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【冬の風物詩】


時のたつのは早いもので、もう12月——。
師匠も忙しさに走り回るという『師走』です。 他の12月の異名として
弟月・暮古月・極月・茶月・踖月・年積月・春待月・三冬月・蠟月…等々。
ウクライナでは12月を Груденьフルーデニ、冬を Зимаズェマと言いますが
これからは季節を秋とは言わず、『冬』と呼ばなければならないのです。
ただし旧暦によれば、すでに10月からの3月間を
24節気では立冬(11/7頃)から立春(2/4頃)の前日までを、また天文学的には
太陽が冬至点を通過して春分点に至る前日までを、特に冬と定めています。


冬でなくてはならないのが、白く冷たい雪……。
『マッチ売りの少女』や『フランダースの犬』の、あまりにも悲しい
最終話もさることながら、小説『雪国』や、おなじみ『忠臣蔵』の討ち入り場面の演出に、雪は欠かせなかったし、日本人の感性から言っても
しんしんと降る雪は、そこはかとなく哀感と情緒を誘います。
『汽車を待つ君の横で僕は時計を …』と歌う、イルカの『なごり雪』や
『雪、気がつけばいつしか…』と歌う、中島みゆきの『雪』は
僕のとりわけ大好きな歌でした。


雪にまつわる お祭りも北国には数多くあり
札幌市や新潟県十日町市の雪祭りをはじめ、横手市のかまくら
旭川市の冬祭り、米沢市や弘前市の雪灯籠祭りなどが有名でしたね。
山岳地方からの便りにして、晴天の風に散らつく雪のさまを
“風花が舞う”と、形容します。  なかには『五色雪』と言って
赤い雪や青い雪が降ることも、北国には稀にあるそうな。


雪はまた、北国以外にあっては、すべての人々(?)を童心に帰してしまう
ものらしい。関西各地でも、随分と久しく大雪が積もったとき、僕は仕事に大支障があった事もつい忘れ、子供のように心を躍らせておりました。
そこらじゅうの雪をかき集めて、やっとこさ出来上がったのが
デコボコだらけの雪だるま。  その一方では、冷たい雪とたわむれている
ちびまる子ちゃんの世界かと思われるような子供たち。 あるいは
玄関前の雪を、シャベルで懸命に掻き分けながら、それでいて楽しそうな
ムーミン一家や、サザエさん一家のような家族連れ (おやおや本当かな?)。
ともあれ積雪の際は、目の覚めるような銀世界と共に
雪国のつかのまの風情と、苦労の一端を体験させていただいた。
幼い頃に雪合戦をした思い出も、いま振り返れば、つい昨日の夢のよう。


冬の星空に燦然と輝く、ベテルギウス・シリウス・プロキオンの
『冬の大三角形』に加えて、オリオン座、馭者座、双子座、子犬座、大犬座
そしてプレアデス星団があまりにも美しい。
おでんや、湯豆腐や、茶碗蒸しや、石焼き芋や、各種鍋物が
格段においしいのも、冬ならではのこと。


ウィンタースポーツも、いよいよ本番です。
フィギュアに、アイスホッケーに、スピードスケート。
カーリングに、ボブスレー。モーグルにハーフパイプ。
数々のアルペン種目に、ノルディック種目……。
雪と氷に包まれた世界で、それなのに魔法のように冬の寒さを
忘れさせてくれる。  スキーヤーならずとも、シーズン中は
八幡平や雫石。苗場山や志賀高原や白馬。
兵庫県内ならば千種高原、戸倉山、鉢伏山、神鍋山などの
ゲレンデ情報が、気になるところでありましょう。


更には世界的な山形県蔵王の樹氷であるとか、オホーツクの流氷であるとか
釧路湿原の丹頂鶴、阿賀野市の瓢湖の白鳥、茨城県袋田の滝の氷瀑。
津軽鉄道のストーブ列車、最上川のこたつ舟、埼玉県長瀞町の蝋梅。
館山市のカトレア、宮崎市堀切様のポインセチア、上野東照宮の冬牡丹。
淡路島や越前海岸の水仙、夜空を彩る秩父の夜祭や、知床ファンタジア。
仙台光のページェント。そして積雪に映える京都の金閣寺等々の
冬ならではの明媚な光景も、見逃すわけにはいかない。
やせっぽちで、寒がりな僕としても、冬が他の季節と同様
楽しみな素晴らしい季節であることを知っています。 
クリスマスもあれば、お正月もある。


降誕祭であるクリスマスの起源とは、古代ミトラス教徒の太陽崇拝の日と
ゲルマンの冬至祭ユールと、古代ローマ時代のサトゥルナリア祭のなどが
そもそも融合されたもの。 325年の第1回ニケ―ア公会議等を経て
現在のイエス・キリストの生誕を祝う日に至った。
クリスマス特有の神聖な雰囲気や、クリスマスソング(讃美歌も含む)が僕はともかく大好きだ。 きよしこの夜、ファーストノエル、シルバーベルズ
主よみもとに近づかん、いつくしみ深き、グリーンスリーブス、もみの木
アヴェマリア(シューベルトorグノー)、オーホーリーナイト、ジングルベル
ホワイトクリスマス、赤鼻のトナカイ、おめでとうクリスマス、諸人挙りて
神の御子は今宵しも、荒野のはてに、リトルドラマーボーイ、ママがサンタにキスをした、ハッピークリスマス、CHRISTMAS LIST…etc/ひとつの行事や
宗教に対して、これほどまでの名曲が数知れず存在するのには驚かされる。


お正月が、この季節にあるのも大変な魅力です。 お節料理も初日の出も
待ち遠しいばかり。『もういくつ寝るとお正月…』なんて具合に
指折り数えていると、ほら、本当に鬼が笑うかも。 松の内にはぜひ
昔懐かしい福笑いや、凧揚げをして、近所の子供らを喜ばせてあげたい。
歳末大売り出しに歳末助け合い。お歳暮に針供養。忘年会に餅つき。
煤払いに御身拭いに大掃除等々…。何かと慌ただしい師走。
けれど、お正月という長い行事の始まりの月だと考えることも出来ます。


かのベートーベンも12月の生まれ。 交響曲第九番ニ短調は、不屈の魂の
総決算と評される。  ご当地よりも年の瀬の日本で、今ではしっかりと
定着して揺るぎないが、1時間20分もの大作だ。  初演されたのは、晩年近い53歳にして、1824年のウィーンのケルントナートル劇場。
すでに聴覚を完全に失っていたベートーベン自らも、指揮者の横に立ち会い熱狂した聴衆から、たび重なるアンコールを受け、5度目に警察官の制止があるまで鳴り止むことがなかったとか。  そんな第九が今年も
一年の締めくくりに歓喜をこめて、日本の町から町へ大合唱される。


『時』という大河は、人々の生活の只中にあって、とても力強く流れて
いるようだ。男鹿市では『なまはげ』、赤穂市では『義士祭』、神戸市では
『ルミナリエ』が今も健在です。 NHK紅白歌合戦にせよ、年越しそばや
除夜の鐘にせよ、嗚呼なんと風情のあることだろう。 僕はつくづくと
日本人に生まれて良かったと思う。 寺々で殷殷と撞き鳴らす除夜の鐘は
百八つ。 百八つの煩悩を除いて新年を迎えるという次第で
これは1年の12月と、24節気と、72候を合わせた数とも一致します。
旧年中に百七つ、そして最後のひとつは、新年を迎えてから撞く。
歌合戦は今年で何回目を数えるだろうか?  誰が出演するのかな?
衣装やダンスも楽しみだ。


草木や動物達は眠っているけれど、冬は決して寂しい季節でない。
それ只、日照時間の短さや、寒いがゆえに寂しいと思うだけ。
冬至粥に柚湯など、例えば冬至には冬至なりの楽しみ方がある。
厳冬ロシア・サハ共和国内のベルホヤンスクではかつて
―67.8度という壮絶な記録を残した。  同共和国内のオイミャコンでは
1926年にー71.2度を測定し、記録を更に塗り替えたと聞くが
南極をも凌ぎかねない桁外れの寒さをもってしても
地球はまだまだ『暖かい…』と言える。 宇宙空間へ一歩飛び出そうものなら
どれほどの過酷な世界が牙をむきだしていることか。
絶対零度にプラス3度、つまり摂氏マイナス270度が
宇宙空間の“素顔”の温度なのです。


寒い寒いこの季節、誰しもがこの先いずれ『冬将軍』と幾度も
相まみえなければなりません。 この言葉は、フランス第一帝政期の
ナポレオンの1世が、1812年にロシア遠征をした際、64万の大軍が
惨敗を喫した一番の難敵こそが、猛烈な『寒さ=冬将軍』であった事に
由来するもので、つまりは、本格的な寒波の襲来を意味します。
金沢の兼六園では、冬支度名物の『雪つり』を、すでに先月終えたとも。
日本の各地から『こも巻き』の便りが、昨今では頻りに届けられる。


さて皆さんも、寒さに対する備えは出来ていますか?
どうか風邪などひきませぬように。
寒さを吹き飛ばすには、持ち前の『若さ』以外にありませぬ。
しかし、熱き恋でもしていれば…
寒さもおのずと、何処かへ飛んで行ってしまいそうなものを。
 



 
※ 建礼門 葵による『冬の風物詩』でした。
  四季折々の日本の風景や行事や人情の素晴らしさを
  多くの方々に再発見していただきたく
  できるだけ盛り沢山に綴ってみました。
  ある年の12月時点での制作です。



【関 連 記 事】

🔷【夏の風物詩】|建礼門 葵 (note.com)


🔷【秋の風物詩】|建礼門 葵 (note.com)


🔷【冬の風物詩】|建礼門 葵 (note.com)


🔷【あたたかい冬から春へ】|建礼門 葵 (note.com)



🔷【移り行く季節に】|建礼門 葵 (note.com)


🔷『桜の花びらが散る前に…』|建礼門 葵 (note.com)


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