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「JR上野公園口」太宰的な闇の表出、全ての人が持つ背景

ここからちゃんと、読んだ本から搾り取った思いや考えたことを書き綴っておこうと思います。

あらすじ(?)

ホームレスの視点から世の中を見つつ孤独な男の人生を辿り、時代を描く。出稼ぎに一生を捧ぐ、生きるために。家族との時間を殺し、働きづめた人生の先に待つ、孤独。大切な人をなくし、残されていく孤独。直接表現はないが、ただ一人の人生を振り返るだけで、日本の負の歴史を痛く連想させる。暗い孤独に寄り添う一冊。

すべてのひとが持つ、背景

この小説を読んで一番に感じたことがあります。自分は今まで、想像力を欠いて人の背景を知らずに傷つけてしまったことはなかっただろうか。無神経な発言をしたことはなかっただろうか。不安になりました。

ホームレスの人にも、ホームレスになってしまうまでの背景があり、道筋がある。全ての人の境遇に理由や背景があることを、忘れてはいけないと思った。それを知らずに自分が誰かを傷つけてしまうことがあってはならない。

あまりに自分の知らない世界を描く本に出会うと、視野の広さ、多角的なものの見方を養うのに最適なのが読書だよなあと、考えます。
人との違いを受け入れられなかったり、柔軟性に欠けていてそれを直したい人は本を読めばいいなと思います。(自分こそ、読み続けないと忘れてしまう姿勢であるので、自戒)
それがフィクションであったとしても人物の背景を正しく知る、真の意味で心の内に触れられるのは本だけだと思うのです。


太宰的な暗闇

この作品から感じ取った、太宰的闇の表出。しかし見方によっては自己陶酔とも呼べる太宰の闇とは裏腹に、ただ真直な孤独を描いているから、胸の奥をゆっくりと、ひっかかれます。

そんなJR上野公園口が、ニューヨークタイムズ紙の「注目すべき100冊」リストに選ばれているのを知った時は、違和感を感じてしまいました。
これが日本の作風だと、世界には思われているのか(というか海外受けするのか)という少しの違和感があったのです。

暗い心の内をひたすら綴るような表現って、日本語でしか伝わらない部分が大きいと思っていました。複雑で、繊細な日本語だからこそ絶妙な表現ができる。

英語に翻訳してしまうと、多分正しい解釈でこの作品を読めていない気がします。だからおそらく闇の部分で評価されてるわけでもなさそうで。

やっぱり、日本の負の歴史を一人の一般人男性、しかもホームレスに行きついた男性の視点からみている新鮮さ故の選出なのでしょうか。なぞに包んだままこのnoteをおえてしまいますが(笑) 

何か解釈があれば、コメントいただけるととってもうれしいです。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。いきるちゃんの初読書記録記念(!)

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