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赤い糸

ーロマンチストからリアリストへ

ラジノリンクス。"赤い糸"に似た魚に付く寄生虫。先日、塩焼きにしたサンマの腹の中で見つけた赤い糸は、おそらくこれだろう。同じ寄生虫でも、アニサキスと違い、たとえ生きていても「人に悪さはしない」(寄生虫に詳しい有識者)という。赤い糸といえば、どうしても"運命の赤い糸"が思い浮かぶ。ただ、サンマの中に見つけたラジノリンクスには、そんなロマンチックの欠片さえも感じない。

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不安

ラジノリンクスはサンマ、サバ、カツオ、ブリに寄生する。激しい腹痛や吐き気を伴う「アニサキス症」を引き起こすアニサキスに比べると、それほど知られていない印象がある。とはいえ、「とてもポピュラーな寄生虫。ごく普通に存在する」(水産関係者)という。食べても人体に影響はないそうだが、どうにも気味が悪い。

サンマの内臓をはしで引っ張ったときに見つけた。長さ5mm程度の赤い糸くずのように見え、当初消化しきれなかったオキアミの身体の一部だろうと思っていたが、後にググってみると、どうも印象が違う。それどころか、記憶の中にある映像と、サイト上の画像を照らし合わせると、ラジノリンクスの方がむしろ腑に落ちる。

この寄生虫がサンマなどに付くのはごく普通というところが怖い。サンマの塩焼きをはじめ、しめさば、サバ缶、カツオのたたき、ブリの刺身、ブリ大根は大好物なためだ。今後、これらの料理を食べる前には、どうしてもその身を詳しくチェックしてしまうだろう。それが煩わしくなり、好きなものが嫌いなものにならないか、一抹の不安もある。

転換

赤い糸というと、語感にロマンチックな雰囲気が漂う。いつか結ばれる男と女は、足首を赤い糸(赤い縄)で結ばれているというよく知られたいわれが源だ。ただ、今回のラジノリンクスの件で、それがぶっ飛んだ。これから赤い糸から思い浮かべるのは、きっとサンマの腹の中に見た生々しいラジノリンクスの姿だろう。

ロマンチストからリアリストへー。これも赤い糸が定めた運命か。

(写真:『りすの独り言』トップ画像=フリー素材を基にりす作成)

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