見出し画像

【向日葵は枯れていない!】4.ギラヴァンツ北九州ミニレビュー~第5節 vs FC大阪

筆者雉球にとって悩ましいのが、岡山と北九州の試合日時が重なることです。重なってしまった時は、申し訳ないながら、岡山リアタイからのレビュー作成の合間に、北九州の試合を観るというような観戦方法をとっています。
こんな時、更に悩ましいのが岡山目線で北九州を観てしまったり、その逆で北九州目線で岡山を観てしまったりと視点がズレてしまうことです。

チームの状況に合わせた視点の確保は言うまでもなく大事で、今の北九州の場合、長期的な視野で(結果はもちろん必要だけれども…)「良い守備からの良い攻撃」の構築、プレーでの体現を待つという段階にあると個人的には思っています。

今回の対戦相手FC大阪は、大嶽直人監督が新たに就任したとはいえ、昨シーズンの土台を上手く引き継いでいる印象が強いです。チームの成熟度という点では一歩上を進んでいるとみていますが、今の北九州の組織力でどれだけ対抗できるのか注目していました。

1.試合結果&スタートメンバー

J3第5節 北九州-FC大阪 メンバー

北九州のフォーメーションは一応、DAZN紹介の3-5-2で並べてみましたが、故障者も出始めている中、このメンバー選考にも苦心の跡が窺えます。
まず気になりましたのがFW(10)永井龍の不在でした。負傷リリースも出ていませんので、コンディションの問題かとは思いますが、やはり彼がワントップに君臨するのとしないのとでは、相手に与えるプレッシャーが全然違います。早期の復帰を願います。

一方でこのスタメンは非常に考えられているとも感じました。
FC大阪はここまで4試合で10得点と攻撃力を発揮していますが、実に7得点はセットプレーによるものです。前々節金沢戦の攻撃力も記憶に新しいところです。
まずパワー溢れるこのセットプレーをCBの枚数を増やして跳ね返そうという意図が見いだせました。

2.レビュー

(1)CBの迎撃

J3第5節 北九州-FC大阪 8分北九州の守備

このメンバーの話からそのままレビューに入ります。

この試合での北九州は相手セットプレーだけではなく、流れの中でFC大阪に精度の良いクロスを入れさせない守備もよく出来ていたと思います。
8分の場面、北九州が中盤右サイドでボールを奪われ、FC大阪のカウンターに切り替わります。
3バックの北九州に対してFC大阪は当然3バック脇のスペースを使おうとします。RWB(17)岡野凛平は高い位置を取っていましたので、このスペースへは戻れません。
ここでRCB(50)杉山耕二がサイドに出て(残り)、FC大阪LSH(11)利根瑠偉を迎撃、クロスを上げさせませんでした。
(50)杉山が出た後のスペースはCH(34)高吉正真が埋めます。
ボックス内ではLWB(33)乾貴哉が絞り、空中戦になっても3対2の数的優位で臨めます。
それにしても(33)乾の高さ(187cm)は攻守においてチームに違いをもたらせますね。

この場面は一例なのですが、この試合での北九州は(50)杉山のみならず、LCB(13)工藤孝太が左サイドへ、そして中央の(4)長谷川光基までもが中盤とのライン間へと積極的に飛び出していくシーンが目立ちました。
この試合を無失点で終えられた、FC大阪の攻撃力を発揮させなかった大きな要因にこのようなCB陣の迎撃(飛び出し)があったと考えます。
(50)杉山、(13)工藤の高い機動力を活かした戦術なのですが、それぞれがデタラメに(感覚で)飛び出しているのではなく、CB1枚が出たら2枚はボックス内に残る、サイドのCBが出た後の自陣ポケットは(34)高吉やCH(11)喜山康平がカバーするといった約束事を感じられた点が良かったと思います。

FC大阪の「飛び道具」でヒヤッとしたのは48分のCK、73分CB(23)秋山拓也のミドルがバーを叩いたシーンぐらいであったと思います。

なかなか得点力不足に喘ぐ北九州ですが、得点が獲れない時だからこそ、まず先に失点しない構えを敷くという方針は個人的には正解であると思いますし、このCBの迎撃には前向きにボールを奪うことで、素早いカウンターに繋げようという意図もあったと思います。
攻守を一体に有機的に思考する増本浩平監督の色が出ている戦術であると思います。
欲を言うならば、迎撃したCBが獲り切れれば、尚良かったのですが、やはり1対1ではFC大阪に若干分があったとも感じましたので、例えば8分のシーンであれば、サイドの(50)杉山のサポートをRIF(15)小林里駆が出来れば尚良かったと思いました。

(2)小林里駆にみた可能性

まだまだ素質溢れる良い選手が北九州にはいるのですね。
FC東京U-18出身と聞くと、岡山サポ的にもちょっと親近感が湧いたりします。順天堂大から加入のルーキー、初出場MF(15)小林里駆に今後の可能性を感じました。

北九州の保持は最終ラインからのビルドアップを選択するケースが多く、最初はFC大阪の中盤4枚に対してWBを含めた5枚で数的優位を形成、最終ラインと中盤のリンクの確実性を高めていく意図と予想していました。

試合序盤はこの5枚の中盤から(11)喜山も含めて、様々な選手が前線へ飛び出しを図っていたように見えましたが、徐々に(34)高吉と(11)喜山が普段のダブルボランチの関係性に収まり、(15)小林は左右問わずにCF(29)高辰昇、(18)渡邉颯太へのクロッサー、セカンド回収、シャドー、プレースキッカー、守備時にはCFと3枚で第一ラインを形成するなどその役割は多岐に渡ります。

18分、FC大阪のビルドアップを高い位置から北九州が奪い切ったシーンは、(15)小林がFC大阪自陣左側へのパスコースを幅広くケアすることで(29)高、(18)渡邉がFC大阪(1)永井建成からの球出しに強くプレッシャーを掛けられたことによって生まれました。
(29)高が右手で(15)小林に「左のスペースは任せたぞ!」(想像)との指示を送っている様子が伝わってきました。

(15)小林は北九州ボールに替わった瞬間にゴール方向への動き出しを開始、シャドーとしてフリーのポジションをキープしています。
シュートを撃った(29)高も(18)渡邉も得点には飢えていますので、自分で撃つ気持ちはよくわかるのですが、(15)小林に出していればという場面でした。

しかし、前半全体を通じますと、チームとして2トップをしっかり中央に置いて得点力を高めたいという意図は十分に伝わってきたのですが、この2トップと(15)小林の関係性が少々曖昧であったように見えました。
2トップとの関係性において(15)小林の最も効果的な役割をピッチで探っていた前半ともいえるのではないでしょうか。

(3)最適解がみつかったのか?

皮肉にも(15)小林が輝き始めたのは、54分(18)渡邉の負傷交代によりMF(21)牛之濱拓が入って以降でした。
それにしても(18)渡邉に関しては少々心配な交代でした。FC大阪の選手の膝が頭部に入っていました。仮に脳震盪を起こしているようでしたら、復帰プログラムを経る必要があります。大事に至っていないことを願います。
さて、(21)牛之濱が入ったことにより北九州の前線は(29)高の1トップ、(15)小林と(21)牛之濱の2シャドーという形に変わります。
前半2トップの周辺をワイドに動いていた(15)小林の動きが比較的縦に一本化されたことにより、まず前線のプレスに前半以上の鋭さが生まれます。また(21)牛之濱が左でキープすることで(33)乾のオーバーラップも生み出し、北九州が徐々にFC大阪陣内へと侵入します。
80分、FC大阪のライン間で受けた(15)小林のシュート、そしてその後のCKの質にも得点の匂いを感じました。

3.まとめ

結果的にはスコアレスドロー、なかなか白星が遠い北九州ですが、試合内容としては前節沼津戦から大幅に向上していた点は見逃せません。
苦心の末、良い守備から前向きにボールを奪い、良い攻撃に繋ぐ形は出来つつあります。
この試合での終盤の攻勢を踏まえますと、課題の「アウトプット」に関しては1トップ2シャドーの形をとるのが選手の特性を最も活かせそうな気がしました。今回主に採り上げました(15)小林についても、シュートシーンのような相手ライン間での受ける、出す、撃つの回数を増やせれば得点は奪えそうな気もします。MF(20)矢田旭不在の間のプレースキッカーとしても期待できそうです。
今の北九州において望みとなるのが、春先のこの段階で3バックと4バックを併用する高度な戦術を増本監督が選手に落とし込んでいることです。
この日々の試行錯誤、どこかで爆発する予感はあります。

遠い岡山からではありますが、粘り強く応援していきます!

今回もお読みいただきありがとうございました。

※敬称略

【自己紹介】
雉球応援人(きじたまおうえんびと)
岡山のサッカー好き社会保険労務士
日常に追われる日々を送っている。

JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。

2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

北九州大学(現:北九州市立大学)法学部出身
北九州は第二の故郷ということもあり、今シーズンからギラヴァンツ北九州もミニレビュー作成という形で追いかける。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

この記事が参加している募集

サッカーを語ろう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?