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【都市計画家列伝】今こそ、都市計画史

かつて都市計画家は大スケールの青写真を描き、巨大プロジェクトをリードしてきた。しかし現代日本の都市に強い主体は存在せず、「都市計画コンサル」「国交省/自治体の技術系職員」「地方自治体の首長/副市長」「デベロッパー」「研究者」「まちづくり系のNPO」といったたくさんの不完全な主体が時に協力しながら、時に対立しながら、街を作っている。自らが属する組織の利害に基づいて動くことは簡単だが、ひとりの「都市に関わる者=アーバニスト」として何をすべきかと考えること、そして組織としての立場とアーバニストとしての立場の葛藤を調停してアクションを起こすことは、本当に難しい。

都市は複雑になり続けているし、それに合わせて都市計画という仕事はより難しく、より無力になっている。もはや一方向への変化を前提としたリニアな時間軸に頼ることはできない。東京一極集中も、コンパクトシティも、再開発も、何が正しくて何が誤っているかなど誰にも分かりやしない。そんな時代に敢えて拠って立つべきものを求めるとすれば、それは歴史だと思う。私達の都市は誰がどんな思いで作り、今どうなっているのか。その試みは成功したのか、失敗したのか。その検証の蓄積の先にしか、自分がどこに向かいたいのかを知る術はないと思う(今の自分にはそれを話す知識も経験もないから、「都市がどこに向かうべきか」ではなく、あくまで「自分は都市計画で何をしたいのか」を問おう)。

この連載は、都市計画を学ぶ学生による「都市計画史」を社会に開く試みであり、私自身のアーバニストとしての価値軸を探す旅路でもある。絵を描いた人、プロジェクトをリードした人、制度を作った人など、多様な役割を持った「計画家」を取りあげたい。また、深く探求することと社会に開くことはトレードオフの関係になりやすい。都市計画史の専門家でもなければジャーナリストでもない私は、まずどちらかの道(間違いなく都市計画史だろうが)を極めるべきかもしれないが、そのバランスを自由に試行錯誤できるのもまた学生の特権だと思う。連載を続けながら考えたい。

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