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【読書感想文】60歳うつ

タイトル詐欺?

50歳ぐらいから「うつ病」のような症状を訴える患者が増えている。そこれくらいの年齢から聴覚が衰えることをはじめ、身体の劣化が精神に悪影響を与える。特に熟年離婚後、男性は孤独になり病んでしまいやすい…

という風に高齢者に焦点を当てて増えるうつ病の原因を分析しているものの、そこに言及してるのは20ページくらい。

実際は医食同源的な思考で、要は「たんぱく質と鉄分を摂れば精神にいい!」という内容をずっと書いている本。

タイトル、内容をPHP研究所の編集者が指定していたらしく、読者を釣る気満々。(事前に伝えられてるので作者にも責任があると思うが)。ネットのレビューも「思ったのと違った」という意見が散見される。

病は食から

内容は加齢による臓器の器質的な要因であるにせよ、社会的な要因であっても、どちらに対しても「栄養療法は効果を発揮する」というのが本書の論旨だ。

筆者は一般的な薬物治療中心の精神科医の現場から、ユング心理学によるカウンセリングの勉強を経て、最終的に藤川徳美医師の分子栄養学的な観点からの治療こそが最も効果があると主張する。

クスリやカウンセリングは駄目?


では藤川徳美医師の分子栄養学的な鬱病治療とはなにか。その骨格は「たんぱく質」をとるということだ。

藤川氏は一日卵3つ食べる「プロテインファーストの会」を設立している。上リンクで治療の内容を解説している。

筆者や藤川氏は薬を否定しているわけではないが、基本的に短期間で終わらせる、依存性が少ない、副作用が明確といったポイントで選ぶ。

筆者は「ほとんどの向精神薬は症状を抑えるだけ。同じ量を飲み続けていても効果が薄くなって、結局は量が増えることもしばしば」だと分析する。

クロルプロマジンという統合失調症の薬が「最初は別の病気の患者に使ったところ幻覚症状が消えたという経緯から、たまたま使われている。本当の効果や基準がわかっているということはなく、雑な基準だ」と指摘する。

それに対して、分子栄養学の観点で処方するのは「例えば朝の20gのプロテイン、依存性も無ければ副作用もない」という。

薬を使わず心理療法でカウンセリングすると言う手もある。これについては有効としつつも「途方もなく時間とお金がかかることが多いので、まずは栄養状態を整えることが大切。栄養状態を整えずして完治はあり得ない」と話す。

筆者によれば、藤川メソッドをベースとした治療法で、治療を受け入れてくれた人の8割が治るほどのすさまじい効果を発揮するという。

個人的にまとめると↓こんな感じ。
1.高タンパク、低糖質の食事 2.パン、麺、精製した砂糖を控える 3. プロテインと鉄の摂取 4. 太陽の光を浴びる 5. 適度な運動

なお、タンパク質を現実的に健康に悪影響を与えるほど吞むことは困難。また体調不良はプロテインに慣れてないためで、基本は心配しなくてよいとのこと。

読後の感想

私は本書の内容が正しいか否かをジャッジすることが出来ない。
だがうつ病治療の優先度において、栄養>>>薬、カウンセリングという思想は、定説からは外れているのではないか。

飢え死にしそうな状況なら、というレベルではなく、現在のWHOや厚生労働省などが推奨するような基準を窃取しても治療においては足りないというレベルの話を展開している。加えて、製薬会社の利権構造を疑問に感じ、MRを出禁にするなど既存の日本の医療体制とは真逆のように思える。

書き方も怪しい。とにかく藤川医師を褒める文章がくどい。藤川メソッドへの批判や疑問が一切なく妄信しているかのような書き方であり怖い。そもそもがタイトル詐欺本だし。

ただ、内容が正しいとするならば、一般人にとっては藤川メソッドの栄養療法がこれ1冊で分かりやすく学べる素晴らしい本である。改善症例が何例も示されているところもすごい。

プロテインと鉄を取って損するということもないので、そこは学ぼうと思うのだが、あまり他人に勧められる内容ではないと感じた。


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