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2019年に観たい女性映画リスト②

 『キャプテンマーベル』のチラシ裏。「女性ヒーロー」ではなく「ヒーロー」という言葉がさらりと使われていることに感動してしまいました。
 「美しいヒーロー」でも「闘うヒロイン」でも「強すぎる女」でも「勇ましい女神」でもなく、端的に「ヒーロー(英雄)」と紹介されるスーパーウーマンの登場を喜び讃えたいです。(未見)(早く観たいです)

 映画という創作物を通して”女性の物語”が見直され再発見されている昨今、社会は目まぐるしくアップデートされていて、「女性映画」という括りで映画を語ろうとする行為自体に引っ掛かりは感じています。自分の心に添う物語を求めているひとに、それならこんな映画があるよ、と薦めるためには、どのような言葉を用いればよいのか、物語を必要としているひとに必要な物語を届けるためには、どのような言葉を選択すればいいのか、仕事でやっているわけじゃない、個人的な焦燥と鬱屈を解消したくて始めたからこそ、きちんと考えたいと思っています。

 さておき。2019年劇場公開予定の映画の中から、特に気になっている、女性を主人公にした作品を興味の赴くままに書き出してみました。(1月~3月分はこちら
 ひとまず、3月~6月公開分まで。タイトルだけ並べるのも味気ないので、現時点での気になっている理由を書き添えました。自分用のメモでしかありませんが、よろしければ、ご笑覧ください。

(※ここでいう「女性映画」の定義は厳密ではなく、ざっくりと、女性が主人公の映画、女性視点の物語が描かれている映画です。あしからず)

『たちあがる女』3月9日公開
■気になるポイント■本国版と比べて柔らかな印象のポスター。英題は『A Woman at war』。コーラス講師として生計を立てながら、環境保護を訴える活動家として“闘う女性”が主人公。予告編のナレーションが声優の島本須美さんなのは『風の谷のナウシカ』のイメージでしょうか。還暦を過ぎた女性の”第二の人生”について描いたイギリス映画『輝ける人生』のなかで、保守的な主人公に対して、先進的な姉は環境問題に関心がある、という描写がされていましたが、社会に問題意識を持ち、ときに過激な政治運動に取り組むひともまた、当たり前の生活をしている市民である、という視点をもつことは大切だと感じています。ジョディ・フォスターがリメイク権を獲得したとのことですが、アイスランドという土地と密接な題材だと思うので、オリジナル版のこちらを観たいです。また、思いがけないタイミングで養子を迎えることが決まり、慌しく母になる準備をする女性、予期せぬ妊娠出産とはまた違う角度から描かれる、女性が母になるまでの物語、という視点でも気になります。


『サンセット』3月15日公開
■気になるポイント■高級帽子店で働く女性の話、ということで、『ハウルの動く城』の主人公ソフィーを連想。ファッション映画という視点で、仕立て屋(服作り)についての映画なら『ファントム・スレッド』、靴屋(靴作り)についての映画なら『キンキーブーツ』などを連想しますが、帽子屋(帽子作り)についての映画ということで、新鮮味があり、興味があります。『サウルの息子』を撮った監督の最新作ということでヘヴィな内容を覚悟。夢と希望を抱いて憧れの職業についたものの、女性従業員は貴族に対していわゆる枕営業をさせられる、という絶望的な状況に際してどうするのか、どうすればいいのか。歴史映画、失踪した兄を探すサスペンス映画というより、働く女性の映画として興味があります。


『美しすぎる議員』3月16日公開
■気になるポイント■あらすじを読む限り、正直そんなに惹かれませんでした。ジェンダーギャップ指数110位(2018年発表)のいまの日本で、女性議員を題材にして、映画という媒体を利用して、語るべき/語られるべき物語が、”美しすぎる議員”の本性についてなのか、一体どのようにして語るのか、身構えてしまいました。しかし、予告編が興味深かったです。女性政治家についての映画がどれだけ珍しいかということに気づかされたので、見てみたいです。日本の女性政治家をとりまく現状について、どこまで描くのか。有権者の代理、自分たちの代弁者としての女性市議会議員に期待して投票する、日本の女性たちについてどこまで描くのか。イギリスの女性首相の伝記映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』のようなスケールでは描けない景色が現実にはたくさんあるはず、興味があります。


『バンブルビー』3月22日公開予定
■気になるポイント■『トランスフォーマー』シリーズ未見なのですが、"女の子のためのSFロボット・アクション映画"が公開されることが、素直に嬉しいです。『パシフィック・リム アップライジング』にも”ロボットに乗って闘う少女”が登場しましたが、物足りなさが残ったので、こちらには期待したいです。ボーイッシュな趣味を持つ女の子のための作品、という意味では、かわいさとかっこよさが見事に共存した『シュガー・ラッシュ:オンライン』なども連想します。少年向け作品との表現の違いに注目したいです。少女のもつ”女性らしさ”を否定せずに”男性らしさ”を肯定する、少女向け作品らしい工夫に期待したいですし、これから作られる少年向け作品がどのように進化していくかについても思い巡らせたいです。娯楽映画を見ていて自分の性別に負い目を感じたり劣等感や罪悪感を抱いたり損した気分を味わうことがなくなるように。子供が見て、これは僕/私のための物語だ、と感じられる作品が増えることを願って。


『美人が婚活してみたら』3月23日公開予定
■気になるポイント■『勝手にふるえてろ』の大久明子監督の新作。女性作家による同名エッセイ漫画を女性監督が映画化。性別問わず、他人の容姿・服装・見た目についてカジュアルかつフランクに言及しがち/されがちな日本においては、「美人」という一見ポジティブな言葉もまた人間を縛るレッテルなのだということに気付かされます。「ブス」というネガティブな言葉をタイトルに含ませて「ブス」というレッテルに抵抗しようとする日本の映画やドラマは(成功しているかどうかはともかく)数あれど、「美人」であっても生きづらい、女性の現実について当事者が語る物語はまだまだ少なく、ルッキズムについて改めて考えるうえでもチェックしておきたい作品です。婚活というマッチングの場で、男女が互いの年齢や容姿や職業をジャッジする過程で、なにが見えてくるかにも期待。


『私の20世紀』3月30日公開予定
■気になるポイント■幻想的な雰囲気、姉妹の物語ということで映画『プラネタリウム』を連想しつつ。世界観に惹かれます。『心と体と』のイルディコー・エニェディ監督による1989年製作の長編デビュー作。見たいです。


『ビッチ・ホリデイ』4月5日公開予定
■気になるポイント■リッチな生活をしながら実のところ男性に性的に暴力的に支配されている女性の物語、女性監督自らの経験を基にした実話、ということで、興味深いです。拝金主義への問題提起ということですが、金銭目的で地位や権力を持った男性と付き合う女性が、悪女だのビッチだのレッテル貼りされ単純化され記号化され忌避される一方で、若い女性の処世術として”男を手玉に取る生き方”が推奨されている現実があり、孤立した女性がその安定した生活を維持するためにパートナーからの束縛や暴力を許してしまうことはままある、という視点からも気になります。男性社会・家父長制が前提としてある社会のなかで、男性に金銭的に依存するしかない状況に陥り、生活の一部を支配されながら”自由”を謳歌する女性について、当事者自らが語ることには意味があると感じています。どのような切り口で描かれる物語かわかりませんが、確認したいです。


『バースデー・ワンダーランド』4月26日公開予定
■気になるポイント■正直なところ、キャラクターデザインにもビジュアルにも惹かれないのですが、原作の児童文学『地下室からのふしぎな旅』には思い入れがあるので、観たいです。柏葉幸子さん原作のアニメ映画といえば、『霧のむこうのふしぎな町』がインスピレーション元になったジブリの『千と千尋の神隠し』も連想します。日本の児童文学の名作がヤングアダルト向けに映画化される流れには期待したいです。


『RBG 最強の85才』5月10日公開予定
■気になるポイント■ルース・ベイダー・ギンズバーグのドキュメンタリー映画。3月22日に伝記映画『ビリーブ 未来への大逆転』が公開予定。併せて観たいです。


『ばあばは、だいじょうぶ』5月10日公開予定
■気になるポイント■同名絵本の映画化。認知症の女性を題材にして、家族関係の変化を描いたドラマ映画といえば、若年性アルツハイマー病と診断された女性を主人公とした映画『アリスのままで』のほか、夫目線で認知症の妻との関係を描いた映画『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』や、息子目線で認知症の母との関係を描いた映画『ペコロスの母に会いに行く』、娘目線で認知症の母との関係を描いた映画『ベトナムの風に吹かれて』などが思い浮かびますが、認知症の祖母と孫の関係が主題の作品というと、咄嗟に思いつきません。少子高齢社会において、認知症の老人に対する戸惑いや接し方を子供目線で描くことは重要だと思います。ただ、子供の視点から描かれることで、家庭の外部・社会が描かれず、家族の結びつきが強調され、介護のプロの助けを借りない在宅介護が推奨されるような内容になるならば、大人の観客として、見方に注意が必要だとは思います。共働き家庭が当たり前になって、祖父母世代が二度目の子育てをするようになった日本において、改めて描かれる三世代同居家庭、という視点でも興味があります。


『コレット』5月17日公開予定
■気になるポイント■またしても、夫に才能と功績を奪われる妻、女性作家の映画!『メアリーの総て』『天才作家の妻-40年目の真実-』『ビッグアイズ』などと見比べたいです。また、当時の同性愛行為についてどのように描くのか、バイセクシャルの描かれ方にも注目したいです。できれば、コレットの小説を原作にした映画『恋の手ほどき』などを見たうえで鑑賞したいです。


『オンネリとアンネリのひみつのさくせん』5月25日公開予定
■気になるポイント■フィンランドの同名児童文学シリーズの実写映画版。『オンネリとアンネリのおうち』『オンネリとアンネリのふゆ』に続く第三弾。子役がメインの映画には、可愛い子供たちを見て癒されたい、という大人の観客の欲求を満たす側面があることは否定できないと思うのですが、児童文学が原作である以上、子供の為につくられているか、大人にとって都合の良い子供の描写になっていないか、子供にプレゼントできる内容か、という点は気にしています。いわゆる北欧映画というくくりなら、スウェーデン映画『なまいきチョルベンと水夫さん』などもありますが、女同士の友情をポジティブに描いた映画が意外に少ない、という現状があるなかで、この年代の少女たちを主人公にした映画がシリーズ化されて公開されていることは素晴らしいことだと思います。観たいというより、届くべきひとに届くように応援したい気持ち。


『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』5月31日公開予定
■気になるポイント■『ルパン三世 カリオストロの城』など、ジブリの宮崎駿監督が関わっていることは知っていて興味はあるものの、一体どの作品を入口にすればよいやらイマイチわからなかった『ルパン三世』シリーズ。峰不二子という謎めいて記号化された女性キャラクターを”人間”として描いた2012年放送のテレビアニメシリーズ『LUPIN the Third 峰不二子という女』を観て以来、好感を持ってマイペースに各作品を観ています。スピンオフ映画シリーズ『次元大介の墓標』『血煙の石川五エ門』はハードボイルド調で、”男くさい”シリーズだと感じているのですが、峰不二子が主役になるとどのような物語になるのか、見届けたい気持ちです。


『マルリナの明日』5月中旬公開予定
■気になるポイント■インドネシアの”闘う女性”について。女性監督作品、見たいです。田舎で生きる女性、女性の怒りについて、という要素から、トルコ映画『裸足の季節』をちょっぴり連想。強盗団を返り討ちにした女性が正当防衛を訴えるために都会を目指して旅に出る物語。「ナシゴレン・ウエスタン」というキャッチコピーに感心。インドネシアというとドキュメンタリー映画『アクト・オブ・キリング』が頭の片隅をよぎりますが。見たいです。


『エリカ38』6月7日公開予定
■気になるポイント■故・樹木希林さんが初プロデュースした作品にして、遺作。浅田美代子さんが主演。還暦を過ぎた女性の生き方について。女性によるクライム映画という視点でも気になります。南海キャンディーズのしずちゃんこと山崎静代さんが出演しているのも楽しみです。


『海獣の子供』6月7日公開予定
■気になるポイント■原作未読ですがビジュアルに惹かれます。芦田愛菜さん始め、キャラクターと年齢が近い未成年の俳優が声優として起用されている点も、個人的に好感を持てます。『千と千尋の神隠し』『ハリーポッターと賢者の石』を映画館で見て、パンフレットのキャスト紹介を眺めて、声優を務めたのが”自分と大して歳の変わらぬ子供”だったことに驚いて、尊敬する気持ちが湧いたことを今でも覚えています。大人になってからも、ふと、その後の出演作を気にしたり、良い出会いができたと思っています。ドラえもん映画に携わってきた渡辺歩監督の最新作。子供が初めて友達と誘い合って映画館に足を運んで楽しめる、ジュブナイル映画、ヤングアダルト映画として期待したいですし、応援したい気持ちです。


『ガラスの城の約束』6月14日公開予定
■気になるポイント■ブリー・ラーソン主演作ということで期待できる、信頼があります。いわゆる毒親と、大人になってから向き合うことになった女性の物語、という意味でも興味がありますが、ハリウッド映画における父と娘の関係のステレオタイプな描き方に、常々物足りなさを感じていることもあって、新しい景色に期待したいです。家父長制・パターナリズム(権威主義)の限界について。尊敬していた父の挫折と堕落を目の当たりにして失望した娘について。成長して力を得た女性が年老いた父とどのように向き合うのか、赦しがたいこともあるということについて。”過ちを犯した男性に赦しと癒しを与える女性”を描くにしても、現代性のある物語が見られれば良いなと思います。『スリービルボード』でも娘を持つ父親役を演じていて印象的だった、一筋縄ではいかない男を演じればピカイチのウディ・ハレルソンの存在感にも期待したいです。


 その他、『ホフマニアダ ホフマンの物語』(題材と手法が合致、見たいです)、『マックイーン:モードの反逆児』(ポスターの美しさったら)、『孤独なふりした世界で』(ピーター・ディンクレイジの身体性を生かしたSF的寓話、素晴らしい企画だと思います)、『ビューティフル・ボーイ』(ティモシー・シャラメが今後どのようなキャリアを築いていくのかという興味。大麻などのドラッグを”嗜む”若者を描いた映画は多々目にするけれど、薬物依存患者の更生までの歩みを丁寧に描いた作品はあまり目にしたことがないと気付きました、見たいです)、『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』(知に触れるうえで”町の図書館”という公共空間がどれだけ重要か/重要だったか、ネットに溺れ、ついには辟易し始めたいま、改めて気づいたこともあり、図書館について語り尽くしたドキュメンタリーなら見たいです)、『ハイ・ライフ』(ジュリエット・ビノシュが女性科学者役、ワイズ・ウーマンなのかテリブル・マザーなのか、なんにせよ、いわゆるフェミニストSFとしての側面を期待できるんじゃないかと)、『ある少年の告白』(性的指向は矯正できるものではない、という”正しい知識”が共有されることを願っているので、見ておきたいです)、『ドント・ウォーリー』(誰もが”障がい者”になりうるというフック、必要な物語と感じます、また、風刺漫画家という職業への興味)、『僕たちは希望という名の列車に乗った』(高校生たちの”闘い”、観たいです)、『アメリカン・アニマルズ』(クライム映画が好きなので見たいです)、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(めちゃくちゃ楽しみです)、『クローゼットに閉じ込められた僕の奇妙な冒険』(メルヘンチックな設定に惹かれます、この設定から、どのような景色を見せてくれるのか、見たいです)、『アラジン』(ディズニー実写映画は”人種的に多様”なキャスティングを実現できるのか、また、9.11以降、満を持して製作される、中東を舞台にしたアメリカ製メジャー映画、という視点でも気になります)、『ハウス・ジャック・ビルト』(ラース・フォン・トリアー監督の最新作、男優を主演に据えることでいよいよ“俳優いじめ”に容赦がなくなるのではないかと懸念しつつ、怖いもの見たさ)などなどなど、チェックしておきたい作品多数。

 ところで、地元のTSUTAYAがなくなりそうで今後どうやって生きていけばいいのかと途方に暮れている今日この頃です。配信サービスを利用しているとはいえ、生活が激変しそうです。今年鑑賞した映画の感想文・紹介文を定期的にアップしていきたいなと思いつつ、いまのうち、とばかりに貪るようにインプットに勤しんでいるので、現状、それどころではなくなっています。なんとかします。


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