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突然の雨に備えなく

ー義母86歳と行く台湾(5)

杖なしではわずかな距離しか歩けない義母にとって、雨は厄災だ。傘を持てば片手が塞がるし、濡れた路面に滑って転ぶ恐れがある。身体が冷えて体調を崩しかねない。義母と奥さんご一行の旅程6日目。こちらと合流し、しばらくするとなんと雨。傘なし、雨ガッパなしの義母と奥さん。恨めしそうに空を見上げる。おいっ、日本を発つ前、雨具を忘れないよう言ったよな!

連載「義母86歳と行く台湾」:「(1)開かないスーツケース」「(2)クレカ決済不能!?」「(3)オキニの杖はいずこ?」「(4)さらば苦手意識

「今晩は寝かさないわよ」

合流は、昼ごとに台北駅構内で待ち合わせということに。辺りを見回す義母と奥さんを少し先から見つけ、五体満足な姿にホッとする。訪台6日目のため、表情に疲れがわずかに見られるも、台湾にいるという実感に依然、興奮冷めやらぬといったところか。「いろいろ話すことがあるのよ。今晩は寝かさないわよ」と、茶目っ気たっぷりの義母さん。苦笑いを返す。

"ガン無視"の顛末

台北駅から徒歩10分の中華麺屋「劉山東牛肉麵」(台北市、撮影=りす)

この後について奥さんに確かめると、台北駅周辺でランチ、その後、バスで1時間超の距離にある礁渓ジャオシー温泉(宜蘭ギーラン県)に向かうそうだ。早速、台北で人気の中華麺屋「劉山東牛肉麵」に向かい、長蛇の列に並んだ。やがて雨がポツポツ降ってきて、徐々に激しさを増す。雨具を持っていくよう事前にアドバイスしたことが"ガン無視"されたと、このとき初めて知る。

軒下で列を待てたし、バスの発着所がある台北駅までは屋根のあるアーケードの下を歩けたため、ラッキーにも、どうにか"濡れねずみ"にならずに済んだが、奥さんにジト眼を向けて無言の非難を忘れない。こちらは折りたたみ傘をきちんと準備してきたのに、雨が降る中で歩いている義母と奥さんをよそに、傘を独り差すわけには行かないじゃないか。なんたる不条理。

レインコート一択

もっとも、おかげで大きな教訓を得た。片手に杖を持って片手を奥さんに引かれながら歩く義母さんを見ると、どうにも心許こころもとない。たとえ雨具があっても傘では意味がなく、レインコート一択だ。義母と奥さんの荷物が入ったスーツケースを引きつつ、後ろから二人の姿を見てそう思った。

旅行に持っていく雨具として、雨ガッパは不人気の感がある。そう言えば、奥さんも国内、海外の旅行ともにレインコートを避けがちだ。着ていて気分が上がる雨ガッパがあれば、この課題はクリアできそうだ。この先の義母や両親との旅行。格好良い雨ガッパを贈って雨に備えたい。

これで備えは万全。高齢者との旅行よ、どんと来い!(つづく)

余談

義母、奥さんと合流したとき、五体満足な姿を見てホッとしたのは事実だが、正直なところ、安心したのにはもう一つ理由がある。義母さんと奥さんが険悪なムードになっていなかったことが大きい。「スーツケース騒ぎ(※)」「クレカ決済騒動(※)」とトラブルが続き、二人して言い争いになっていないかに一抹の不安があった。合流早々、義母と奥さんの"龍虎対決"の仲介は遠慮願いたいたかったので、それが杞憂に終わって良かった。

(写真:連載トップ画像=奥さん撮影の画像を基にりす作成)

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