初学者のジレンマ

ある動作を行う際、まぁ体操のようなものを想像していただきたい。その動作をするにあたって、必要な要素を大雑把に柔軟性と筋力だとする。柔軟性も筋力も、体操の動作を習熟していくにつれて向上していく。体操選手は一般人の平均よりも柔軟性と筋力が高いのは誰でもおわかりのことだ。さて、動作に必要な柔軟性に少し足りなかった場合、筋力で補填することでなんとか動作が成功することがある。逆もまた然りで、筋力の不足を柔軟性の高さでカバーできることもある。これが何を意味するかというと、熟練していくにつれてその動作を達成するための能力が向上する一方で、動作に必要なエネルギーも少なくなっていき、難易度が下がっていくということなのだ。言うなれば、遠くにいる人と会うために自分の足で歩いていくと、その会いたい人のほうもこちらに向かって歩いてきてくれるようなものなのだ。これがウエイトトレーニングであれば、習熟につれて扱うウエイトの重量も重くしていくのであるが、こと体操的な動作になると、習熟するにつれてウエイトの重量そのものが軽くなっていくということが起こる。バーベルに触ったことのない人の前に200㎏のバーベルが転がっており、バーベルを挙げることが生活の一部になっているような上級者の前に30㎏のバーベルが転がっているというのが体操である。これはすぐに成果を出していい気持ちになりたい人にとっては絶望的かもしれないが、基礎から時間をかけて根気よく取り組もうとしている人にはむしろ嬉しいことだ。今が一番課題が難しく、続けるにしたがって簡単になっていくことがわかっているからだ。

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