身につくというのは不思議な話だが、多言語を学習する人間は、語学センスに優れた人間であろうし、日常的に触れやすい英語はいとも簡単にマスターしてしまうのだと推測される。
また、Bさんに限っては、殊更英語力はかなり高い。4年間英国で駐在を経た後、一度韓国に帰任し、またシンガポールに6年間駐在中、という背景もあり、どのような場であっても全く支障のないレベルだ。

加え、日本語と中国語。これは趣味の範囲で勉強してきたのだそう。完璧なレベルではないが、ヨーロッパ言語指標のB1-B2レベル位かと感覚的に思っている。
日常コミュニケーションでは問題のない領域であり、十分に「話せる」といえるだろう。
何よりすごいのは、幼少期からではなく、20歳をとっくに過ぎてから勉強を始めていることである。

二人からの考察

AさんとBさんでは、各言語の習得レベルに大きな違いがある。これは、習得開始時期に大きく影響されているものだ。

Aさんは、幼少期、遅くとも思春期までにすべての言語に触れており、総じて高いレベルだ。(中国語=マレー語=
広東語>=英語>=客家語という感じ。)
一方の、Bさんは、外国語に触れるタイミングが比較的遅く、母語レベルに習得している言語はなく、第4、第5言語は、中級者レベルにとどまる。(韓国語>=英語>=ドイツ語>>>日本語>中国語、という感じ。)

勿論、言語を早くから触れることに越したことはないという結論なのだが、Aさんの場合は触れるだけでなく、その言語を話さないと不自由が生じる、という外部環境からの大きな動機がある。
対象言語をを流暢に話す人間にも囲まれており、各言語を習得しやすい環境であるともいえるだろう。

対照的に、Bさんはすべて内発的な習得だ。本人が海外・外国語に興味があり、特別外国語を話す必要性はないが、本人の学習意欲によって、自発的に勉強し習得したものだ。

それぞれ、経緯は異なるが、何よりも5言語も話せるというのは本当に尊敬する。
日本人である我々は、日本語だけで高等教育を受けられるし、社会生活にも全く影響しない。
従って、日本語におけるマルチリンガルは、ほぼBさんタイプなのだろう。

私も、クワドリンガルやペンタリンガルを目指して、勉強にいそしみたい。言語に興味はある点(だけ)は共通している。
次回Bさんに出会ったときは、5か国語話せるようになるのはどういう感覚か、どういう勉強をしたのか、今度詳しく聞いてみることにしたい。


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