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"似て非なる料理"

ー冬至とかぼちゃ(下)

かぼちゃと小豆を煮てつくる「いとこ煮」ー。この料理を食べたのは決して初めてではない。幼い頃、ときどき母親がつくってくれたのを覚えている。ただ、その頃から、かぼちゃが苦手だったのだろう。味の記憶がない。2021年12月21日の冬至。奥さんがつくったいとこ煮に刺激され、この料理を調べると、いとこ煮は各地に伝わる郷土料理で、必ずしもかぼちゃが食材として欠かせない料理ではないことを知る。

関連リンク:「いとこ煮ー冬至とかぼちゃ(上)」「ハレルヤ、この先に幸あれーかぼちゃとゆず湯

母親直伝

冬至の食卓を飾ったいとこ煮。箸をつける直前に、奥さんが写真を撮り、母親にメッセージアプリに添付して送っていた。見せてもらうと、「美味しそうにできました」とある。どうやら母にいろいろ教わったらしい。

かぼちゃが苦手なこちらのためにしてくれたのかと思い、ありがとうと感謝の言葉を投げかけると、「それは違うよ」と奥さん。「かぼちゃが好きでつくったから、特段配慮したわけではないよ」。感謝の言葉を返してくれ。

由来

食後、そもそもどうしていとこ煮と呼ぶのかが気になったので、インターネットで調べた。すると、この料理は、煮えにくい材料から追々入れていくため、「おいおい」が「甥甥」に転じていとこ煮になったらしい。

もちろん、これは語源の一つとされているだけであって諸説あるようだ。例えば、材料をそれぞれ煮るをいう「銘々に煮る」から「姪姪」にかけていとこ煮とした説など。甥が姪に変わっただけで、それほど違いはない。

4地方・地域

いとこ煮(山形県風)_ぐるたび

さらに調べると、いとこ煮は大まかに、山形県庄内地方、北陸地方(新潟県、富山県、石川県)、奈良県、山口県萩市周辺の4地方・地域の郷土料理として知られているようだ。このうち、冬至にちなんだいとこ煮は、奈良県だけのようだ。

奈良県のいとこ煮は、冬至に食べると風邪をひかない、あるいは中風にならないなどのご利益があるとされ、神棚と仏壇に供えてから食べるという。食材にかぼちゃを使うのも同県だけらしい。わが家のいとこ煮はこれを継承していると言える。

山形県は、秋から冬にかけての農家のもてなし料理とされているそうだ。小豆のみを軟らかくなるまで煮た後、一晩水に浸しておいたもち米を加えるという。北陸地方はダイコン、ニンジン、サトイモ、ゴボウといった根菜類とコンニャクや油揚げなどを煮て、そこに茹で小豆を加える。

同地方のいとこ煮は精進料理の一つと見られている。その一方で、萩市周辺のいとこ煮は、主に冠婚葬祭時の料理、懐石料理の一品とされている。ゆでこぼした小豆に、少量の砂糖と醤油を加えた昆布・シイタケの出汁で一煮立ちさせて味を調えるという。

萩風いとこ煮_クックパッド

豊作

これにかまぼこ、白玉だんご、出汁を取ったシイタケを加えて楽しむようだ。いずれもいとこ煮という名前、食材に小豆を使うところなどは同じだが、"似て非なる料理"とも言えそうで、実に面白い。それぞれ地方・地域の特色が反映されたのかもしれない。

いとこ煮を通じて得た"収穫"は多い。早く母と奥さんに伝えねば。

(写真〈上から順に〉:いとこ煮を調べた結果を伝えるりす=奥さん撮影の写真を基にりす作成、山形・庄内地方風のいとこ煮=ぐるたび、山口・萩地域風のいとこ煮=クック・パッド)

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