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【ファジサポ日誌】108.今を凌げ!~第14節 ファジアーノ岡山 vs 徳島ヴォルティス マッチレビュー ~

この苦しい時も、きっと悲願のJ1昇格への道程である。

再浮上の時をしたたかに待ちながら、今目の前にあるフットボールを愛し続ける。

振り返ります。

1.試合結果&メンバー

負傷者が続出している厳しいチーム状況の中、アウェイ山形戦からたった中2日。ターンオーバーもまともに出来なかったこと、最近3戦を2勝1分と立て直してきた徳島相手ということを踏まえますと、チームはよく戦ってくれたといえます。それでもJ1昇格戦線に生き残るには勝点1は欲しかったという気持ちも同時に残りました。

J2第14節 岡山-徳島 メンバー

メンバーです。
野戦病院と化している岡山としては、戦術の根幹に関わるFW(9)グレイソンの欠場は負傷の内容、離脱期間に関わらず痛いどころではなく、苦しいチーム状況に更に深い影を落としたといえるでしょう。

ということで、ワントップには大方の予想どおり(99)ルカオが入りました。ST(27)木村太哉、(10)田中雄大とのセットは3得点したルヴァン杯横浜FC戦と同様です。

少ない手駒ながらも、出ずっぱりの主力を少しでも休ませようという配慮はみられ、MF(88)柳貴博や(24)藤田息吹、DF(18)田上大地はベンチスタートとなりました。
そして、そのベンチにはMF(42)髙橋諒が帰ってきました。
かなり以前からの負傷者が、どれぐらいのタイミングで戻ってこれるのか、そして再離脱させないことも今後の戦いのうえでポイントになってきます。

徳島も当然中2日、フレッシュなメンバーが入ってきました。注目は昨シーズンまで岡山のエースであったFW(7)チアゴ・アウベスのスタメン起用です。
またMF(8)柿谷曜一朗がベンチ入りする中、徳島のビルドアップのキーマンMF(14)玄理吾がいない点も目を引きました。

戻ってきた髙橋
表情から何となく状態の良さを感じさせる

2.レビュー

J2第14節 岡山-徳島 時間帯別攻勢守勢・分布図

全体の展開を振り返ります。

各選手のプレーの細部、そして最終盤のパワーダウンから憔悴したチーム状況が伝わってきましたが、後半途中からリードを守りたい徳島が若干引き気味であった点を差し引きましても、選手は相手コートでのサッカーという岡山のチームコンセプトを予想以上に表現してくれたと思います。

しかし、繰り返しになりますがJ1昇格を目指す立場としては、何とかドローに持ち込む粘り強さは欲しかったところです。こうした点が今回の論点になります。

序盤の岡山は(99)ルカオを狙ったボールを前線に供給しますが、十分に収まらないとみるや、徐々に(99)ルカオは自身が得意とするサイドに流れ気味なプレーを織り交ぜながら、これも中央よりはサイドよりで起点をつくろうと試みていました。

(10)田中や(27)木村もこの(99)ルカオの動きに呼応してポジションチェンジを頻繁に行っていた点は、ルヴァン杯で一緒に組んでいた産物ともいえ、岡山の前半の攻撃が(9)グレイソン不在の割にそれほど停滞しなかった要因であったと思います。

(10)田中と(99)ルカオの前進
今の田中の決定力なら、この関係性は逆でもよい

一方、岡山の前線3枚による徳島3バックへのプレスは序盤から十分な圧になっていたと思いますが、20分過ぎから徳島が保持時に徐々に4-3-3の陣形にシフトしていき、岡山のプレスを回避し始めた辺りから徳島も攻勢の時間をつくれるようになりました。

徳島の攻撃は主にCH(10)杉本太郎が徳島最終ラインからボールを引き出そうと下りてきますが、岡山CH(44)仙波大志が(10)杉本に規制をかけると、徳島はビルドアップにそこまでのこだわりはみせずにあっさりと岡山最終ラインの裏を狙っていました。
徳島の前節愛媛戦ではダブルボランチが縦関係になり、中央を前進、相手陣内でサイドに展開、クロスという攻撃が目立っていましたが、繋ぎ役の(14)玄の欠場、またこのビルドアップを助けていた(8)柿谷のベンチスタートにより、繋ぎの人材を欠いていたという側面はあったのかもしれません。

岡山、徳島CH同志のマッチアップ

しかし、このシンプルに裏を狙う攻撃と徳島(7)チアゴが度々LCB(15)本山遥に仕掛けていた動きがCB(5)柳育崇をはじめとする岡山最終ラインを徐々に下げ始め、ライン間が間延びすることにより、岡山の攻撃の連携は寸断されていったのです。岡山としてはこの点が前半の大きな誤算であったと思います。

前半の失点のきっかけとなったLWB(17)末吉塁のロストも、陣形が間延びしたことにより、前方へのプレスが間に合わなかったことに起因していると考えます。そこに(7)チアゴとの間を詰め切れなかった(15)本山のミス、そして手前でバウンドするボールに対して腰を浮かした状態でキャッチにいってしまったGK(49)スベンド・ブローダーセンのミスが重なり、徳島に先制を許すことになります。

(5)柳(育)
要所でラインが下がり、攻撃面では少々消極性も感じられた。

この失点の直前で(7)チアゴの枠内へ飛んだFKを(49)ブローダーセンが好セーブで防いだ直後でしたので、岡山としては非常にもったいなかったといえます。

清水戦でも(49)ブローダーセンのPKストップという良い流れをすぐに手放してしまったように、今の岡山には良い流れを持続できない弱みもあります。

チアゴのFKをブローダーセンがセーブ
その後の攻防
チアゴのシュートを後ろに逸らすブローダーセン
痛恨のミスであった

それでも悪い流れのまま、終了しそうな前半終了間際にセットプレーから、しかも(15)本山のゴールで追いつけた点は岡山に再び勢いが戻るきっかけになる筈でした。
筆者はこの試合を久々にメインスタンド中央で観ていましたが、同点に追いつき戻ってくる選手の表情には生気が漲っていました。アシストを決めた(27)木村は雄たけびを上げていた程でした。

この同点ゴールも前線でファールをもらい、精度が高いRWB(16)河野諒祐のキックを活かす岡山のねらいがあたったといえます。前半何度か繰り返していた(5)柳(育)を囮に(27)木村に当てるパターンが奏功しました。 

(16)河野のFKから同点ゴールへ
(27)木村が良い体勢で待てている

良い時の岡山であれば、この同点ゴールから後半勝ちにいく流れに持っていけるのですが、その流れも持続できないのが辛いところです。

後半開始当初、徳島の勝ち越しゴールは岡山が徳島陣内で奪われてからの被カウンターでした。岡山の守り所はRCB(4)阿部海大であったと思います。徳島(10)杉本にフェイントを入れられたとはいえ切り返しも大きかったため、寄せる時間はあったように見えましたが、寄せきれなかった点が痛かったです。2~3月は簡単に上げさせていなかったクロスを最近簡単に上げさせてしまっている。この点からも(4)阿部始め各選手の疲労が伝わってきます。
(15)本山は精一杯競っていたと思います。ただ身長が足りなかったのです。
徳島に狙われていましたね。(15)本山自身が狙われていましたし、そし横浜FC戦以降、特に狙われていると感じています最終ラインとGKの間のスペースをまた狙われてしまいました。

これは岡山の最終ラインが背後に弱い、そして(49)ブローダーセンが前へ出る動きに弱点を抱えている(のかもしれない)点を完全にスカウティングされているといえます。スカウティングされていてもなかなか改善に至らない原因についても推測はできるのですが、あえて書きません。
推測どおりなら、克服してくれることを願うのみです。

さて、追いつかなければならない岡山でしたが、各選手を疲れをみせながらも徳島陣内ボックス手前まではよく進入してくれました。
しかし、ボックス手前からボックス内への進入が十分に出来ませんでした。
出来なかった理由は相手ポケットを縦に前進できる(17)末吉を早めに交代させたことにあったと思います。
しかし、鉄人(17)末吉からも疲労の色は見え隠れしており、これはやむを得ない交代であったと思います。
代わって入ったMF(88)柳貴博も徳島ボックス脇までは進めますが、そこからの単独突破は難しくスピードダウン、ボックス手前に戻すシーンが目立ちました。これはМF(19)岩渕弘人が入り、(27)木村が左に回ってからも変わらなかった傾向でした。

左でも強さをみせた(88)柳(貴)

ならば復帰した(42)髙橋諒をLWBにとも考えたのですが、最近の岡山における復帰選手が短期間で再離脱している流れを考えると、いきなり強度もスピードも求められるポジションでの起用は避けたかったのかなとも思いますし、積極的にLCBでテストしたい意図もあったのかもしれません。

寧ろ(16)河野を早めに下げたのは痛かったと感じました。岡山はボックス内に進入できなくてもCKは定期的に獲れていました。しかし、(16)河野に代わって蹴った(44)仙波も(19)岩渕も精度を欠いたキックに終始してしまいました。
前半セットプレーで獲れていただけに、実は(16)河野の交代は密かに勝負の分け目になったような気もするのです。

それでも(44)仙波のポストを叩く惜しいシュートもありましたし、上手くいかないなりに岡山の攻撃の地力も着実についてきているとも思えました。

1対1で仕掛ける(27)木村
ここでスローダウンしている点が気になる
この場面は流れるような連携から(44)仙波が進入。
惜しいシュートを放つ。
やはりボックス外で時間を掛けない方がチャンスになる。
相談

岡山の攻撃は現在の状況でも相手ボックス手前までは良い形でつくれています。しかし肝心のボックスへの進入についてはアイデア不足を露呈しているといえます。本当のところは、ボックス進入の局面で違いをつくる役割をMF(8)ガブリエル・シャビエルが担うはずでしたが(群馬戦のゴールシーンがまさに「違い」そのもの)、再離脱となってしまいました。

そこで、敢行された緊急補強がMF(39)早川隼平の育成型期限付移籍加入です。

実績についてはあえて述べることはありませんが、周囲とのコンビネーションが特に必要な役割を担うことになりますので、積極的に起用してほしいと思います。もう既に登録も済んでいますし、起用していくのだと思います。

3.余談

ここからはゲームから離れて、勝点について考えてみたいと思います。

今シーズンからリーグ戦が38試合になったことから、これまでのシーズンとの比較するにあたり、1試合平均勝点を昇格ペースの目安に用いることが多くなりました。
既に多くの方がご存知かと思いますが、J1自動昇格に必要な平均勝点は過去の事例から2とされています。第1クール(第1節~第10節)では平均勝点2をキープした岡山ですが、第2クールに入りこの勝点2を下回り始めました。
苦しいチーム状況を踏まえたうえで、この勝点の落ち込みについてどこまで許容できるものなのか、少々過去の事例を紐解いてみました。
もちろんこれは岡山に限らず、昇格候補とみられながら序盤に躓いてしまったチーム全般に当てはまるものです。

事例として調べましたのが、平均勝点2を下回りながら自動昇格を果たした2019シーズンの横浜FCです。

2019シーズンの横浜FC成績


2019シーズンJ2 1~6位

この年のJ2といえば柏レイソルのイメージが強いのですが、実は前半戦は決定力不足に苦しみ(岡山も勝利している)、エンジンが掛かったのはオルンガが加入したシーズン後半戦からでした。平均勝点は2ちょうど。強かったことは事実ですが、印象よりも1強ではなかったのです。

2位の横浜FCは実は平均勝点が2にすら到達していません。
第20節の岡山戦で5-1と圧勝してから流れに乗り、その後はたった1敗で乗り切りました。折り返し時点での平均勝点はわずか1.38でした。
そして、第20節以降が万全に強かったのかというと、そういう訳でもなく、ドロー続きの停滞期があったことも注目しなければなりません。

この事例は少々極端なのかもしれませんが、プレーオフ圏内まで条件を引き下げると、昨シーズンの千葉も大体折り返しからブーストが掛かりました。

現在の岡山の平均勝点が1.64であることを考えますと、まずは折り返し点の第19節6/9(日)鹿児島戦まで、要はあと1か月、少なくとも平均勝点1.5~1.6台をキープしながら後半戦のブースト材料を探る戦い方が必要になります。そのブースト材料が(39)早川と故障者の復帰であるならば、例えば(43)鈴木喜丈や(11)太田龍之介に関しては何とかあと1か月で万全な状態で戻ってきてほしいと思うのです。
そして、明日の長崎戦も含めてあと5戦で何とか2勝は欲しいと思うのですが、皆さまはどのようにお考えでしょうか?

かなり大事な五月戦線になりそうですね。
「荒天」ではなく「好転」に期待したいです。

今回もお読みいただき、ありがとうございました!

※敬称略

(29)齋藤のフィットもシーズン後半に向けて当然必要

【自己紹介】雉球応援人(きじたまおうえんびと)

地元のサッカー好き社会保険労務士日常に追われる日々を送っている。
JFL時代2008シーズンからのファジアーノ岡山サポ。
得点で喜び、失点で悲しむ、単純明快なサポーターであったが、ある日「ボランチが落ちてくる」の意味が分からなかったことをきっかけに戦術に興味を持ちだす。
2018シーズン後半戦の得点力不足は自身にとっても「修行」であったが、この頃の観戦経験が現在のサッカー観に繋がっている。
レビュアー3年目に突入。今年こそ歓喜の場を描きたい。

鉄道旅(独り乗り鉄)をこよなく愛する叙情派。

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