何かを書く人

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マガジン

  • OUTLET

    過去に「OUTLET」というタイトルで書いた、複数の文章です。校正して少しずつ投稿します。

  • 文章筋トレ等 作品集

    文章筋トレ等のイベントに参加して書いた文章です。

  • 朝に書く何か

    毎朝、家を出る前に、少しだけ書く文章。(※切ったり貼ったりして校正済)

  • 詩のようなもの

最近の記事

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私に触れて生きる体験(2,043文字)

 洗面所で顔を洗っている時に「ある感じ」が降りてきた。最近、洗面所で顔を洗っている時に何かの「感じ」が降りてくる。まぁそうだよなぁと言いたくなる一瞬の感覚みたいなもの。  洗い終わった顔をタオルで拭いていると、身体を丁寧に扱ってあげたい気持ちが湧いてきて、今まで身体のことを蔑ろにして無理させてきたなぁと慈しむような気持ちになった。前を向くとタオルで拭いた後の顔が鏡に映っていて、頬の辺りを指先で触れると、ここに顔があるんだ、という感じになった。 「時間は大丈夫なのー」とキッ

    • できれば何かを(415文字)

       本当は私を感じたかった。寂しさや切なさ、掬い上げた感情の奥にある私のこと。感じ尽くせば、私のなかにある何かに出会うことができたのか。私が私を満たしてあげればよかった。望むことを言葉にして、あなたに伝えればよかった。  いつも眠い感じがあった。朝は瞑想の時間に合わせて起きていたから、睡眠時間が短くなっていた。夜早くに眠ることができないから、必然的に睡眠時間が短くなった。睡眠時間を確保するためには早くに眠らなくてはならなかった。  感じ尽くして、私の何かに出会い、その何かに

      • 断片にある意志の原型(1,298文字)

         禁煙席エリアのテーブル席に座っていた外国人の二人は男と女で、男は気怠そうにスマートフォンの画面を眺めていて、女は皿に盛られたモーニングセットを今まさに食べようとナイフとフォークを握っていた。  座った席のテーブルが汚れていたので、椅子から立ち上がった私はキッチンカウンターに向かった。カウンター内にいた店員にテーブルを拭いて欲しい旨を伝えると、モーニングセット用の皿を並べていた店員は「わかりました」と答えた。テーブル席に戻った私は、スマートフォンの画面を眺めている男とモーニ

        • 例えば を信じる(680文字)

           衝動的に書いた文章の下書きが増えていった。日々何かを書いていたが、記事にできなかった。文章が仕上がらない。文章を仕上げる時間が欲しかった。  例えば、月曜から金曜までの5日間、文章を書く時間と仕上げる時間を確保する。週2回、基礎となる文章を書き、校正する時間を取って仕上げる。月曜に文章を書き、火曜と水曜で校正して記事にする。木曜に文章を書き、金曜、土曜で校正して記事にする。  その時に感じたことを、ただひたすら書きたい衝動があった。そうやって今まで書いてきたから。でも、

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        私に触れて生きる体験(2,043文字)

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        記事

          文章を送る日々

           友人と会って話をしていた。友人は揺れていた。同じような揺れが私のなかにもあった。私の揺れは僅かだった。僅かな揺れでも何かをしたくなった。言葉を使って確かめたくなった。だけど、確かめることはしなかった。解釈を取り除くと、そこには事実があった。あることがあり、ないことはなかった。ないことを受け容れるのは難しかった。あることを認めるのも難しかった。あることはあり、ないことはない、を感じ続けた。  久しぶりに半地下カフェにやってきた。いつも座る席には赤いハンドバックが置いてあった

          文章を送る日々

          ぬくもりFRIDAY

           夜に人と会って話をした。その場に恐れを持ってのぞんでいる私がいた。大したことがない私と、社会的な立場がある人とでは、釣り合わない、社会を見る眼差しが違う、私には何もないという引け目があった。  いろんな話をした後に、その人が晩ご飯に誘ってくれた。そのことが純粋にうれしかった。隠していた緊張感、そういうことも明かして生きていきたいと思った。これが私ですと明かして、明かした上で、生きていきたい。そのままを生きることができれば、いるべき場所に運ばれていくような気がした。それがど

          ぬくもりFRIDAY

          愛する海に溶けゆく言葉

           台湾朝ごはん屋さんのテーブル席に座っていたら、朝からなんだか、店員同士で、いろいろある感じで、どうなん?、揉めてる?、レジの人は台湾の人なのかな、先輩店員に教えてもらってる感じなのかな。  気になりながら席に座っているけど、ちょうどイヤホンしてたから、会話は聞こえてこなくて、まぁそれでいいか、って何か聴きながらタイピングしようと思ってiPhoneの画面タップして音楽流してみたけど、聴きながらタイピングはできなくて、<味気ないね でもそれがね ふたりの幸せ>、とか、歌詞に引

          愛する海に溶けゆく言葉

          はてはて、はてのはて

          「おはよう、朝が来ましたね」、と私に向けてタイピングしていると、爪、手の爪を切るの忘れたことに気づいて「あぁ忘れちゃうよね」とつぶやきながら、そういえば、右足の親指の爪も尖ってて、靴下はくときに引っかかったことを思い出した私は、「ちゃんとお手入れしなくちゃ」、とタイピングした。  創り出す体験が私に必要なのは、与えてもらうことばかりをやってきたからで、やってきたというか、待っていたからで、誰かが与えてくれるのをひたすらに待っていて、たまたま通りかかった誰かが私を引っ張ぱり出

          はてはて、はてのはて

          観ている私から逃げる私(805文字)

           人にどう思われるかを気にして私が感じていることを切り離し、無に帰して全てに対してそれをして、何も感じないことにして痛みから逃げ、実際は逃げ切ることはできず、永遠に追いかけてきては何度も目の前に現れ存在し続ける痛みは私のなかに確かにあることだから、ないことにはできなかった。  私につながり、私はここにいて、私が感じることがあり、表現したいから表現し、その表現で人が感じることは、その人が感じることで、私の責任ではなく、その人の痛みに私の表現が触れただけで、その結果離れていく人

          観ている私から逃げる私(805文字)

          逃げる私を観ている私(693文字)

           いつもぼんやりしていて、何があるのか感じ取ることができなくて、それは、私が私を感じていないからで、喜怒哀楽につながっていなくて、その奥にあるいのちにもつながっていないから、あなたの喜怒哀楽がわからなくて、表層にある怒りは恐くて感じ取るけど、深い場所にある、あなたのいのちにはかすりもしなかった。  逃げていると、触れなくていいし、生存的には安心するのだろうけど、私がわからなくて、当然、あなたもわからなくて、結果的に、あなたの痛みに触れることを無自覚にやってしまい、あなたが遠

          逃げる私を観ている私(693文字)

          半地下タイピングブルース(2,195文字)

          1.  ちょっと思いついたのは半地下カフェのモーニングセットが470円で、いつもの珈琲420円にセット価格50円増しでレーズントーストにゆで卵がついてくるから、持参したタッパに入れて職場に持っていけば、お昼にレーズントーストとゆで卵が50円で食べれるし、衛生的によろしくないかもだけどレーズントーストはかなり魅力的で、ゆで卵は食べなくてもいいからやってみるか、ってやらないだろうな。  注文したブレンドコーヒーがなかなかやってこなくて、通路を挟んだ正面のテーブル席に座る女性をみる

          半地下タイピングブルース(2,195文字)

          出会う、訣れる(842文字)

           朝、家を出て駅に向かう道を歩いていると、東の空、マンションとマンションの間に、細い針金のような月をみつけた。昨日の朝にみた月はもっとしっかりした針金だったので、欠けていく月なのだと認知した。今朝の月はあまりにも細かったので、みつけることができたのは祝福だった。マンションの前を通り過ぎ、線路沿いの道に出て後ろ向きに歩いた。もう一度見ようと東の空を探したが、針金の月はみつからなかった。いつもなら見つけることができるのに、今朝は見つからなかった。その時に生じた小さな不安は、私のな

          出会う、訣れる(842文字)

          文章の予感(1,582文字)

           コーヒーカップの横に置いてあったスティックシュガーとコーヒーフレッシュを手に取ってスプーンはそのままにしてiPhoneで写真を撮った。半地下カフェの珈琲の写真はたくさん撮っていて、書く時に撮った写真は文章に近い感じがするから、何かを書いた時には写真を撮るようにしていた。  朝ごはんを食べない私は、空腹時に珈琲を飲むと心臓がドキドキしてきて、このドキドキはカフェインアレルギーの軽い症状らしく、朝はデカフェが最適なのだけれど、半地下のメニューにデカフェはなかったので、毎朝、薄

          文章の予感(1,582文字)

          眠りに向かう冷たさ(819文字)

           階段を駆け上がって辿り着いた半地下カフェのレジカウンターでアメリカンコーヒーを注文した私は息が上がって「Lサイズ」と言えず、店員の女性が「無料で大きめのサイズに変更できますが」と言うのを待ってから呼吸の隙間に「それで」と短く答えた。  渡された番号札をもって禁煙席エリアに向かう途中、右側のガラス越しに喫煙席エリアをみて歩いていると、いつもの席に座り右手人差指と中指に挟んだ煙草から立ち上がる煙を虚な目で見ている女性の姿が薄煙の向こうに見えた。  禁煙席エリアに入ると右奥の

          眠りに向かう冷たさ(819文字)

          想うことば、つながりの音(555文字)

           隣のテーブル席に対面で座っていたアジア系の女性2人は外国語で話していた。聞き憶えのある単語がいくつか聞こえてきてうれしくなった。言語が連なり一文になる抑揚と話すリズム感の心地よさがあった。  私が座る席のテーブル上に置いてあったスマートフォンが震えた。タイピングしながらスマートフォンの画面を確認するとDからのLINEだった。通知画面には「今日もやらなければならないことが…」と表示されていた。  頭の中に生じた言葉はDに向かわず、テキスト入力マシンでタイピングしただけだっ

          想うことば、つながりの音(555文字)

          パンチェッタのことばかり考えていた(2,051文字)

           駅のホームに降りたった私は階段を勢いよく上がって改札を通り抜ける。次の階段も一段飛ばしで駆け上がって、実際は駆け上がる感じではなくて、階段を折り返して半地下カフェに辿り着く頃には息が上がっていて、レジカウンターで「アメリカン(はぁ)コーヒー(はぁ)、Lサイズで(はぁ)」となって怪しさ100%だった。  昨夜は職場の新年会だった。席を決めるくじ引きが用意されていて、二つに分かれているテーブル席の片方に座ることになった。私が座るテーブル席には比較的静かなメンバーが揃い、もう一

          パンチェッタのことばかり考えていた(2,051文字)