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私が私になる前に

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『彼』を好きな『私』と、『私』を好きな『彼女』のお話。
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記事一覧

私が私になる前に(4)

紗英の表情は意外にも穏やかで、
私の横にゆっくりと腰を掛けて口を開いた。

「今思えば大した理由ではなかったのかもしれない。私は中学2年生の夏頃から、いじめが原因で不登校になったの。保健室経由で早退を繰り返す内に、学校に行くふりして図書館に行く事が増えて、結果的に毎日私服で通う様になった。親も放任というか、一緒にいる時は優しくて『叱る』ということをされた記憶が殆ど無い。休み始めた頃の不安は徐々に薄

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私が私になる前に (3)

「ねぇ、あの小説読んだ?『プリーツ』。女子高生連続殺人事件の犯人も女子高生でしたってやつ」

靴を脱ぎリビングに向かう最中で紗英は問う。確かあれは、27歳くらいの岸飛鳥(きしあすか)によるデビュー作にして問題作。

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僕は女子高生が嫌いだ。馬鹿な女も、賢い女も、どこか男を見下す様なあの目が特にね。若さや制服で自分に価値があると勘違いしてる様な人は、そういう要素がタ

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私が私になる前に(2)

学校の最寄駅を二つ離れた駅から、歩いて30分ほどの住宅街に並んでいる紗英の家に着くまで、話す時間は充分にある。彼女は敢えてバスを使わず、途中のコンビニでスナック菓子を三つほど買った。

「安いスナック菓子に抵抗なく手が出ちゃう女の子は嫌い?」

コンビニを出るなり彼女は言う。

「好きなものを食べれば良いよ。それに僕は女性を好きにはならない」

私は表情を変えずに返した。

「私、まあまあ胸大きい

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私が私になる前に (1)

高2の春、図書委員で一緒だった野球部の三年生に振られた。受験と部活、忙しいのは知っている。でも、理由はそれだけでは無かったはずだ。引退を賭けた最後の試合、彼は同い年の女性の肩を借りて泣いていた。校内で2人で歩く姿もよく見かけた。私に恋愛感情を抱けない、ただそれだけの話だ。私も私でその悲しみを埋める様に、同級生の女子と付き合った。名前は紗英。

同じクラスの同じ図書委員だった紗英が、一緒に図書室に向

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