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SS 狸と生姜【液体_紅生姜_真っ赤な嘘】三題話枠

 狸はたまに町で人を騙す。騙すと言っても、葉っぱのお金で飲み食いするくらいだ。金が無いのだから仕方が無い。人間の方も狸に手を焼いて対策を考えた。旅の宿の主人は一計を案じる。

「旅の者だが、食事を頼む」
「それはお疲れでしょう、お通しにタコ焼きをだしましょう」
「まだ注文してないぞ」

 客にいきなり紅生姜入りのタコ焼きを食わせる。出されたから客も黙って食べるが理由がわからない。

「主人、なんでタコ焼きなんだ」
「狸が辛いのが嫌いなんですよ」

 山の動物は刺激の強いものは食べない、山椒さんしょう辛子からし生姜しょうが。だから喰わせればびっくりして尻尾を出す。

「俺が狸と勘違いされたか」
 ふむふむとうなずきながら主人に間違えを教える。

「動物に喰わせて駄目なのはネギだよ、中毒になる。逆に生姜しょうがは体に良い」
「それは知りませんでした、ありがとうございます」
「そうだ、私は商いをしている。荷物に生姜があるので、湯に入れて生姜しょうが湯をわかしてくれ」
「いいですな」

 主人は客用の風呂場で湯をわかす。旅人は湯の中に何やら液体を入れる。

「それはなんですか?」
「しぼった生姜しょうがの汁だよ」

 確かに湯が生姜しょうがくさい。旅人は沸かした人が先に湯に入るべきだと、主人に強くすすめる。

「私は後からでいいですよ」
「俺は入った事があるから、ご主人が入りなさい」

 そこまで言われると入らないわけにはいかない。主人から湯に入ると、生姜しょうがの匂いで気持ちが良い。ふりむくと狸が湯の中に小便をしている。

「狸に騙された。生姜しょうがの話は真っ赤な嘘か」
「本当だよ、さっき紅生姜しょうがを食ったから小便が生姜しょうが臭い」
「くやしい、生姜しょうがじゃなくミョウガにしとけば良かった」
「ミョウガなら、騙された事も忘れそう」

DALL-E3


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