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番外【水族館】めちゃ勉強になった

前回、薬膳をきっかけに「食材がどこから来たか」を知ることが大事だと書いたが…

その後、実は私自身、想定外のところで「食のフィールドワーク」のチャンスに恵まれた。それは、水族館だ。

水族館と「食」をつなげるのはあまりにシュールな感じがするだろうか?しかし子ども達もたくさん訪れるここにこそ、知りたい「おいしい」の秘密は隠れている。

1、行った水族館がすごかった

訪れたのは、伊豆半島の南東部・静岡県下田市にある下田海中水族館

なんと、入江をそのまま利用した「海に浮く」水族館だ。

パーク内に入って感じるのは、なんといっても生きものとの距離が近いこと。
特にイルカとのふれあいは、国内の他の水族館には類をみない充実ぶりで人気も高いようだ。

海上ステージのショーを舟や桟橋の上から見ることができ、「アメージング・シート」ではイルカが頭上を跳び越えてくれる。「楽屋」がないため、イルカに指示をするトレーナーがショーの後にバケツをたくさんかかえたまま目の前を通っていったのも面白かった。

ふれあいの後に胸ビレを振ってバイバイをしてくれるイルカ達。

入場口前の池にはウミガメが放されていて、エサをあげることもできる。下田の浜には5〜8月に、アカウミガメが産卵のために上陸する。

ペンギンプールは大人の腹ほどの高さに水面があり、かこいのヘリから覗きこめば、間近で観察できる。手を出すとつつかれる。

アシカやアザラシと一緒に記念写真を撮れる時間帯がある。一日中ゴロゴロしているように見えるゴマフアザラシも仕事をするらしい。このお腹、筆者とどっちが重いかな…

排水量1,300トンの船「アクアドームペリー号」では、伊豆の海を再現した大水槽の中で、魚類・無脊椎動物・藻類など50種の生物が自然光を浴びて暮らしている。

イワシの群れとエイの泳ぐ姿は見ていて飽きない。他にもイサキ・フグ・ウツボ・タイ類・サメ類が目をひく。別のコーナーでは生きているネコザメの「鮫肌」を触らせてくれた。

今年7月にリニューアルオープンしたばかりの水槽展示エリアは、ライティング効果で魚やサンゴの特徴色を活かした演出がされている。

全国各地で人気のチンアナゴ先生。ひっこ抜きたくなる。

筆者推しメンの「ソメンヤドカリ」。殻に必ずイソギンチャクを付け、曰く「鉄壁の防御力を誇ります」。成長して大きな殻に引っ越すときは、イソギンチャクもきれいにはがして一緒に連れていくらしい。おしゃれヤドカリ。


2、「食卓を支える」海の展示

そして「伊豆の海の生物館『うみめぐり』」には、伊豆の味覚を知るきっかけとなる「漁業水槽」があった。

展示されている生きものの中に、サバ・マダイ・ブリ・カンパチ・ハモ・カワハギ・イセエビ…誰もが聞いたことのある「食べる」魚や甲殻類が並ぶ。

伊豆のイセエビ漁は9月〜解禁となる。伊豆急下田駅前のラーメン屋さんの「活伊勢海老ラーメン」(¥3,500〜)が気になった。

面白かったのは、水槽ごとにつけられた表示に、魚の名称とともに伊豆地域での呼び方も載っていたことだ。
つまり地元の漁用語=食べものとしての魚の名前だ。

筆者のこの日の朝食だったカンパチは「はいから」。マダイは「てえ」、ハモは「はぶ」、メダイは「あおさ」…一部、伊豆半島の中でも地区ごとに違いがあるようで、静岡県水産技術研究所伊豆分場がHPでまとめている。

さらに伊豆地域の漁法の説明もあった。
特に興味深かったのは定置網漁のことで、聞いたことはあっても、実際にどんな方法で私たちが口にする海の幸がまかなわれているのかをよく知らなかった私は、思わず「へー!」と感嘆した。

定置網漁は「待ち伏せ」タイプの漁法で、網は魚が一度入っても逃げられるしくみ。
入網したうちのおよそ三割を最終的に漁獲し、根こそぎ獲らないため、「持続可能な環境にやさしい漁法」として注目されているらしい。
伊豆ではサバ・イサキ・イカ・フグ・アナゴ・マンボウなどがかかるそうだ。

ここから、まき網漁や遠洋漁業との違いにも発展させることができる。
まき網では、それぞれ役割の違う数隻の船のチームが魚群を囲い込む。網を使う沿岸漁業に対して、カツオの一本釣りなどが沖合・遠洋漁業だ。

世界でも有数の魚介消費国といわれる日本の食卓を支えているのは、他ならない水産資源と漁師であって、その現場への理解は日本人として必須ともいえる。
伊豆や全国の漁業に当てはまるかはわからないが、漁師の生活がどういうものか知っておくのも、今後、関連するニュースなどを見たときの真実を判断する材料になるはずだ。

駿河湾と相模湾に挟まれた伊豆半島は、黒潮によって外洋の影響も受け、漁場として恵まれた環境だ。魚類だけでも1,200種以上の生息が確認され、水産物は県内はもちろん、首都圏をはじめ各地に出荷されている。

伊豆の海の幸ではずしてはいけないのがキンメダイ。通年で獲れて、刺身はもちろん、飲食店では煮つけを食べられるところが多い。干物も有名で、大きな目と赤い体が丁寧に干された姿は美しい。ちなみに水族館のフードコートには「きんめカツ丼」があった。


3、行くぜ、海

伊豆に滞在していて、魚のおいしい食べ方をよく知っている地域だなと思った。
海に囲まれ漁業が盛んなら当然かもしれないが、だからこそ水族館も、豊かな海産資源のことを来館者に伝える役目を担っている。
これは島国の日本では、全国にいえることだ。

生きものを食べる以上、その生きものと、生きものを扱う人々や現場のことは知らなければならない
スーパーだけでなく、生きた「食材」を目の当たりにできる動物園・植物園・水族館などでもそういう視点をもつことは悪くないと思う。
何にせよ忘れてはいけないのは、「彼ら」なしに私たちは生きられないということだ。

海のもの食べるときはぜひ海に行こう
「おいしい」を感じることは、すぐそこにある豊かさを感じることから始まるのだ。



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