鈴木大拙とキリスト教〜展覧会「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」に接し
鈴木大拙(以下、大拙)と言えば、日本の禅文化を海外に広く知らしめた宗教者として有名である。全文を英文で著した著書も多く、「ライ麦畑でつかまえて」などで知られる小説家J.D.サリンジャーや前衛芸術の大家ジョン・ケージなども、彼から東洋思想や禅文化を学んだというのだから、日本以上に海外の文化人に与えた影響は計り知れない。
「近代日本最大の仏教学者」とも言われる大拙だが、実は、妻のベアトリスはキリスト教神秘学の研究者として知られている学者であった。その為、大拙自身もキリスト教への造詣も大変深かったと言われている。キリスト教と仏教にまつわる著作も多く著しており、両宗教を比較を通じて、共通して信じられているものの抽出を試みている。そして、概念の「言い換え」によって両宗教の尊厳を守りつつ、理解の架け橋となる言葉の探求を続けた。
例えば、仏教、特に浄土真宗において信仰に篤い信者を「妙好人」と言い、大拙も「妙」という語を書画として書き残しているが、この『妙』を英語に翻訳するとどうなるのか、大拙はこう答えている。
現在、そんな大拙の足跡を辿る展示会「鈴木大拙展 Life=Zen=Art」が、東京・神宮前の「ワタナリウム美術館」で開催中である。宗教や文化による断絶が顕著化される昨今、改めて、大拙の思想に触れるとともに、世界の修復に思いを巡らせる良い機会になるのではないだろうか。
(text しづかまさのり)
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