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おカネの違いは運にすぎない

 先日、このニュースが話題になっていた。

 この判決が不当か妥当かの判断には立ち入らないが、このニュースを機に、私が前から思っていたことを書いてみたいとふと思った。

 そもそも私は昔から、「ボーナス」の存在がよくわからない。
 というかそもそも正社員(正規職員)の給料の決まり方もよくわからない。お金に関しては、不明瞭なことがあまりにも多いと思っている。
 時給制アルバイトなら、n時間働いたから(n×時給)円……と支給額は明確だし、自営業は自分で値段を決められる。給料やボーナスはそのような決まり方はしていない。
 そもそも、友達とも給料の具体的な金額の話をしたことはほとんどない。学生時代は、バイトの時給がいくらか、どのくらいシフト入っているか……ということは話したこともあるような気はするが、アルバイトは求人の段階で時給が明確に決まっているので、わざわざ隠そうとする人もいないのだろう。

 学校の成績なら、通知表を見せ合いっこしたり、近い成績の友人と順位を競ったり……という経験をした者も多いとは思うが、大人が給与明細を見せ合いっこする文化なんて、寡聞にして聞いたことがない。(営業成績を社内で競う文化がある企業は珍しくはないが、それだって支給額そのものの数字を貼り出すわけではないだろう)

 私は仕事の関係で、ひとの月給や年収を目にする機会も何度かあったが、それらを見て思うのは「収入の決まり方は運の部分が大きそうだな」ということだ。

「給料は、本人の能力とは関係なく上が適当に決めているだけだ」と言いたいわけではない。業務内容や責任の多寡、会社の業績などさまざまな要因によって違いは生まれているわけで、それ自体が不合理だとは思わない。「お金や給料について、オープンに話せる社会であるべき」とも思わない。

 そもそも学校の成績なら、テストの点にしても偏差値にしても数字には限度がある。一方、収入はそうではない。マイナスの者もいれば億単位の者もいる。
 また、テストや試験は評価の基準が比較的明確だ。実際の入試では、面接の点数や内申点で左右される部分もあるとはいえ、採点者の裁量で変わる部分よりは変わらない部分が多いだろう。
 それに、子どもの頃は良くも悪くも「学校の成績」に重きが置かれがちではあるが、大人になると「お金を稼ぐことばかりに価値を置かない生き方」をする者も多い。「お金を稼ぎたいと思うかどうか」にも大きく個人差があり、その価値観がどれだけ醸成されるかは「運」の要素が大きいのではないかと思っている。


 私が2013年頃に「リクナビ2013」「マイナビ2013」などを使って就職活動をしていたときは、私(関西の有名私大卒、文系、半年留年)が選考を受けた企業は、新卒初任給は「21万円」というところがもっとも多かった。
(ちなみに、選考を受けた中でいちばん初任給が高かったのは某IT企業で30万、低いところでは教育系の企業で18万前後だったように思う)

 新卒初任給が18万や30万の理由はそれぞれいろいろあるのだろう。企業の規模や業務内容が異なるのだから、そこに違いがあることに不思議はない。ただ、給与に差があることは不思議ではないが、人間の生活にかかるお金は、そう何倍も変わるものではない、とも思っている。

 オーディオやカメラやワインなど、お金の掛けどころが広い趣味は確かに存在するが、そうでない趣味も多いだろう。
 たとえば漫画1冊や映画1回の値段は収入によって差が出るものではないし、コンビニやスーパーで買う食材にしても、月収18万の者に必要なものと、30万の者に必要なものでそう大幅に変わるとも思えない。ひとりの人間が食べられる食事の量は、そう大きな違いが出るものでもないだろう。
(ドラマ「おカネの切れ目が恋のはじまり」では、ランチに5,800円使う人物と60円しか使わない人物の対比が描かれたりもしていたが……)

「n歳で収入○○円って低い方ですか?」という質問は、あらゆるメディアで定期的に目にする。それに対しては「仕事内容はそれぞれ違うので、比べても意味がありません」という無難な回答が多い。その回答自体はもっともだと思うが、「そうはいっても、ひとりの人間が生活するために必要な金額には、そう大きな違いがあるとも思えないんだけどな……」という気持ちにもなる。

 私は23歳のころ、京都のカラオケ店で年末年始も休まず、ヘトヘトになりながら働いていたことがある。その月の給料は13万円で、それまでのアルバイトの給料の中ではそれが最高の月収だった。
 ところが翌年、某企業に正社員として就職すると、夜中にヘトヘトになるまで働かなくても月に13万円よりは多い額を手にすることができた。嬉しかった反面、「これはどういうことなんだろう」と思った気持ちは忘れずにいたい。

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