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ひらがなエッセイ #10 【こ】

    客単価が二千円程の居酒屋の座敷で若者達が騒いでいて、やがてその内の一人が全裸になり、陰部を両手で隠しながら腰を動かし「ジャングル、ジャングル。」と言い始め、周りの奴らが「一気!一気!」と合いの手を入れ、ジャングル一気なるモノが始まり、その声を聞いて駆けつけた店員が、お客様、そのような行為は危険ですので、と、止めに入り、それを見ていた客達の知能指数が低い者は笑い、高い者は傍観していた。チンパンジーのように両の手を叩き、爆笑していたのが嘘偽り無くその場で安酒を煽っていた私である。ジャングルて、日本の未来は明るいわ。

    全裸で腰を振っていた若者を見て思い出したのだが、日本最古の歴史書である【古事記】に、アマノウズメと呼ばれる踊り子が登場する。今から紹介する逸話が【古事記】であったか日本書紀であったかは詳しく覚えてないのだが、そこはご愛嬌ってやつで、ひとつよろしくお願いします。

    ある時アマテラスが岩に引きこもってしまい、世界に暗闇が訪れた。それは、アマテラスが太陽の女神だったからである。その行為に他の神々は困り果てて、その岩場の前にて様々な儀式を行ったのだが、一向に出て来ない。そこに颯爽と全裸で登場したのがアマノウズメという女神。他の神々が、は? 全裸、何してますの、と聞こうとするのも束の間、全裸のアマノウズメは変顔をキメてよくわからない動きの舞を始めた。その舞の意味不明さに岩場の前に集合していた八百万の神が大笑いし、何、何、何か外騒がしくない?  とアマテラスが気になって岩から出てきた、という話だ。

    おっ、そうだそうだ、アマノウズメだ、アマノウズメは芸能の神であるから、あの若者もいずれ芸能人にでもなったら良い、わははは、何て笑っていたが、いや、一気飲みとか見てよく笑えるよね、最低、と連れに一蹴され、確かにあれが強要の類という可能性も否めない。これは笑っている場合ではないな、と、変に畏まってしまい、笑顔の若者と真顔の私は、同時にグラスに残っていた酒を飲み干したのであった。


    一気飲みはあかんよ。では良い週末を。

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