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心遣いで気持ち良く

ー義母86歳と行く台湾(9)

年齢を重ねると、交友関係は広がる。86歳の義母は社交的な性格もあって、とにかく知人・友人が多い。そのため、義母にとって、お土産を買うことは、もはや旅行最大のイベントだと言っても過言ではないように見える。それに買い物それ自体を楽しみのようだ。他方、こちらはよほど近い間柄でない限り、お土産は荷物を増やすものでしかない。大違い。

連載「義母86歳と行く台湾」:「(1)開かないスーツケース」「(2)クレカ決済不能!?」「(3)オキニの杖はいずこ?」「(4)さらば苦手意識」「(5)突然の雨に備えなく」「(6)使いそびれた高齢者割」「(7)"龍虎対決"のとばっちり(上)」「(8)"龍虎対決"のとばっちり(下)

匙加減

義母はかなり多めに買う印象。正直なところ、義母がどういうつもりでお土産を知り合いに渡すのかは分からない。ただ両親も、世話になっている人には必ず買ってくるようによく言う。「その程度で関係がスムーズになるんだから安いもんじゃないか」は、父親の言葉。

確かにその通りなのだが、当方は過去にお土産を渡した渡さなかったで悶着もんちゃくに巻き込まれた嫌な経験がある。それをどうしても思い出すので、いっそのこと誰にも買わないのが最善の道だと思いがちだ。ましてや、コストに占めるお土産代の割合は結構大きい。

奥さんはと言えば、義母とこちらのちょうど中間といった感じ。大親友数人はマスト。それに加えて、ちょっとプラスして買っているようだ。なるほど、これならば急に渡した方が思い立った場合にも即応できる。この微妙なさじ加減はさすが。学ぶべきところだろう。

"猛獣使い"

お土産屋が中心部に密集する礁渓温泉(宜蘭県、撮影=りす)

ホエールウォッチングツアーに参加するしないで義母と奥さんが揉めた日の午後。ツアーを終えてホテルに戻ったときは、やや拗ね気味だった義母。「きょうはお土産を買いに行くんでしょう」と、この後の予定を奥さんに確認して以降、かなり機嫌が直る。おこがましい言い方だが、気持ちの切り替えが早いところは義母の長所だ。

礁渓ジャオシー温泉(宜蘭ギーラン県)は、お土産を買う場所が限られている。ホテルから徒歩10分程度のところだが、奥さんは敢えてタクシーで行くことに。この辺りの奥さんの駆け引きは上手い。買い物へのモチベーションが一段と高まった義母。午前とは打って変わって、いつもの笑顔を見せるように。奥さんはまるで"猛獣使い"。しかも"猛獣"が"猛獣"を扱っているところは受ける。

義母の配慮

海産物を突きつつ地元ビールで乾杯(礁渓温泉、撮影=りす)

この日の夜、義母たっての要望で、お酒の飲める台湾料理屋に行くことになった。義母はあまりお酒が飲めないので、きっとこちらへの配慮だろう。この日の午前、困らせたので慰労の意味があったに違いない。こういうところが義母の知人・友人が多い所以かもしれない。大皿に載った宜蘭県の海産物を突きつつ、気持ち良くご相伴にあずかった。義母86歳と行く台湾。大切なものは相手へのちょっとした心遣い。

きっと年齢どうこうは関係ない。あらためて気付いた数日間。(終わり)

余談:

お土産をしこたま買い込んだ義母と奥さんのご一行。そこに生憎あいにくの雨。曇天を見上げ、帰りもタクシーやむなしかと思っていたところ、奥さんは義母の手を引いて「歩いてすぐだからホテルに戻るよ」と、意外な一言。過ぎ去るタクシーを見送る義母の眼差しは気付かなかったことに。次第に激しさを増す雨。通り沿いに並ぶ商店街の屋根の下を上手く伝って、時には雨宿りし、ホテルまでの道のりをゆっくり進む。雨宿り中、奥さんが露店で買ったトマトジュースが"うまかった"。生搾り感があって美味しかったし、義母の機嫌を維持するのにも効果があったよう。絶妙なタイミング。

(写真:連載トップ画像=奥さん撮影の画像を基にりす作成)

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