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(キリ)中国の宗教統制

 日本との関係悪化が深刻なものとなっている韓国は、キリスト教国と言って差し支えないほどクリスチャンが多い国であることは、以前のコラムでも紹介したとおりである。しかし実はそのお隣の中国では、思想統制の強化が進み、小学生向けの教科書から外国の文学作品中のキリスト教を想起させる「神様」や「聖書」などの文言が改変もしくは削除され、大きな問題となっている。 

中国、教科書から「神様」削除 マッチ売りの少女も改変(朝日新聞/2019.7.5)

 アンデルセン童話の「マッチ売りの少女」では、寒い大みそかの夜、マッチに火をつけた少女が大好きだった亡き祖母の幻影を見る場面が描かれる。改訂された教科書では、旧版にあった「星が流れ落ちる時、魂が神様のもとへ行くのよ」という祖母のセリフが「星が流れ落ちる時、人がこの世を去るのよ」に変わっていた。 
 「ロビンソン漂流記」では、主人公が難破船から3冊の聖書を持ち出す場面が「数冊の本」に。ロシアの小説家チェーホフの作品「ワーニカ」でも教会での祈りや「キリスト」が省かれるなど、少なくとも10カ所で表現の変更や削除が確認された。(朝日新聞/2019.7.5)

 この背景には、2018年に改正された「宗教事務条例」の影響が大きいと言われている。中国の宗教に関する主要な法律である「宗教事務条例」だが、この改正では、5つの宗教協会(仏教、道教、イスラム教、プロテスタント、カトリック)を中国共産党が政府公認(※赤い市場)にする一方で、政府の管理下に置くことで活動に制限を加えることとした。また、それ以外の宗教団体(※灰色の市場、黒い市場)の取り締まり強化対象とすることとした。 
 こうした中国共産党が進める宗教への締め付けは、我々からしてみるとやはり異常に映る。もちろん中国も日本と同様、信教の自由が保障をされているわけだが、それにも関わらず、小学校の教科書の外国文学作品まで、その締め付けの対象となる状況は、まさに戦時中の日本における「敵性語の排除」を想起してしまう。

 現中国の主席である習近平は、宗教が「国家の安全を脅かす問題」とみているようだが、こうしたやり方や考えについては中国国内からも反発の声が上がっているという。今や、世界経済をも動かす存在となった中国が、宗教や文化に寛容になる日は来るだろうか…。

(text by しづかまさのり)

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