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アセスメントとはなにか?-初心者でもわかるアセスメント-

先日、「すべてはアセスメントからはじまる。-アセスメントの範囲を広げよ-」というエントリを記したが、そもそも「アセスメントとは何か」ということについて詳しく言及をしていなかったことに気づいた。

専門職にとっては聞きなれた言葉であるが、本エントリでは、「アセスメントとはなにか?-初心者でもわかるアセスメント」と題し、アセスメントについて、その輪郭を浮かび上がらせてみることを試みてみたい。

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対人支援の現場にはたくさんの情報が溢れている。

こどもから高齢者まで。目の前にいる対象者に関する情報を、日々の支援における介入(関わり)に活かすことをサポートしてくれるものの1つが「アセスメント」である。

アセスメントは技術であり、それゆえトレーニングによって鍛えることができるが、ソーシャルワーカーの専売特許ではなく、福祉専門職であれ、ボランティアであれ、技術の違いはあれど、構造的にはみな、アセスメントをした上で、目の前にいる人に関わっていると言える。

以下、具体的にどのようなことかお伝えしていきたい。

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1.アセスメントとは何か?

さまざまな定義はあるが、平易な言葉を用いれば、「対象者に対して、適切な関わり(介入)を行うために、対象者から得られた情報のもつ意味について考えること」と定義できる。「見立て」などと表現することもある。

※医師が病名を診断する「診断学」が起源。看護、保育、ソーシャルワークにおいては「アセスメント」と呼ばれたりする。


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2.対人支援におけるアセスメントの位置づけ

対人支援のプロセスはおおまかには以下の通り行われる。

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専門職であろうとなかろうと、他者へ何かしらの関わりを行おうとするとき、アセスメントは行われている。

それゆえ、「適切なアセスメント抜きに、適切な介入は生まれ得ない」ということが言える。どのような打ち手を打つか、その決定プロセスにおいて、アセスメントの質の向上は欠かせない。

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3.アセスメントの構造

アセスメントの構造は下記のように分解することができる。

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ここでは細かいことは言わず、基本は情報収集と分析である、ということのみお伝えしておきたい。

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4.アセスメントと介入の関係

ここではアセスメントと介入の関係についてみていきたい。シンプルに図式化すると、下記のように説明できる。

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①目の前の対象者の言動・現状などの情報に対し、
②すでに持っている対象者の情報を参照し、
③.①を引き起こしている/そうさせている対象者とその環境の問題をアセスメントし、
④介入の焦点を定め、介入を行う(関わりを行う)

目の前の対象者の言動や現状などの情報からその背景を考えること。
このプロセスをすっ飛ばして、関わりを行うことを、対人支援の世界では「根拠のない実践」と呼ぶ。

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5.アセスメントのポイント

「人間は環境の生き物である」などと言われる通り、目の前の対象者の置かれている状況、行動の背景を深く探るには、対象者が影響を受けているであろう身の回りの人、集団、組織、社会などの環境、そして、その人の身に起こった過去の出来事に目を向けてみることが大切になる。(※ここでは環境についてのみ言及する)

ここでは医療機関における高齢患者さんを例として、対象者の環境に目を向けたアセスメントについて見ていきたい。

高齢の患者さんから、主治医に「足腰がおぼつかないので、家に帰りたくない」と訴えがあった。

その訴えをもとに、主治医からソーシャルワーカーに「患者さんがこう言ってるから、退院後の生活のこと、相談にのってあげてください。よろしく!」と依頼があった場合、ソーシャルワーカーはまず、ご本人のもとに足を運び、話を伺い、その訴えがどのような理由から生じているのかのか【仮説】を立てていく。

そう。アセスメントとは、【仮説】と【検証】を行き来するための専門的技術と言える。

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「足腰がおぼつかないので、家に帰りたくない」
それでは、介護施設を紹介しよう、というのは、短絡的過ぎる。

おじいさんが「なぜ、足腰がおぼつかないと、家に帰りたくないのか」という【仮説】を設定し、仮説を検証するための【情報】を得て、複数の仮説の中からいくつかを捨て、おじいさんの言動の真実に迫っていく。

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その上で、ポイントになるのが【環境に視野を広げる】ことだ。言い換えれば、おじいさんに「足腰がおぼつかないので、家に帰りたくない」と言わせている理由を「環境の中に探す」ということもできる。

・おじいさん自身のこと
・家庭環境
・入院している病院
・地域(近所)
・親族
・社会制度や法律

これは一例だが、「環境」と一言で言っても様々な切り取り方ができる。
対象者を取り巻く環境に視野を広げるとき、そこには人や社会に関する多くの知識を必要とする。


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環境に視野を広げて出てきた複数の仮説に対して、新たな情報を得て、仮説の確度をあげ、確度の低い仮説は捨てていく。

例えば、おじいさんが、【親族】という環境に対して、「徒歩5分のところに住んでいるシングルマザーである一人娘に、自分の生活や介護のことで迷惑は絶対かけたくない」と思っていたことが明らかになり、

同時に【制度】という環境について、「一人暮らしの高齢者をサポートしてくれる制度やサービスの詳細や利用方法、利用資格について知らない」ことがわかったとする。


そうなると、おじいさんに「足腰がおぼつかないので、家に帰りたくない」と言わせている理由について、

【親族】に迷惑をかけたくない、かつ、【制度】について知らないため、【親族】に迷惑をかけずに一人暮らしを継続していける術を知らない。

ということが確度の高い仮説として浮かび上がってくる。

これは、おじいさんと話をしながら、直接問うこともできるだろうし、また、話の中で、この仮説の確からしさをおじいさんから教えてもらうこともできるだろう。

それがわかれば「介護施設を紹介しよう」という関わりに直行することにはならないだろう。


6.まとめ

アセスメントとは、「対象者に対して、適切な関わり(介入)を行うために、対象者から得られた情報のもつ意味について考えること」と定義でき、他者に対して介入する(関わる)前の段階で、なされるものであり、技術でもある。

技術であるので、トレーニングをすれば鍛えることができる。

自主トレーニングをし鍛えていく際のポイントは、その人をとりまく環境と今まで生きてきた時間に視野を広げ、行動の背景を探ること。

視野を広げると、たくさんの理由を想像する【仮説を設定する】ことができ、関わりの手数も増やすことができる。

アセスメントがわかるようになる、構造的に身体の中に落とし込み始めることができると、対人支援の仕事は楽しくなる。

だって、目の前のいる人の「今」に近づき、迫っていけるのだから。


【関連エントリ】
アセスメントの根拠なる"情報”について

アセスメントの筋力としての仮説思考-経済的困難を抱える高齢女性の事例から-

【noteで研修】事例から学ぶアセスメント入門-赤ちゃん/おじいさんの事例から-


【参考図書】



【ビジネス関連の思考法に関する書籍ですが、アセスメントに活用できるものを以下紹介しています】

【参考エントリ】



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